部活選び
だが、現実はそう簡単にはいかなかった。
クラスメートたちも二人が別々に行動する光景にすっかりとなれたのか、花陽にも今まで以上に積極的に話しかけてくれる。だが、そこからが進展しない。放課後や、土日は他の生徒たちの大半は部活動があるので予定が合わないのである。
この学校は部活動も盛んらしく、様々な部活がある。
俺は、次の作戦として花陽に部活を探してみないかと提案した。
「央紀君と同じ部活なら構いませんよ」
とは花陽の返事。
「危険が及んでは困りますので、私もこれだけは一緒にさせてください」
とは万梨の返事。
二人の距離を置かせる目的からは少し離れるが、花陽が怪我でもしたら、俺自身にも危険が及びかねないような言葉の意志の強さを感じたのでその条件を飲むことにした。
「じゃあ、部活を探さないとな」
そう俺がいった時、その言葉を聞いていたクラスメートたちが一斉に俺たち三人の周りに集まってくる。
「光堂寺さん、部活に入るの? 」
「はい」
「じゃあ、是非テニス部に入らない? 光堂寺さんなら全国狙えるよ」
「いや、光堂寺さんは陸上こそいいと私思うんだよね」
「いや、是非水泳部に」
「文科系でしょやっぱ、文芸部とかどう? 」
俺は近くにいた生徒に尋ねる。
「光堂寺さんって、スポーツもできるの? 」
「何言ってるの、そんなのみんな知っているよ。ああそうか君は編入生だったね。光堂寺さんは体育でもいつも何でもできるわよ。だからみんな最初のころは勧誘とかもしていたんだけど、光堂寺さんにその気がないみたいで、みんな諦めていたの。でも今回のチャンスが来たってわけ」
その時誰かが、
「え、綾女さんも一緒に入ってくれるの」
「当然です。花陽さんと同じ部活に入ります」
おおーっ、と歓声が上がった。
「何、綾女さんもスポーツ万能なの? 」
「そうよ、光堂寺さんの陰には隠れている感じはあるけれど、彼女も相当のものよ」
何と、本当に万能な人間はいるんだなと思った。それも二人も。
俺が話している間に、インターハイ予選の戦略を練り直さないと、三年の先輩のところに相談に行った人もいたし、更に熱心に二人に向けてプレゼンを続ける生徒たちもいた。
花陽が俺に視線だけで、
「どうすればいいですか」
と聞いてくる。
俺は、
「自分で決めていいよ」
と同じく視線だけで返す。
その意図が正しく伝わったのか、
「では、見学してから決めようかしら」
と花陽が言うと、周りの生徒たちの間で勝手にどの順番で部活動をまわっていってもらうのかのくじ引きが行われていた。
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