永遠のライバル
その日の放課後、俺はドキドキしながら科学部の部室で入部希望者を待っていた。
だが、30分が過ぎて一時間が経っても、部室には生徒が訪れなかった。
「私の放送が悪かったんでしょうか? 」
花陽が不安そうに言うが、
「そんなことはない」
と俺は否定する。
花陽の放送はわかりやすいものだったし生徒は科学部が置かれている現状を知りもしただろう。だが、それでも来ないということはもう決まっているか、やはり花陽や涼音さんに遠慮してのことなのだろう。
でもそれを伝えるわけにはいかない。
「まあ、もう5月だし決まっている生徒も多いんだろう」
「でも、このままではこの部がなくなってしまうんですよ? 」
「でも今はもうできることもない。期限は明日なんだしここは待つべきだと思う」
「分かりました」
「……みんな、せっかく入ってくれたのにごめんね」
涼音さんがまた謝ってきた。が、もちろん涼音さんが悪いわけではない。
「いんですよ、私たちはここにいたくてやっているんですから」
と花陽が慰める。
「私たちにまだできることがあったら言ってください」
万梨もそれに続く。
その時、モニターから音がした。
みんなの視線が一斉にモニターに集まる。
モニターに映っていたのは、赤みがかった髪をした女子生徒だった。
どこかで見た髪の色だな、誰だったかなと俺が思っていると、横にいた花陽が、
「同じクラスの、流月縷々さんですね」
とつぶやいた。
そうだ、確かそんな名前だったような気がする。同じクラスではあるとはいえ、授業も各々に移動して受けることも多いこの学校ではそんなに接点もなかったりもする。
それに確か彼女は花陽の周りにいるグループとは違うグループに所属していたような気がする。
涼音さんがボタンを押しドアを開ける。
「科学部ってここ? 」
流月さんがそう言った。
「そうですけど、もしかして入部希望者ですか? 」
花陽が嬉しそうに言う。
「いや、違うけど」
「そうなんですね」
明らかにテンションが下がる。
「では、どういう用事でしょうか? 」
万梨が続きを引き受ける。
「そう、そこの鳥飼央紀に用があって来たのよ」
とビシッと俺を指さして言う。
「俺に? 」
「そう、転校してきていきなりあたしを超えた人の部活を見に来たのよ。というか本当に光堂寺さんたちと一緒にいるのね」
「超えたって何で? 」
「何ってもちろんテストでよ。前のテストあなたは17位でしたでしょ。その下にあたしがいたじゃないの? 」
と言ってくるが全員の順位なんていちいち見ていないので思い出せず俺が黙っているのを、何か勘違いしたのか、
「自分より下の生徒には興味がないってことね。いいわ次の試験では絶対にあなたを超えて見せるから」
それだけ言って、用事は済んだとばかりに教室を出て行こうとする。
「待ってください」
花陽が呼び止めて流月さんが振り向く。
「何? 」
「科学部に興味はありませんか? 」
「ああ、確か今日の放送で言っていたわね。でもごめんなさい。入るつもりはないわ」
「そうですか」
「じゃあ、失礼するわ。鳥飼央紀必ず勝つから」
と言って出ていく。
「私ちょっと、流月さんに話があるので出ますね」
何か思いついたのか万梨はそう言うと、続いて出て行った。
何を言うつもりなのだろうか。
しばらくして、三人で待っていると、二人一緒に戻ってきた。
「やっぱり入るわ」
と流月さんは言った。
その言葉に驚いた様子で、
「本当ですか? 」
と花陽が確認する。
「ええ、ライバルである央紀が入っているんだもの。私も入って一緒に活動するわ」
いったいこの短時間でどういう言葉を言ったのだろう。とにかく流月さんは心変わりしたらしい。
それにしても、
「ライバル俺が? 流月さんの? 」
「そうよ、ライバルよ。それにライバルなんだから縷々って呼んでね。あたしも央紀って呼ぶから」
と宣言されてしまった。
「分かったよ、縷々。これからライバルとしてよろしくな」
まだあんまり状況についていけていないが、ここは従っておいた方がいいだろう。
やっぱり入らないと言われても困るし。
こうして科学部に5人目の部員が入り、俺にライバルができましたとさ。
俺の横では花陽が、
「ライバル登場……」
と何やらつぶやいている様子だったが小さな声だったので聞きとることはできなかった。
今回も読んでいただきありがとうございます。科学部に5人目が入りました。よろしければ感想や評価、ブックマーク等よろしくお願いします。




