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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第一章『精霊指定都市ミストラル編』
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トウタの新魔法01

 まだ陽が出るか出ないかの早朝の時間にラルが泣き出す。それを目覚まし代わりに、カミュールさんはミルクを温め始め、同時にみんなの分の朝食の準備にとりかかる。ミストさんは、すでにグリーンミストパークへ日課の散歩へ向かっているはずだ。俺は、急いで顔を洗い、寝癖はほっといてコーヒーの焙煎ばいせん作業に入る。……これまでずっと俺一人でつつましく住んできたこの家が、賑やかでアットホームな生活スタイルに激変した。最初こそ、あまりのドタバタぶりに、不安しか感じなかったのだが、だんだんと居心地の良さに変わっていったのは、我ながら不思議な感覚だった。




 しかし昨日からカミュールさんは新魔法習得の為、ミストさんと共に魔なびの方でしばらく合宿状態に突入することになった。……ミストさんとカミュールさんが居ないだけで、こんなにも静かになるのかと思うと感慨深いものがある。そもそも他人との交流を控えてきた俺にとって、この生活は単に元に戻っただけなのだが(正確にはラルがいる)、なぜか寂しい気持ちで一杯だった。……人は優しさに慣れると寂しさに臆病になるのかもしれない。



「さてラル君よ、男2人でどうしようか〜」


当たり前だが、2人がいないことなどラルが知るはずもなく、いつものように揺り籠の中で寝ていた。その優しい寝顔を見る度に俺は話かけずにはいられない。流石にネスザック次長みたいに『〜でちゅね』言葉は使わないが、それでも気のせいかもしれないがラルの防御魔法が俺の言葉に反応しているように感じる時がある。


……こうして静かになって冷静な状態でラルの寝顔を見ていると、ミストさんに言われたあの一言が胸に突き刺さる。


『あんたがこの子を守る必要がある』



戦闘において赤ん坊を背負うことに一切のメリットはない。動きは極端に制限される。背後からの攻撃、正面からの変化技、頭上からの攻撃も逃げることは許されないだろう。仮に逃げた場合、その高速移動による重加速度や遠心力にラルが耐えられないかもしれない。


基本的に自身の思い描く防御方法はける。次に逃げる。最後に受けるという優先順位だと考えている。


ける』は紙一重で避けることをさす。『逃げる』は不確定な攻撃に対し予測しうるダメージエリアの外へ移動するという意味。そして、どうしても後手になり、そのどちらも出来ない場合に初めてガードして攻撃を『受ける』という選択を取る。それでも攻防のバランスは攻7:守3くらいを理想としたい。


ところがラルを守るためには、どうしても『防御』を意識せざるを得ない。攻撃にするにしても、回避するにしても、どうしてもワンテンポ遅れてしまう。つまり全ての動作が後手後手に回ってしまう。バランスが逆転して攻2:守8とかになってしまう可能性がある。



例えば連携を有効利用し誰かに防御魔法をもらったり、攻撃補佐をしてもらえれば、ある程度の立ち回りは出来るかもしれない。しかし、それではあまりに他力本願すぎる。まして俺は、前線部隊の連携練習に参加した事がない。それこそ無理を言って、特殊任務転生班への配属を許してもらった身だ。だから今は連携に、他人に頼ってはダメなのだ。……何よりミストさんが、俺にラルを託したのはそういう意味じゃない。


先住民【ネイト】が使える『現代魔法』、転生者【リンカー】が使える『次世代魔法』……さらにそれを超える『オリジナル魔法』を身につけないと……ラルは守れない。




つまりは『そういう結論』に行きつくのかぁ〜。やっぱりミストさんは大したもんだよ。オレの全てを見切っていたわけか。……いよいよ俺も、本腰を入れて新魔法の完成をさせないといけないようだ。



「さぁ〜最後まで俺の修練に付き合ってもらうよ‼︎……カミュールさんは、魔なびで猛特訓中だろうから、俺たちは、修練場へ行こうとするか。……なあ〜相棒‼︎」


トウタは眠っているラルを抱き上げ、出発の仕度を始めた。その動作で一度は目を覚ましたが、おんぶをするとまたラルは無邪気に眠り始めた。ただトウタ背中越しにラルは掌は強く握った……ように見えた。それは、偶然でも無意識でもラルの参戦意思の表れだと俺は受け取った。




 玄関を出て大通りまで来ると風が気持ちよかった。その清々しい風が新緑の香りを運んでくると、もう初夏なのだと実感する。だからこそ、この自然豊かなミストラルを守らなければならないと改めて心に誓うのであった。

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