幼き日々08
カミュールが付き添いに来てから数日後、ホウセツさんの意識は戻った。絶対安静には変わらないが、とりあえず少しの会話なら医者も認めてくれた。
「カ……ミュール……すまない」
安堵なのか?贖罪なのか?……涙交じりの精一杯の口調で謝るホウセツの姿がそこにはあった。
「師匠〜……本当に、よかった。……生きてくれて、本当によかった」
それからは、2人の間に言葉はなかった。ただ、カミュールがホウセツの手を強く握っている事で、二人の想いは互いにわかっていた。
2週間もすると、ホウセツはだいぶ回復してきた。会話もしっかりし、起き上がることも出来るようになっていた。ただし、両足は力が入らず最悪の場合、杖を補助にしての歩行になるかもしれないと医師からは言われた。
ホウセツは、この通告で腹を括った。これからの全てをカミュールに託すことに決めたのだ。転生魔法だけではない。これまでで得られた知識とその先を見据えた未来。カミュールの両親と一緒に守り抜いてきたモノ。そう言った『全て』をカミュールに伝える事が、自分に課せられた最後の使命だと悟った。
そして、両親を失ったカミュールを憎しみで暴走させない様に、誠実で天真爛漫な女性に育てる。 亡きカーフとネイクールが言っていた自慢の娘となるように……
ホウセツはカミュールの頭を優しく撫でながら自身を律するかのように言葉を贈った。
「カミュール。私の全てを君に託すよ」
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ミトさんとトウタの目の前でカミュールは大きな深呼吸をした。そして、一言づつ、力強い意思を持った口調で決意を発した。
「その後、師匠は私に『生き様』を教えてくれました。そしていまの私があります。師匠との出会いが私の支えであり、生きる道を示してくれたのです」
「……」
「両親を失い自暴自棄なりそうな私の唯一の支えでした。そして、この転生魔法の真の使い方を教えてくれたのです。私はこの転生魔法に救われたのです。この魔法で命の尊さを教えてもらいました」
「……」
「師匠こそ私の恩人なんです。人としての指針を教えてもらい、希望をもらい、勇気をもらった。何より私に生きる道を示しててくれた」
カミュールさんは感慨深く、頷いている。
「だから師匠は私の全てなんです。師匠‼︎」
そういって、トウタの手を握ってきた。
「……あのぉ〜壮大な昔話には胸打つものがあったよ。でも最後の『師匠』ってところだけすごく気になるんだっけど。……なんで俺が感謝されているような話になってんの⁉︎ それ、俺じゃないよね!?カミュールさんと俺との出会い方はそんなんじゃないよね⁉︎ そんな勇気はあげてないよね⁉︎」
トウタは『師匠』という呼称に戸惑いを隠せないでいた。
「だから、これは師匠の話です。師匠の話ではないですよ」
「カミュールさんの中では師匠と師匠がどう区別されているの⁉︎ 全然わかんないんだけど」
「師匠⤴︎と師匠⤵︎ですよ。全然違うじゃないですかぁ〜」
「イントネーションなのね。……ちなみにどっちのイントネーションが俺なの⁉︎」
「そんなの師匠に決まっているじゃないですか」
「今、わざと抑揚抑えたよね。棒読みに近い感じで言ったよね」
「……バレました⁉︎フフフ」
カミュールさんが照れ笑いをした。今回の昔話は決して楽しい話ではない。むしろ人生における一大事な話だ。これを誰かに伝えると言う事はある種の覚悟だと断言してもいい。それほどカミュールさんにとって、お気楽に、簡単に、話せる内容ではない。
だからこそカミュールさんの笑顔の奥にある、悲しみと苦しみを汲み取る必要があるとトウタは感じていた。
「……それにしても、よくここまで立ち直ってくれたね。前向きに生きる術を身につけたね。本当の師匠に感謝しないと」
「はい、両親とホウセツさんの分も私が生きていかないといけないと心に刻んでいます」
「良い心がけだと思うよ。ホウセツさんも……出来れば会って見たかったなぁ」
「そうですね。師匠もちゃんとあの空の上から見ていてくれていると思いますよ」
「ちなみにその師匠は俺じゃないよね⁉︎交換魔法【コンバート】で俺を空に吹っ飛ばすってオチじゃないよね⁉︎」
「バレました⁉︎……でも、そういう師匠のノリ突っ込みも大好きですよ」
「……そういうつもりでは、、、」
「そう言う恋愛には興味ないみたいなところも大好きです。大恋愛の末に振られてもう恋愛はもう絶対しない!!みたいなスタンスを見せつつ、実は恋愛したくてたまらないってところが、大好きです。」
「偏見は止めてくれるかな。誤解を招く言い方はやめてくれるかな。想像で俺の恋愛事情に土足で上がるのはやめてくれるかな」
「そしたら靴を脱いだら、いいですか⁉︎」
「だから、例えに乗っかんなくていいから」
「またまた〜師匠のそういうシャイなところも好きですよ」
そう言いながら、カミュールはトウタが照れているのを見逃さなかった。
話の流れとしては強引ですが、どうしてもこのエピソードを入れたくて、ねじ込みましたw




