アギトの憂鬱05
アギトとカノンさんがオープンカフェでお茶をしている丁度その時、その場所から少し離れた所からこっそり覗いている連中がいた。……そう例の3人。ゲンキ、スバル、オサムである。
「あのさ、俺たちのこんなストーカーじみた行為……これで何回目だよ⁉︎ いい加減、懲りろよ」
「いいんだよ。人の噂は蜜の味なんだよ」
「知らね〜よ。つかこの間、魔法を食べて甘い味には懲りたはずだろうが‼︎……だいたい色恋沙汰に首つっこみすぎなんだよ」
「人の恋路は元気の源なんだよね」
ゲンキがドヤ顔をしてる。
「上手くないわ‼︎ そして下世話すぎるわ‼︎ そもそもこのデートの瞬間を見て誰が得するんだよ⁉︎」
「損得の問題じゃなくて、魂の問題なんだよ」
「だから知らね〜よ。つか、なんでノリノリなんだよ⁉︎ なんでそんなにテンションMAXなんだよ⁉︎」
「少し、小さい声で話せよ。ただでさえ、アギトは記憶魔法【レコード】持っているんだから、下手な事すればすぐバレるんだよ」
「そこまでわかっていて、なんでこんな尾行するんだよ。なんで俺を誘うんだよ⁉︎」
「道連れは多い方がいいだろ」
「道連れじゃなくて『ハズレ』だよ。お前らと仲間扱いされている時点で大ハズレだよ」
「んじゃ、来なきゃいいじゃないか⁉︎」
「そ、それは……」
オサムは少し返事を濁した。
「それは⁉︎」
「……少し、興味あったんだよ。オレも」
「善人ぶりしないで、最初からそう言えよ。……でもオサムのそういう付き合いの良いとこ、オレは嫌いじゃないぜ‼︎」
「ボクも嫌いじゃないよ‼︎」
「……私は、嫌いだね」
「はう‼︎」
「ふぎゃ‼︎」
「あうち‼︎」
いつの間にか後ろにミトさんが立っていた。これは終わった。もうダメだ。
「み、ミトさん‼︎ いや、これは違うんだよ……これには深い理由が……」
「そういうのいいから‼︎ こういう時は、素直に謝るんだよ‼︎」
「ごめん」
「ごめんなさい」
「ごめんさない」
「モモちゃんに知られないだけマシだと思いな。あの子は、どんどん成長してるよ。あんたら、追いつけなくなるよ」
「そ、それは、絶対ダメです」
「僕は、モモちゃんが叱ってくれるならいいけど」
「ダメだろ、それ」
「どちらにしても、もう帰るよ。魔なび舎まで私が送って行くよ。もう寄り道させないようにね。なんなら、そのまま居残り特訓でもいいよ」
「そ、それは勘弁してください‼︎」
「今日は、掃除当番と風呂当番なんです。なので、今すぐ戻ってやらないとダメなんです」
「どうせ、そんなことだと思っていたよ。掃除中にアギトが出かけるの見かけてついてきたんだろう」
「……はい」
「とっとと帰って、掃除の続きをやるよ」
どうやら3人はミトさんに見つかった時点であきらめたらしい。ミトさんから逃げ切れるはずもなくトボトボと魔なび舎に戻っていく後ろ姿を、アギトは確認していた。
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「俺が出向かなくても平気だったみたいです。どうもお騒がせしました」
「フフフ……楽しいお仲間をお持ちですね」
「ありがとうございます。普段はヤンチャですが、あれでいざという時はちゃんと頼りになる連中です。俺の誇れる仲間です。ところでカノンさん『も』当然わかってましたよね。あの3人のこと」
「……ええ、ただ対象が直接私ではなさそうだったので、そうそうに除外しました」
「そうでしたか。まだまだ奴らの尾行はダメですね〜」
「アギトさんは最初から知ってたんですか⁉︎」
「当たり前ですよ。ここに来てから半年、あいつらと一緒に暮らしているんです。魔法なんて使わなくても、あいつらの行動なんて朝飯前ですよ」
「フフフ、本当に仲が良いのですね。……ちょっと羨ましいです」
「では、俺もここで失礼します。あいつらの掃除を手伝ってやらないと」
「フフフ……頑張ってくださいな」
「また、連絡します。それでは」
「はい。またよろしくお願いします」
俺は一礼をしてそのまま走りミトさん達を追いかけた。振り向きはしなかったが、カノンさんはしばらく俺の後ろ姿を見ていた事はわかった。人柄的にはいい印象を持ったが、恋愛的にどうかと言われれば、まだわからない。それはカノンさんの察知魔法【エンパス】でも相手の『想い』や具体的な『言葉』がわからないように……そもそも魔法で相手の気持ちの全てをわかろうとする発想の方が、野暮だと思った。
出会って2回目の女性に対し、アギトの少し馴れ馴れしいセリフがあったので、訂正しました。すまそ




