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注目の2人+1人

 三人で歩き続けて、学校の正門へと着く頃には、同じレヴィンの制服もよく見られるようになった。


 俺たち三人を見て驚いたような反応をするような生徒たちがなかなか多かったように思えるのが気になった。


 正門を抜けて俺は職員室で説明を受けるため、花陽たちと別れた。

 

 職員室で校長や俺の担任となる先生から改めて、今回の編入試験の意義みたいなことと、学校の簡単な仕組みについて、説明を受けた。


 それによるとどうやらこの学校では成績順でS~Eまでのクラスに振り分けられるそうで、俺はA組だということを告げられた。


 2―Aに入ると、面識のない俺を見て、「えっと、教室間違えてません? 」

 みたいな視線を投げかけてくる生徒もいたが、すぐに、

 

「ああ、そうか」

 と俺が編入してきた生徒であることに気が付いたようだった。

 今日俺がこのクラスに編入してくることは当然といえば当然だが、事前に連絡があったらしい。

 

 俺は先ほどもらった座席図を見ながら、目的の席を探す。

 自分の席へと座ると、隣に座っていた生徒が声をかけてくる。

 「もしかして君が今日来るっていう編入生? 」

 「はい」

 

 「いきなりA組に来るなんてすごいね」

 

 「そうなんですか? 」

 

 「うん、自分で言うのもなんだけど、レヴィンの中のナンバー2のクラスだからね」

 その女子生徒はそれだけ言うと、また近くにいた女子生徒と話し始めた。

 

 そうか、A組というのは、そのような立ち位置なんだなと、俺は改めて心の中で綾女さんに感謝をする。

 

 それにしても、花陽と万梨が見当たらない。別々のクラスになってしまったようだった。

 

 俺は残念に思う。これでは花陽と過ごす時間が限られてしまうではないか。それに友達作りのサポートという目的も達しにくくなってしまう。

 

 そう考えていると、先ほど俺に話しかけてくれた女子生徒が、改めて、俺に話しかけてくる。

 

 「ねえ、君、今朱音から聞いたんだけど、朝光堂寺さんと綾女さんと一緒に登校してきたって本当なの? 」

 

 そんな彼女の一言で朝の活気にあふれていた教室がしんと静まり返る。俺の返事を聞き逃すまいとしているようだった。

 「うん」

 

 そう俺が返事をすると、教室のあちこちから、

 「光堂寺さんと綾女さんと登校とかあの転校生何者? 」

 「そもそも綾女さんがついていながらよくその状況になったな」

 「うらやましい」

 などの小さな、だけども確かにそう聞こえる言葉などが、いろいろ飛び交い始めた。

 

 「なに、あの二人ってそんなに有名人何ですか? 」

 俺は、彼女に尋ねる。

 「そりゃ、もちろん」

 彼女が食い気味に説明してくる。

 

 「まず、光堂寺さんといえば、あの光堂寺製鋼の一人娘にして、この二年の首席、それに加えてあのかわいさ。有名にならない方が無理というものよ。そしてその傍らにいつもいる綾女さん。学年三位にして、スポーツ万能。それに加えてこちらも光堂寺さんとタイプは違うが同じくらいにかわいい。二人ともこの二年、いや学校を代表するような有名人よ」

 

 「そうなんですね」

 スペックは高いと思っていたが、まさか学年一位と三位だったとは、どおりでクラスが違うはずである。それにレヴィンで一番ということはこの国で一番と言っても過言ではない。

 二人はSクラスなのだろう。

 

 「それで」

 と彼女が続けてくる。

 「そんな、二人と一緒に登校してきたという君だけど、いったい何者なの? 」

 

 その言葉に教室にいる生徒の何人かが聞きたいことを聞いてくれてありがとうとばかりに、頷いてくる。

 どうやら代表して彼女が俺に対して質問をするようになったみたいだった。


  彼女からの質問に、花陽の友達作りをサポートしにこの学校に来たと答えるわけにもいかず、

 「ただの知り合いみたいなもんです」

 と、濁して答える。

 「どういう知り合いなの? 」

 

 彼女がさらに聞いてくる。

 「昔、光堂寺さんの家で開かれるパーティーによく行っていたから、その知り合い、です」

 「そうなんだ、それで」

 と彼女が続けて聞こうとしたとき、担任が入ってきてHRが始まった。

 

 その後も続けて授業を受けたので質問の続きは昼休みになってからだった。


 そこで質問とともにいろんな生徒から聞いた話によると、花陽と綾女はほとんど行動を共にしていて、めったにその他の人とは行動を共にしないらしい。

 また、花陽はあの容姿なので案の定もてるらしいのだが、それらをガードしているのが万梨だということも聞いた。

 だから、他の生徒、それも異性である俺が一緒に登校してきたのを見て話題になったらしい。


 午後の授業も終わった。

 レヴィンの授業はやはり進みが早く、その分復習に時間が割かれているようだった。


 俺は、部活も入る気はないのでSクラスへと向かう。花陽と万梨も入っていないらしい。

 Sクラスから出てくる人の何人かは、俺の方を見て「ほら、例の」

 とか小声で言ったりして見てくる。

 どうやら、一緒に登校したということは本当に珍しいことだったらしい。

 しばらくすると、花陽と万梨が教室から出てきた。

 花陽は俺の姿を見つけると、

 「お、央紀君、どうしましたか? 」

 と少し慌てたように言った。

 「いや、一緒に帰ろうかと思って」

 その俺の一言でまた周りが少しざわっとなる。

 「分かりました」

 その万梨の一言でそのざわめきはさらに大きくなる。

 

 周りのざわめきを気に留めることなく、2人は歩きはじめる。

 俺もそれについていく形で歩きはじめる。

 

 「今日一日はどうでしたか? 」

 帰り道、花陽が尋ねてくる。

 「うーん、まだわからないことだらけだけど、やっぱりレヴィンて感じかな」

 

 俺のその答えにもなっていない答えを微笑みながら聞いてくれる。

 「何ですの、それ」

 それにしても、敬語がどうしても抜けないのは育ってきた環境のせいだろう。

 

 そんなことを話しながら、光堂寺の別宅へと着いた。万梨は綾女さんとは違い、ここには住んでいないが、よくここに放課後来てるらしいのだ。もっとも何故か、理由も告げられず、来てはいけないと言われていた期間があって、その理由が鳥飼さんの勉強会のためだったというのを後から知ったと万梨から聞いた。


 その後、また光堂寺の家で綾女さんが用意してくれたお菓子を食べながら時間を過ごして、家へと帰った。


 家に帰り、明日の準備をしているときに、ふと気が付いた。

 俺、何もできていないと。これではただ、俺がレヴィンへと入っただけではないか。

 花陽のサポートは何もできていない。

 これでいいのかと。


今回も読んでいただきありがとうございます。よろしければ感想や評価、ブックマーク等いただけると励みになります。

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