#恋
「好きな人がいるんだ」
友達が私に打ち明けてきた。
「誰?」
「オレンジ色の服をいつも着てる人」
友達が恋をするなんて意外だった。
誰かに恋をするようなタイプではないから。
「スラッとしていて逆三角形なの」
「そっか。告白した方がいいんじゃないの?」
「でも、その人は私のこと何とも思ってないよ」
こんな表情をする友達を初めて見た。
いつもは輝きに満ちた表情をしているから。
「ずっと隣にいたいし、相性はいいかもしれないけど、告白なんて無理だよ」
真剣に相談してくれている友達に、真剣に答えてあげようと思った。
「その人とは、気が付いたらいつも一緒にいるんだ」
「うん、そうなんだね。それで、名前は何ていうの?」
「野菜名?それとも品種名?」
「えっ?なになに?」
私は最近では一番深いパニックに落ちていた。
脳を正常に戻すまでには、相当の時間を要した。
「あっ、好きなのは、人参なんだけど」
「好きな人って言ってたよね?」
「人参は【人】っていう漢字が入ってるしね」
「それで、人参のどういうところがいいと思ったの?」
「いつも一緒にいるんだけど、私と相性抜群でね、とにかく大好きなの。私の白い肌と人参のオレンジ色の肌も合うしね」