部活見学。3
俺たち三人は文芸部が活動している教室の前に来ていた。
ノックをするが中から返事はない。もう一度ノックをすると中から、返事が聞こえたため扉を開ける。
中では、何人かの部員が会話をすることもなく、本を読んでいた。
その本も文庫本の生徒もいれば、漫画を読んでいる生徒もいた。
「俺たち今、部室の見学でいろいろまわっているんですけど」
俺がそう尋ねると、部長だろうか、生徒の一人が本を閉じ、革張りの長椅子に座ったまま返事をして来る。
「うん、話題になってるね。3年の方でも、部活動に熱心な連中は後ろの二人に入ってもらおうといろいろ考えているみたい」
そして、
「自分で言うのもなんだけど、真面目に部活動をしたいというならここはお勧めしないかな。
文化祭のために部誌を作る時期以外はこんな感じだからさ」
そう言って、思い思いに本を読んでいる部員の方を見る。
俺たちの部活探しの目的も友達を作るというものであり、その活動内容に特に重きを置いているわけではないので、この環境でも俺はいいと思うのだが他の二人はどう思ったか後で聞いてみようと思った。
それに、特にすることもなく、ただ本を読んだりしてのんびり過ごすというのは少し憧れる部分もあった。
「そうなんですね。部員はどのくらいいるんですか? 」
「部員はもっといるけどうちは幽霊部員も多いから、部誌に書くのは今いる人数くらいだと思う。うちはほら、こんな感じだから形だけでも入っておくには都合がいいんだよ。で、どうする? 何か読んでいく? 」
「いえ、今日はお話を伺いに来ただけですのでこれで失礼させていただきます」
「そう、ま、気が向いたらまた来なよ」
「ありがとうございます。失礼します」
そう言って俺たちは文芸部を後にしていったん教室へと戻る。
俺は今の文芸部は正直ありだと思った。活動自体もほとんどなく、時間的余裕もできやすいため、俺たちの目的である友達作りというのに重点を置きやすいと思う。
「今のところどう思った? 」
俺は素直に聞いた。
「私は央紀君がいいと思うならそれについていきますけど」
と少し遠慮がちに言うのは花陽。
万梨はうーんと考えている様子で少したって慎重に言葉を選んでいる様子で言う。
「私は別のところを選ばれた方がいいかと」
「どうして? 」
花陽が尋ねる。
「一番の理由はやはり、主な活動が文化祭の時の部誌を作るという以外は、先ほど見たように思い思いに本を読むだけになるということですね。確かに私たちの目的は部活動で成績を残すことではありませんが、あの活動の様子では部員同士のコミュニケーションもあまりとれているようには見えませんでしたので友達を作るという目的にはあっていないかと」
万梨の言うことはもっともであった。確かにさっきの様子では部員同士の交流はあまりないように思えた。大きな活動が文化祭の時の部誌作りだけというのも仲を深めていくには少ないだろう。
いつの間にか、俺はあの緩やかな空気にあこがれを感じて、目的について冷静に考えることができなくなっていたらしい。
俺は二人に告げる。
「確かに万梨の言うように、目的からはずれそうだな。じゃあ、また違うところ見てまわるか? 」
「分かりました」
「その方がいいでしょうね」
こうして俺たちの部室選びはまだ続くことになったのだった。
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