科学部再始動
その日はもう下校時刻になっていたので、縷々の入部届は明日出すことになって、解散となった。
次の日の放課後、縷々が入部届を出しに行った後、科学部の部室で新生科学部の発足パーティが開かれた。
今日のケーキはシフォンケーキだった。ふわっとした生地にクリームがよく合っている。
食べ終わって、部長の涼音さんが立ち上がって俺たちの前に出る。
「……みんな、ありがとう」
と言って頭を下げてくるが、
「涼音さん、いいんですよ、私たちはここに入りたくて入ったんですから。ね、みなさん」
との花陽の言葉に残りの三人が頷く。
「……でもありがとう。続けていけることになってうれしいから」
その眼にはうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。
「で、あたしはあんまり詳しくないんだけど、この部活でまずは何をしていくの? 」
「……主には機械を作ってそれを発表したりしている。文化祭にも出る」
「じゃあ、当面の目標は文化祭に向けての機械作りってことでいいのね? 」
「……うん」
「分かったわ、みんなどうする? 今日少し考えてみる? 」
縷々は積極的に話を進めていく。万梨はどういう風に彼女を説得したのかが気になった。
「私はこの後予定もないし大丈夫です」
「私も花陽さんと同じです」
「俺も特に予定もないし大丈夫」
「……私も」
「じゃあ、文化祭まで実質的には3週間程度しかないからできるだけ早めに考えていくわよ」
そうか、間にテスト期間による部活動禁止の期間が挟まるから、実質的にはそれくらいしか時間は残されていないのかと思った。
これは今日話し合うことになってよかったなと思った。
その後、去年涼音さんが文化祭の時に一人で作って出したという機械も見ながら、話し合いは進んでいったが、なかなかこれだと思うような意見は出ずに下校時刻になってしまった。
校門で涼音さんと縷々と別れて、三人とも自転車を押しながら歩いていく。
「でも本当によかったね」
俺は少し前を歩いていた花陽に向かって話しかける。
「はい、科学部が存続出来て本当に良かったです」
振り返って嬉しそうにそう言う花陽の顔は、夕日の加減もあって本当に美しく、俺は言葉を返すことができずに見とれてしまう。
「央紀君? 」
その花陽の言葉で我に返る。
「ああ、よかったな。花陽は科学部に入りたがってたもんな」
隣に来るように歩みを合わせた花陽が横から話しかけてくる。
「はい、前にも言いましたが、自分の力で未来を切り開いていくということを思うとわくわくしてくるのです」
その言葉はいつかの帰り道に花陽が俺に向かって言った言葉だった。
「花陽は強いな」
「ふぇ? 」
俺のその返答が予想外だったのか花陽は間抜けな声を出して驚いていた。
こんな感じにもなるのかと思うと、少し意外だった。でも、かわいいことには変わりない。
「どういう意味ですか? 」
なぜか少し拗ねたように花陽が尋ねてくる。
「いや、自分の意思でしっかりと未来を見据えてさ」
「ああ、そういう意味ですか。私なんか全然ですよ」
そう言って花陽は謙遜するが、実際にこの女の子は本当に強い女の子だと思う。
自分の現在をしっかりと見据えてそこから前に進んで行こうとする。
そんな強い女の子だから、俺は……とそんなことを考えてしまう。
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