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最初は友達っていう話でした。3

 「綾女、そういうことですか、私には友達など必要ありません」

 冷たい声でそう言う彼女はどうやら、綾女さんの考えを見破ったようだった。

 だが、そのくらいでは引き下がらないとばかりに綾女さんも言葉を続ける。

 「ですが花陽さま、将来を考えるうえでも友達は作られておいた方がよいかと」

 「友達なんていらないわ、特に央紀君とは友達にはなれないわ、だって」

 そこまで一気に言ってはっと何かに気付いたように彼女は黙る。

 「だって? 」

 少しこれまでとは趣の違う笑顔を彼女の方に向けて綾女さんは言う。

 「何でもないです」

 彼女はそれだけ短く言うと髪でまた顔を隠してしまった。

 「花陽さま、鳥飼さんがダメとなると、他にはもう誰もいないではないですか? 」

 「だから友達なんていらないって言っているじゃないの」

 「それでは困るんですよ」

 「何が困るっていうの? 将来? は? この私に光堂寺のトップの座が降りてくる可能性なんてないわよ」

 「花陽さま」

 

 綾女さんのその声は決して大きくはなかったが、よく通る声であり、俺も彼女もびくっとなって思わず綾女さんの方をしっかりと見た。

 

 「私が申し上げている将来というのは、確かに光堂寺の将来ということもありますがそれだけではありません。人生においてこれから先長い時を過ごしていくには友達ひいては親友というのは必ず花陽さまの財産になると信じているからこそ申し上げているのです」

 

 「だったら何も央紀君でなくたっていいじゃない」

 「ですが花陽さまは今の学校では親しくされているご学友などはいないようですので、それなら昔親しくされていた鳥飼さんが適任かと思いまして」

 「失礼ね、私にだって親しい人くらいいるわよ」

 「失礼ですが、その中から万梨を除くと? 」

 「そ、それはいないけど」

 彼女のそう言った声は先ほどまでと違ってとても小さなものだった。

 「以前から申していますように、万梨では花陽さまの本当の友達にはなれないのです」

 「あなたって、そういうところ堅いわよね」

 どこか呆れたように彼女が言う。

 「堅いのではなく、そういう運命だと思いください」

 俺は二人の会話に口をはさむことなどできるはずもなく、その場で聞いていただけであった。


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