幼き日々04
間があいてしまってすみません。時間を見つけて何度も推敲しては何度も書き直す始末(ノд-。)クスン……キリがないので深夜の勢いで更新します。
月日が経つに連れネイトのとリンカーの確執は悪化の一途を辿り、互いに距離を取るようにまでになってしまった。抗争には発展しないものの、ギリギリの緊張感なのは誰もが感じていた。
そんな中、ネイトのカミュール親子がリンカーのホウセツさんと同行している案件だけは、暗黙の了解で見逃されていた。転生魔法の継続という『業務』はお互いにとって絶やしてはいけない最重要事項。ネイト、リンカー、精霊による三者それぞれの思惑はあるが、この件は不可侵領域として共通の認識で一致していた。
しかしホウセツさんだけは、その先を考えていた。今後、転生魔法をリンカーだけで継承するわけにはいかない。転生魔法継承の偏りは後々において必ず利権争いの原因となるからだ。だからこそ今度はネイトに継がせたい。その為に転生魔法使用者の次期指名をカミュールに託すことにした。偶然にもカミュールには転生魔法の適正があった事が、ホウセツさんがこの決断をした決め手にもなった。
「カミュール‼︎ そうじゃない、もっと精神を集中して‼︎」
「はぃ、師匠」
「雑念を、邪念を、消すんだ‼︎」
「はぃ、師匠」
古びた魔なび舎で、二人の声だけが響いていた。
普段は優しいホウセツさんも魔法を教える時だけは、とても厳しかった。そしてこの点についてはネイクールもカーフも口を挟まなかった。……正確には入り込む余地がなかった。親心としては厳しすぎる個人授業に対し、今すぐ間に入って止めたい気持ちで堪らなかったに違いない。しかし共にホウセツさんの任務仲間として、この魔法の凄さと危うさを間近でずっと見てきた者として、誰よりも中途半端な覚悟で使いこなす事は出来ないとわかっていた。だからこそ一定以上の厳しさは致し方無いと諦め、ホウセツさんに全てを委ねた。それほどホウセツさんを信じていた。
こうした厳しい修練を経て、当時史上最年少の若干13才でカミュールは転生魔法を習得する事になる。
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そんな矢先に、事件が起きる。
ミストラルの敷地内にワイルドモンス【少数の凶悪モンスター】が攻めて来たのだ。きっかけは些細なものだった。モンスの子を子供達が誤って拾って来てしまったのだ。通常、街の外から中に入る場合は、大人子供を分け隔てなく、簡単な血液検査と持ち物検査を義務付けてている。それは、リンカーが初めてこの街に入る時と同様な理由である。勿論、安全を重視する上で必要な事なのだが、今回は子供達にその検査を掻い潜らられてしまった。そして我が子を追いかけるように、親モンスが怒り心頭で街に侵入する事件が起きてしまった。ギガバビルと呼ばれるイノシシを数倍大きくしたその風貌は普段は温厚ながら、出産後だけが特に凶暴になり警戒レベルが跳ね上がるモンス。つまり、本来であれば回避出来る事を自ら招いてしまったのだ。
子供達が検査をスルー出来た理由は、この時期に過去に例を見ないほどの大雨が降り注いだ事が大きい。街は囲む堀の水は警戒水域を超え、街を流れる川は至る所で氾濫していた。手の空いている者は街の警備と住民避難を優先した事で、街に戻って来た者に対し検査を省略してしまった。全てが、悪循環の方へ向かってしまったのだ。
町中をギガバビルが走り回り住民がパニックになっている中、集会場では集まって来たネイトとリンカーが揉めていた。ここぞとばかりに「ここは、リンカーの出番だ‼︎」と事態取集の要請を求める。一方「こういう時だけ、責任を全て押し付けるな‼︎ 事は一刻を争う状況なんだぞ‼︎」と意見は衝突し、そのうち両住民は本質とは全く別な部分で揉め始める。そうした、くだらない責任のなすり付け合いの間にも町の被害はどんどん拡大していった。
後から知った事だが、この豪雨の中で街への帰途中に、リンカーの子供達はモンスの子を助けた事から始まる。しかし、その後の対処法を間違った。その場で安全な場所に返せばよかったものの、仲間内でこっそりと街内に持ち込んでしまった。その結果、自然災害とワイルドモンスによる襲撃という二重のトラブルに発展してしまった。護衛班、警備班、前線班、解析班、救護班……すべて戦力を投じても、河川氾濫対策と人命救助に大多数の人員を割いていた為に、モンス討伐の対処には圧倒的に手が足りなかった。
この未曾有の大惨事において、ネイトとリンカーは揉めに揉めた挙句、ようやく一時休戦という形で協定を結ぶ。しかしどう考えても手遅れ感は否めず、対応は後手後手だった。
目の前5m先の視界が見えないくらいの大雨と、立つのもやっとな状況の大嵐のせいで、伝達魔法【ネクストコール】が役に立たなかった。魔法による情報伝達が出来ない以上、自力での情報収集になるのだが、指示系統がネイト側とリンカー側の2つある事が本質的に致命的だった。
協定とはいえリンカーとネイトでの情報共有が出来ない事で新情報が錯綜する。また救援優先度においても意見が分かれ、なかなか明確な指示が出来なかった。所詮、付け焼き刃の一時休戦などという表面的な和解では、簡単に事態を収束出来いという事なのかもしれない。
この逼迫した状況にも関わらず、この後においても上層部は現場を無視し、失態における責任追求を優先し続ける。これに対し現場の人間は、明確な指示を受け取れず動きようがない歯がゆさ噛みしめていた。依然止みそうにない豪雨に伴う河川氾濫と目的のわからないモンス襲撃の被害はどんどん悪化する現実に、指揮系統の衝突という本当にどうでもいい揉め事まで抱え、全てにおいて対応出来ない苛立ちが先の見えない不安を更に煽っていた。




