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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第二章 『動き出した思惑編』
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それぞれの出発01

 後日、トウタはネスザック次長に直談判し、ジフリークを含む数人の離脱者に対する緊急捜索を求めた。


カミュールさんとミトさんから聞いた話を元にジフリークへと辿り着いた事に対し、ネスザック次長の開口一番のリアクションは


「あちゃ〜〜」


「『あちゃ〜〜』じゃないですよ‼︎ こりゃ失敗したなぁ〜みたいな返事をしないでくださいよ‼︎」


「まさかトウタ君がそこまで機密事項に首を突っ込んでくるとは思わなかったからね」


「首を突っ込ませたのは、次長でしょ」


「そうなんだけどもね。……ここだけの話だけど、ホウセツさんとジンカイさんの2人は例の事件を知っている者達からは未だに支持が高いのさ。一種の信仰と言ってもいいかもしれない。勿論23人の尊い命が失った事も忘れてはいないよ。ただジンカイさんはネイトのリーダーとしての手腕は凄かったけど、周りを囲む側近達があまりにもタガが外れてしまったのさ。結果ジンカイさんへのあおりは歯止めが効かなくなってしまった。彼自身、どこかでネイトVSリンカーという湾曲した構図を止めたいと思っていたはずさ。しかし一度暴走した集団の勢いは止められなかったんだねぇ」


リンカーのトップとして立ち振る舞うことをいられていたであろうジンカイさんにも葛藤があったはずだ。それはある種の集団心理による錯綜なのだが、ネスザック次長の説明はどこかかなしげに聞こえた。


「ジンカイさんにはネイトの奥さんとの息子もいた事ですし、いきなり態度を軟化する事はリンカー達の怒りの矛先が家族まで及ぶと考えたのでしょう。暴走したリンカー達を止められないのもわかる気はしますけどね」


トウタはこの振り回される辛さに感情移入していた。周囲に祭り立てられ、気づいたら自分でもどうする事の出来ない状況。まして集団の力に飲み込まれる勢いは、一人ではどうする事も出来ない。似たような出来事は規模の違いこそあれど、現世においてトウタも経験済みだった。



ネスザック次長は、少し俯向うつむき、言葉を選ぶように語り出した。


「……今となっては、我々を含む全員の反省点なのさ。何しろ全てが初めての試みだった。ネイトとリンカーの関係……言葉でわかっていても、お互いに納得出来ない部分があの当時にはあったんだ」



ネスザック次長を含む街を代表する上層部がこの件を隠す理由もわかる。……おそらく当時、責任問題に間違いなく発展したはずだ。しかし『機密事項』にしたという事は、この件においてふたをしたのだ。誰も傷つかず誰も責任を負わない結論に収めた。……まぁ、ジンカイさんを首謀者として追放しただけでも、成果ありだと考えたのだろう。それが上層部達の苦し紛れの妥協点だったのかもしれない。





ネスザック次長は『う〜ん、う〜ん』とつぶやきながらながら、頭を抱えた格好で悩んでいる。


「あの〜悩んでも答えは変わらないんでしょうから、早く言ってくださいよ」


「あのね……言っとくけど、これは時間稼ぎじゃないから‼︎ 今日の晩御飯は何がいいかなぁ〜とか、考えていないから‼︎」


「誰も、そんな事は言ってませんよ。そもそも悩むって事は、もう決めてる事なんですよね」


「確かにそうなんだけどね。……ただ、事はそう単純な話ではないんだよ。下手すると他国家同士の問題に発展する可能性があるんだよ。そういうトラブルは苦手なんだよね〜。だからこそ事前にやっとかないといけない事が多いのさ」


「悩んでいるのはソコですか。個人的な事でなく、国絡みまで発展しそうな流れなんですか⁉︎」



「あくまで保険だよ。君たち若者は、これから『表』として目立つ存在で結果を求められるだろう。当然、結果において賞賛もされるが失敗すれば避難される。ところがね……『行政』は失敗は許されないんだよ。失敗はイコール街の存亡に関わるからね。だから私たちの事を『現場に出ないでらくしてる』とか『税金の無駄使い』とやっかむ連中もいるのは知っている。それでも、私達は、表に出ないところでちゃんとこの街の機能が循環出来るように、心血を注いでいるんだよ。そういう涙ぐましい努力は誉めてほしいなぁ〜」



さながら、縁の下の力持ちといったところだろうか⁉︎ 地味で目立たないからこそ、成功しても賞賛を受けない。出来て当たり前という図式だ。その代わり失敗は、即座に失望へと変わる。人として年齢を重ね、人望が増え、人の上に立つという事は、そういう見えない苦労があるんだなぁ〜とネスザック次長の本音とも取れる言葉から、苦労をうかがい知ることが出来た。……ただ『褒めて欲しい』の一言は余計だとは思うが……



そして意を決したようにネスザック次長はトウタに任務を告げた。


「わかってはいるだろうけど、引き続きこの件を君に任せるよ。そして出外許可と、他国の領域へ入る共通許可証も出そう。後手後手だとは思うが、いち早く離脱したリンカー連中、そしてその中心人物の可能性が高いジフリークを見つけてほしい」


それは今後の上層の対応だけでなく、俺に対しても失敗は許されない任務だと強調しているかのようだった。


「そもそも彼らの狙いはなんでしょうか⁉︎ 自由になるために離脱したのでしょうか!?それとも、ミストラルの情報を交渉材料に他国とコンタクトを取るんでしょうか⁉︎」


「今のところ、なんとも言えない。ただ、この前のアギト君達への勧誘といい、個人ではなく集団として何かしら画策をしてる事には間違いないね。その辺りは、君たちが捕まえた連中から聞けるといいねぇ〜」


「それは難しいと思いますよ。ああいう『先輩』とか『組織』とかいう縦社会的な言葉が好きな連中は、よほどのメリットがない限り簡単には口を割らない傾向があります。まして対外的武力行使ではなく、内務規定違反程度では、魔法使用による強制自白は認められていません。おそらくそこまで考えてのリンカーの勧誘をしていたのだと思います。あの場に自分もいましたが、確保された連中は、拘束後は暴れることもなく、それでいて目は死んでいませんでした。『今捕まっても、いずれ大義の為となる』そんな確固たる意志のようなものが見受けられました」



「若者のエネルギのー使い方にはあこがれるけど、もう少しまともな使い方をしてほしいよね〜。じゃないと中年おじさんは休む暇がないんだよ」


「心中察しますが、その辺りまで気配りが出来るのも『年上の仕事』なのでは⁉︎」


「君も、痛いところを突いてくるねぇ〜。……まぁ確かに若者をきちんとした道に導くのが我々『大人の役割』なんだけどね。ならば若者の方からも、行政に興味をもって、もう少し寄り添ってくれてもいいんじゃない⁉︎」


「そんなに、すがるような目で言われても、返答に困りますよ」





 この後、正式な通達『離脱者追跡任務』をトウタは受けることになる。

本当は、今後の展開に対し膨らみを持たせるためにコンセプト画像を描きたいんですけど、時間がなぃ( ̄Д ̄;) ガーン。

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