ついにこの日が……
5月も終わり頃になり、夏の気配がより感じられる季節へとなった。
一か月を切った文化祭の準備も各クラスや文化部で進み始めているが、俺たちSクラスは特にクラスで何かやるということはなかったのでこうして放課後の部室に5人とも集まっている。
今日の議題も文化祭で何をやるのかということなのだが、金曜日に話した内容以上のことは出てこずに、時間だけが過ぎていく状態だった。
その後少し休憩しようということになり、万梨の入れたお茶を飲みながら、特に会話もなく過ごしていた。
その時、口を開くタイミングを見計らっていたのか、花陽が、
「あの、みなさん」
と声をかける。
4人の視線が花陽へと集まる。
「連絡先を交換しておきませんか? 」
と提案した。
そういえば連絡先まだ知らなかったなーとさも今気づいた感じを意識しながら、
「まだ、知らなかったっけ? 」
と俺は言うが、嘘です。
めちゃくちゃ気にしていましたとも。
連絡先、交換、タイミングで何度も検索しましたとも。
でも、中々相手の方から言い出してこないので不安にもなっていました。
だが今日この時ついにチャンスがやってきたのである。
俺は忘れられていなかったことと、自分で言いだす必要がなくなったことにほっとしていた。
「そういえば、知らなかったわね」
と縷々が反応する。
「やはり何かと必要ですし、文化祭も近いですので」
花陽が理由をつけたす。
その後、全員が入れていた、通信アプリ「レナン」に花陽と友達になるという形で全員の連絡先を交換しあった。
よかった、これで花陽に友達ができた。(そういう話ではない)
そしてついでに科学部のグループも作成した。
なにはともあれ、ついに俺は花陽の連絡先を手に入れることができたのである。
一方で、文化祭の案の方はそれ以上進展することはなく、下校時刻となった。
その日の夜、自分の部屋でスマホを見ているとピコンと音がして花陽からのメッセージが届いた。明日時間取れますか、という内容だった。俺の胸の鼓動が早くなる。
これはもしかして何かにつきあってほしいということではないか、この一か月近く何も進展はなかったが、連絡先を交換するだけでこうも動きがあるとは。アプリ様様である。
俺はドキドキしながらアプリを開いて、そして現実を知った。花陽のメッセージはグループ内でのものでした。
まあ、そうですよね、いきなり二人きりなんてないってわかっていましたよ、本当だよ?
と俺は誰に言うわけでもない言い訳を心の中でしながらメッセージを返す。
「部活以外は特に予定もないけど、何で? 」
「実は綾女が明日、科学部が5人そろったお祝いを家で開いてはどうかと提案をしてきまして」
「でも部内で小さなものならしたよね?」
「多分綾女はみなさんと一度あっておきたいんだと思います。みなさんいかがでしょうか? 」
そういうことなら、俺の方は問題ない、その旨を打ち込んで送信する。
さて、後はみんなの反応だが、とスマホを触りながらしばらく待ってみるが、中々みんなからの返信は来ない。
こうなると自分がスマホをいつも見ている暇人みたいだと思われているのではないかと思い、少し恥ずかしい。
そう思っているしばらくして、涼音さんと縷々から行けるとの返信があった。
その後は時間等の連絡が花陽からあり、特にそこから会話が広がることもなく終わった。
今回も読んでいただきありがとうございます。よろしければ感想や評価、ブックマーク等よろしくお願いします。




