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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第一章『精霊指定都市ミストラル編』
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大精霊祭01

 ちょうど昼くらいになると魔なびは直射日光が入りやすくなり、室内のに熱がこもり一番暑くなる時間帯だ。つまり外温よりも暑いし湿度も高い。炎天下とまではいかないが、こういう悪条件での練習において前世界では過去において『根性論』をとなえてきた。


水は飲ませない。うさぎ跳びを繰り返しやらされる。運動後のクールダウンもない。疲労回復にも努めない。そうやって肉体にかかる負担は無視して軟弱な精神だとののしり、ひたすら非効率な練習に重点を置いていた。まだ科学的根拠がない時代、数多くの若者が理不尽な怪我をして将来を棒に振ったに違いない。



 ミストさんもスタンプ先生も、魔法授業と実践練習において、厳しい事には違わない。しかし、個別にちゃんとプログラムを作り、個人練習と合同練習とうまくバランスを取る事で、誰一人として怪我人や離脱者を出す事なくここまで来ている。アフターケア、練習中のエネルギー補給など、なるべく疲労を残さない手法も取り入れている。


おそらくミストさんもスタンプ先生もそこまで化学的根拠には精通していないはずだ。それでも直接精霊伝達魔法【ダイレクトコール】を通して、体調の変化を常に管理してくれることで、最先端の運動メカニズム解析に似たプログラムで俺たちを鍛えてくれている。受ける側としては、到れに尽くせりで非常にありがたい話なのだが、逆にいえば手を抜けばすぐバレてしまうのが難点だ。



メンタル的にも工夫がされている。練習のやらされている感を極力減らしているのだ。この練習に、この動きに、この魔法反復に、なんの意味があるのか!?。それをまず明確に説明してくれる。

それは個人の経験則からくる押し付け感のある教育方法とは、まったく理解度が異なる。抽象的な説明はなく、具体的に映像として指摘されることで、生徒の理解力は上がり明確な目標が出来る。これにより教えられたことへの吸収や成長が早く、行動において無駄が一切ないのだ。


またメリハリというか、俺たちのモチベーションの上げ方が上手いのも特徴だ。休む時はちゃんと休む。やる時はちゃんとやる。リズムを保ちつつ、詰め込むではなく生徒の方が意欲的になる育成方法が確立されていた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 とある午後の休憩中に、個別ではなく珍しくみんなを集めた。そして意を決したようにミストさんが話してきた。……その時点で俺はほぼ予想が出来ていた。


「みんな、いいかい‼︎ もうすぐ大精霊祭が行われるのは知ってるよね。それに伴って懸念けねん材料がほぼ確定した。これは、ここだけの話だよ。あくまであたしの仮説だからね。一般の人を悪戯いたずらに不安にさせてないための配慮だよ」


「なに⁉︎」

「了解です」

「ないちょはなしですね。わかりまちた」



「複数の精霊が交信を絶った。もう一ヶ月も連絡が出来ない」


「え⁉︎」


「それって、単に後精霊【死間際の精霊】になったのでは⁉︎」


「違うのさ。それならば、それを告げる最後の交信がある」


「ではジャミンング(交信妨害)エリアとかにいるんじゃないですか⁉︎」


「それでもない……らしい。どうも意図的に更新を断絶したようなんだよ」


「なんですって⁉︎」


「この交信を絶った精霊たちが、この時期に何をやろうとしているかは……もう明白だよね」


……みんなが一斉にツバを飲み込んだ


「大精霊祭つぶしさ」


「ま、まさか⁉︎ 精霊がそんな反乱を起こすものなんですか⁉︎」


「ミストラル生誕……つまり私が大精霊になってからは一度もない」


「つまり、今回の大精霊祭が精霊造反の要因なんですか⁉︎」


「……今の所は、わからないとしか言えないね。ただタイミングがタイミングだけに、まず間違いないとあたしは思う」


「確かにタイミングが良すぎるね」


「で、ボクたちはどうすればいいの⁉︎」


「練習プログラムを少し変更する。これから大精霊祭が始まるまでの約三週間。対侵入者迎撃専用の連携に切り替える‼︎」



「オォ〜〜」

「マジか〜〜‼︎ ボクたちも警備を任されるのかよ⁉︎」

「私たちに出来るの、そんなこと⁉︎」


「あんた達の出番の可能性がゼロではない状況なのさ」


「結構、切迫詰まっているよね。……それよりも、地元ホームにそんな利点あるの⁉︎」


「今回はミストラルというホームグラウンドにおける戦いになる。つまり地形的を知っていることが利点になる」


「そうなのかなぁ〜」


「戦いはね、あんた達のいた前世のスポーツと違って『スタート‼︎』の合図があるわけじゃないんだ。それでも責められてくるのがわかっていれば、それに対してこっちが入念に準備が出来る。地形、天候、気温、湿度、地面の影響、高低差、障害物の位置、……場所に関わるあらゆる部分を把握し、戦闘に活かす。それがホームの利……なのさ」



「ず、ずいぶん簡単に言ってますけど‼︎ このミストラルの地形全部覚えるんですか⁉︎」


「あんたらの担当地区は南区の門付近だ。だから今から南地区近辺の情報を網羅する。覚悟しときなよ、フフフ……」



ミストさんが不敵に笑う時は、だいたい俺らが泣く時と相場が決まっている。しかし間違いなく、このミストさんの予想は当たるだろう。だからやるしかない‼︎ 俺たちラストリンカー【最後の転生者組】の初陣が、もうすぐそこまで来ている。

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