それぞれの出発03
唐突な、会話から始まります。意味がわからなければ、前話からどぞん(;^ω^A
修正しました。
3代目ミストラル→二代目ミストラルでした。失礼しました
改めて読み返したところ、設定がぐちゃぐちゃにw。初代大精霊はミストラルという国が作られる前の精霊の長でした。そして二代目大精霊=初代ミストラルとなり人との共存が始まります。時は過ぎ現在は三代目大精霊であり二代目ミストラルという流れになっています。つまりミトさんは二代目大精霊であり初代ミストラルという解釈でお願いしますm(。≧Д≦。)m
「あっ……王都ではありませんか⁉︎ サウスクラウドでは⁉︎ あそこはミストラルの情報を欲しがっていますよね。実際にミストラルにちょっかいを出してきたんですから」
カミュールさんが、もっともらしいことを言う。
「サウスクラウドは100%ないね」
それに対しミトさんは間髪を入れず、そして容赦なく即否定をした。
「ど、どうしてですか⁉︎ サウスクラウドとしてはミストラルの情報は喉から手が出るほど欲しいはずですよ」
怯むことなくカミュールさんがムキに反論した。
「だからだよ。なぜなら情報を教えた者は命の保証がないのさ。実際、転生崩れの野盗は都合よく使われて、結果的に全員が見捨てられたんだからね」
……確かにそうだ。あの使い捨てのような惨劇を目の当たりにしても尚、交渉に行くのは無謀だと言わざるを得ない。ジフリークもそこまでバカではないはずだ。それを踏まえてトウタなりの見解を伝えた。
「一つ言える事はジフリーク達の情報が他国にとって価値のあるものだとしても、実際に交渉の余地がある国は限られています。……当然、遠方の地理までは把握できないはずですから、隣国に限られるはずです」
「そうですよね。まるっきり未知の場所へ行くメリットは、ないですもんね」
「妥当な推理だ。私もトウタの意見に賛成だね」
「となると隣国と呼べるのは、サウスクラウド王国を除けば3つに絞られますね。まず地形的に近いのは海国ラテール」
「そうだね。あそこは、三方を山に囲まれ残りが海に面した街だから防御に特化している。そのおかげで治安がいいから他国から人がどんどん集まってくる。人が集まれば交流が増え貿易が栄える。ここらあたりでは、発展の進捗が一番目覚ましい新興国さ。当然、未知の情報や物資なども多く集まってくるに違いない。当然、ジンカイ達にとっても充分に交渉の余地があるだろうね」
「あと、少し遠いですが、山岳に囲まれた盆地にあるブロックフロー国があります。こちらは、古き良き時代の名残と言った感じの印象でした。古きを重んじ改革を嫌う、いわば外部との交流を極力控えた閉鎖された国だと思います」
「閉鎖的といえば、ミストラルもそれほど他国との交流は多くないですよね」
「ミストラルは元々、精霊の隠れ里だったのさ。人が住めるようになったのは、つい最近だよ」
「いやいや……ミトさんの感覚で言えば『つい最近』かもしれませんが、人と共存して100年くらいの歴史はありますよ」
「人から見ればそういう感覚なんだろうね。ただ、その話は別の機会にでも話すさ。さぁ話を元に戻すよ。……最後に精樹大国オールドウッズ。前にもいったけどジフリークは父の所在は知らない。だから『父の奪還』という大義名分での精樹大国オールドウッズへの接触はありえない。何よりあそこは人間との交流を昔から絶っている。ただ、そういう情報が知らない前提で、向かう可能性はある。仮にジフリークが向かったのなら偶然の導きってやつだよ」
海国ラテール、ブロックフロー国、精樹大国オールドウッズ……接触を試みるとするならば、この3国になるだろう。ただ、どの国においてもジフリークと直接的に結びつけるだけの確たる証拠がない。……あまり気乗りはしないが、トウタはミトさんに提案をしてみた。
「ミトさん。アギト君たちの手を借りる事は出来ますか⁉︎ 自分は単独でカミュールさんとアギト君達で、せめて一箇所を行ってもらうわけにはいかないですか⁉︎ 後でネスザック次長にはそれとなく言っときますので……」
「な、なんて事言うんですか‼︎ 嫌です〜〜〜‼︎ 私は師匠と一緒がいいんです‼︎」
カミュールさんが、本当に嫌な顔をしている。さらに今にも本気で魔法をぶっ放しそうな勢いである。さすがに怒らせすぎたかと思ったが、疑問を持っていた部分を一か八か聞いてみた。
「こんな事言うのはなんだけど……カミュールさんは、これまでせっかくアギト君達との連携魔法を磨いてきたんだよね。そっちはいいの⁉︎」
「そ、それは、……」
カミュールさんには酷な質問をしてしまったかもしれない。しかし事が大事だけに私情を必要以上に挟んではいけないと思っている。
「あっちは私がフォローするよ」
口ごもるカミュールさんをよそにミトさんが代弁をした。
「フォロー⁉︎……修練ではなく、何か助ける事があるんですか⁉︎」
「今、二代目ミストラルは静観しているが未だに一部のリンカーと反りが合わない現状は変わらない。だから仲介役をしてもらうために為に、精樹大国オールドウッズに行こうと思っている。その旅にあいつらも連れて行くつもりさ。」
「まぁ〜」
「あいつらにも、そろそろ『外の世界』を見せる時が来たってことだね。タイミング的には、ちょうどよかったのかもしれない」
「タイミング……ですか!?」
「アギトにも言われたのさ。メンバーのパワーバランスが悪いってね。だから手っ取り早く強くなりたいってね。確かにカミュールとアギトたちの連携魔法は相対的に良くなってきては……いる。だから本当ならば、このままの連携精度を上げ、全員のスキルアップをさせたいのが親心なんだけどね」
「では、なぜカミュールさんとアギト君たちを離すのですか⁉︎ 上手く連携が噛み合ってきた時期なんですよね⁉︎」
「アギトたちの弛まぬ努力は認めるさ。ただ、その反面、ちょうど魔法に対して自信満々な時期にきている。何しろ野盗戦、そしてリンカー先輩との口論戦と連続で勝利したからね。その全てが思い通りの展開で勝利をしてきたんだ。全員が少なからず浮かれているんだよ。だから一度、その慣れを引き締めなければならないのさ」
「き、厳しいですねぇ〜」
「まぁ〜飴と鞭だよ」
「鞭しかないように思えますけどね」
「とにかく私が精樹大国オールドウッズに行くついでに情報を収集しとくよ。そして割と近いブロックフロー国も用事が済み次第なんとかしてみるさ。その代わり、あんた達は海国ラテールを任せたよ」
「わかりました」
「ミト母さんありがとう‼︎」
そう言いながらカミュールさんは席を立ち、ラルの寝ている揺り籠の方へ向かっていった。トウタと一緒に同行という事は嬉しいと同時に、足手まといになってはいけないという不安が拭いきれない雰囲気を醸し出していた。それは喜びに満ち溢れているセリフとは裏腹に引き締まった表情から容易に想像出来た。
トウタにとっても、これまで任務とは全く異なる内容に一抹の不安はあった。これまでは転生魔法における任務はいかに『痕跡を消すか』だった。それは偏に転生魔法の秘匿性に集約される。それに対し『人探し』は探すのは当然ながら、見つけ出した後のジフリーク達の拘束までをしなければならない。情報を外部に漏らさず、迅速に離反者を見つけ自体を終息させる。この相当難易度が高い任務に加え、同時にカミュールさんとラルも守らなくてはならない。その為には、ありとあらゆる想定をして準備をせねばと心を引き締めるのであった。




