昴(スバル)01
ぱっと見、10才くらいの男の子。私の挨拶も聞かず、裸のまんまでそこらじゅうを走り回り、しばらく追いかけっこをさせられた。……なんなのかしらまったく⁉︎ 前回のケイちゃんといい前世では裸族が流行っているのかしら⁉︎
その間、師匠は私の手伝いもせず少年の動きを観察していた。散々振り回された挙句ようやく捕まえ、服を着させたと思ったら、今度はもっといい服ないのかと文句をいいだした。……だからなんでケイちゃんの行動とかぶせてくるの⁉︎
それとも本当に、私の選んで持ってきた服のセンスがないのかしら⁉︎ だとしたら軽くショックだわ。……それにしても転生魔法でココに現れてから、もうずっとこの調子。完全にこの子のペースだわ。そして休む間もなく、今度は怒涛の質問ラッシュが始まった。
「ね‼︎ ね‼︎ 何ココ⁉︎ どこココ⁉︎ 今何時なの⁉︎ なんで地面濡れてるの⁉︎ あんたたち誰なの⁉︎ なんでいるの⁉︎ どうして霧の中なの⁉︎ ここは夢なの⁉︎ この先には何があるの⁉︎ 他には誰もいないの⁉︎ あと……」
「ちょ、ちょっと待ってね。一つづつ答えますんで」
私が丁寧に答えようとすると、その隙も与えずまた質問をしてくる。……全くキリがないわ。そもそもそんなにいっぺんにそんなに質問されても答えられないわよ‼︎ 仮にそれ全部答えたとして、全部理解出来るのかしら⁉︎
「ね‼︎ ね‼︎ おねーさんいくつなの‼︎ どこ住んでるの⁉︎」
……なによ、この子⁉︎ もう飽きたのかしら⁉︎ 今度は、いきなりピンポイントで私に対しての質問に切り変えてきたわ‼︎ いきなり個人情報に踏み込んできたわ‼︎ ここまでくると『せっかち』にも程があるわね
「ええとぉ〜まず、この世界のことから説明しますね」
「あっ……もう〜そういうのいいや‼︎ ところでおね〜さんのスリーサイズはいくつなの⁉︎」
「そういう事ではなくて、事態を、現状を理解してほしいので、一から説明させてくれるかなぁ〜。わかってくれるかなぁ〜〜」
「え〜かたい事言うなよ〜。スリーサイズくらい減るもんじゃないし」
「……な、なら、この際はっきり言いましょう。私のプライベートは絶対に教えません‼︎」
「な〜んだ。つまんないの。なら、もういいや‼︎……んで、どっか連れてってくれるんでしょ。早く、そこ行こうよ‼︎」
……もぉ〜なんなのこの子⁉︎ おねえ〜さんが優しく教えてあげようとしたのに、どんどん自分のペースで先進めようとしてるわ‼︎ 全くついていけないわ‼︎ 私では手に負えないわ‼︎
「師匠〜‼︎ 私では話が噛み合わないんですけど〜‼︎」
「大丈夫。この子は順応力が早い。……ちょっと、せっかちすぎるけどね。だからかなぁ〜おそらくこちらの言いたい事は、想像がついているんじゃないかなぁ〜」
「ま、まさか⁉︎ だって、まだなんにも話をしてないんですよ⁉︎」
「そんな事ないよ。さっきおね〜さんは、こう言ったじゃん。『この世界』って」
「う、嘘でしょ‼︎ 『あの一言』で、もう理解したとでもいうの‼︎ 自分のおかれている立場をわかったとでもいうの‼︎」
「そうだよ、わかったよ‼︎ だって、ここは僕の『知らない場所』だもん。そして『この世界』なんて言われたら、もう答えは1つじゃん」
「……なんて子なのかしら」
「話が早いようなので、こちらとしては大助かりだ。俺は取り急ぎ、撤収作業に入るよ。……そいえば君の名前を聞くのが、まだだったね。俺はトウタ。彼女はカミュールさんだ」
「昴……苗字は……言いたくない」
「オーケー、それでいいよ。んじゃスバル!! もうこの場所には用がないんで、準備が整い次第で戻ることにしよう。……我々の『秘密基地』へ‼︎」
「師匠〜〜‼︎ そんな悪ノリしないでくださいよ‼︎」
「いいね〜トウタ‼︎ 僕はそのノリ、嫌いじゃないよ‼︎」
「……私の理解出来ないところで、二人だけで共感してないでくださいよぉ〜‼︎」