もう1つの案
ポスターとチラシを書き終わって、チラシを印刷し終わるころには日も暮れかけてきており、そろそろ下校時刻が差し迫ってきていた。
「でもこれだけで大丈夫でしょうか? 」
花陽が心配そうに言う。
「これだけとは? 」
「ポスターやチラシを貼ったり配ったりするだけでいいのかということです」
「他にも何かした方がいいということ? 」
花陽が頷く。
「下校時刻が迫ってきている中で申し訳ないですが一緒に考えてくれませんか」
今回の件に関して花陽はとても積極的である。本当にこの部活を存続させたいのだろう。
「もちろん、付き合うよ」
「私も花陽さんに従います」
「……うん」
「みんなありがとう」
そうして4人で考え始めるが、ポスターという意見を出した後なのかどうしてもそれに引っ張られてしまって中々意見が出なかった。
しばらくして口を開いたのは花陽だった。
「あの、いいですか? 」
みんなが頷く。
「昼休みに放送で宣伝するというのはいかがでしょう? 」
「放送部のコーナーですか? 」
確かにたまに放送部では部活動紹介のコーナーみたいなのをやっている。それに出させてもらうということか。
「ええ、それでしたら全校生徒に伝わりますし、より効果的かと」
「でも、急に承諾ってとれるもんなの? 」
「ですので今から放送部に行って承諾を得てこようかと思うのですがいかがでしょうか? 」
「他に案もないみたいだしそれでいいと思う」
という俺の言葉が決定打になったのか、花陽と涼音さんはまた二人で部室を出て放送部へと向かっていった。
「鳥飼さん、ありがとう」
「え? 」
突然言われたその言葉に俺は戸惑う。
「何で? 」
「花陽さんがこうまで積極的に行動されるというのは今まではなかった。それがこうも変わったのは鳥飼さんが花陽さんのサポートをしてくれたからだと思う。私ではそうできなかった。だから、ありがとう」
と、俺の目をまっすぐに見つめて言ってくる。
ああ、この娘は本当に光堂寺花陽という存在を大切に思っているんだなということが伝わってきた。
その真剣な思いの強さに上手く返せる言葉が見つからず、ただ、
「俺のおかげじゃなく、花陽自身が頑張っているからだろ」
とだけ返すのが精いっぱいだった。
その後は二人の間に会話はなく出来上がったチラシを整理したりして時間は過ぎていった。
モニターから音がして、先ほどと同じようにドアを開けると二人が入ってきた。
さっき戻ってきた時とは違って花陽の顔は満足そうだった。
「その様子だと……」
「はい、明日の昼休みに放送させてもらえることになりました。私と涼音さんの2人が放送室に行きます」
「良かった」
「はい、一人でも多くの人に興味を持ってもらえるように頑張ります」
そう言って両手を前にしてフンと気合を入れる。
「……うん、頑張る」
「じゃあ、明日はこれを配って、放送をするということで」
それでその日は解散となった。
今回も読んでいただきありがとうございます。よろしければ感想や評価、ブックマーク等よろしくお願いします。




