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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第二章 『動き出した思惑編』
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それぞれの出発02

アギト君たちを襲った自称先輩リンカー達への事情聴取は実質不可能なため周囲から聞き込みをするしかなかったが、ここ数日いかんせん有益な情報は得られなかった。


正直なところミストラル内で得られる情報は行き詰まった感も否めない。トウタは日々の鍛錬にも身が入らず、早めに帰宅することにした。家の近くまで戻ると窓から灯りが見える。みんなしてこんな早い時間に家に揃うのは珍しいなぁ〜と不思議な気分になった。


普段通り『ただいま』の挨拶をし、即座にラルの様子を見に行く。もはや日課ルーティーンとなっているが、ラルはこちらの事情など御構い無しに相変わらずスヤスヤ寝ている。ただこの寝顔は今日に限って言えば、これから深刻な話をする前の一服の清涼剤のように感じられた。




ひと段落したミトさんとカミュールさんに、追跡任務の件を伝えると予想通りの展開になった。


「私も師匠と一緒についていきますぅ〜‼︎ 今回ばかりは絶対に、絶対に、ついて行くんですぅ〜‼︎」



カミュールさんが、ミトさんに大声で猛アピールをしている。こうなると誰もにも止められない。ところがミトさんも今回ばかりは、なかなか答えが出ないようだ。相当難しい顔をして考えている。



「ミト母さん……今度は私が師匠の役に立ちます。だから許可をください。上層部へ掛け合ってくださいな」


ようやく意を決したようにミトさんのその重い口が開いた。


「仕方ないねぇ……今回は、あたしにもミスもあった。もっと早く上層部の隠している部分を把握していれば、ここまで大事おおごとにならなかったかもしれないね」


「そこはネイトとリンカーの複雑な事情が絡んでいた事ですし、いくらミト母さんでも無理だったのでは⁉︎」


カミュールさんのフォローとも言える返事に対し、ミトさんは小さく首を横に振った。


「そもそもリンカー必要性の発端は精霊からの提案なのは前にも言ったね。そして精霊を含む三者の関係を潤滑じゅんかつにする為に精霊はあえて表に立たず、窓口をネイトにして1対1の構図にした。2対1の構図にしない方がスムーズに行くと思っていたんだよ。しかし結果だけを見れば、ネイトとリンカー衝突の原因になってしまったのさ」



珍しくミトさんが反省している。そもそも、ミトさんのみらいを読む能力は、魔法の概念を超越した当てずっぽうとも取れるひらめき。その精度がいかにひいでていたかは、これまで精霊達を率いてミストラルを長く繁栄してきた結果から容易に想像出来る。


ところが、そんなミトさんであっても、人同士の……人による欲と見栄の張り合いから肥大化した抗争までは予測出来なかった。そして今回、奇しくも同じ動機による事件が再発してしまった。ミトさんとしては『共存』と言う形で人と精霊との関係を構築してきた。その為、必要以上に人の感情的な領域テリトリーには深い入りしてこなかったのだろう。そこまで管理してしまうのは、もはや共存ではなく『支配』になってしまうからだ。ネスザック次長の話といい、ミトさんのこの発言といい、平和を望む上で、トップならではの立ちはだかる苦悩をトウタは感じ取れた。





そしてミトさんは本題に入る。


「今回の捜索……はっきり言えば、精霊達による大規模捜索や直轄の偵察班による隠密的な捜索は使いたいくないんだよ」


「どうしてですか⁉︎」


カミュールさんが即座に質問した。


「上層部の意図を汲み取れば、これ以上騒ぎの拡大をしたくないからですよね」


トウタはそう言いながら、同時に本気で悩むネスザック次長の苦虫を噛んだような顔を思い出した。



「国同士のトラブルまで発展する危惧は何としても避けなければないらないが、それ以上に離脱した連中を必要余計にあおる可能性がある。過度に追い詰めると、いざとなればミストラルの情報を余計にばらまく事も躊躇ためらわないはずさ」


「確かに、それだけは避けたいですね」


「かといって今回の任務は単独で追跡するには分が悪い。おそらくジフリーク達は前回の野盗といった末端の連中ではなく、最終的には異国の高官レベルとの交渉する可能性が高い。だから、どうしたって根回しが必要になって来るのさ。」


「なるほど」



「確かにこれまでの任務(転生魔法候補地探索)での経験で周辺他国エリアにおける熟知度という観点からも、トウタが追跡適任なのは言わずもがなだろう。問題は『人探し』という特殊な任務において、どうしても他人との交渉における情報収集が必須になってくる。この場合、隠密行動では分が悪いと言わざるを得ない。単独の旅は特に不自然だ。だからカミュールとラルと一緒に行動すればベターには違いない……とも言えなくもない……」


なんとも歯切れの悪い回答だが、言わんとしている事は理解できる。とどのつまり単独行動より三人の親子関係みたいな身なりの方が身分隠しが容易に出来ると言う事だろう。


「ありがとうございます、ミト母さん‼︎」


カミュートさんが浮かれているのを他所よそに、一番核心な部分を聞いた。


「それもそうですが、それ以前にどこへ行ったのかすらわからないのが問題なのでは⁉︎」


「まずは行き先の絞り込みが最優先だねぇ」


「さすがにあてもなく追跡するのには無理があります。ジフリーク達がミストラルを離脱して、もう1週間も経っているんですから痕跡などが残っているはすがありません。せめて、大まかにどこに行ったのかさえわかれば、手の打ちようはありますけど」


正直、ネスザック次長から正式な任務を受けた身ではあるが、あまりに事前情報がない現状に、どう動くべきか悩みの種ではあった。

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