カミュールの新魔法04
「あ〜〜カミュールさんだ‼︎」
俺が叫ぶ前より先にスバルが奥にいるカミュールさんに声を掛けた。そしてみんな一斉にカミュールさんめがけて走っていった。……なるほど、『休憩』の理由はこれか‼︎
「アギト君〜‼︎ みんな〜久しぶり〜‼︎」
相変わらず、笑顔が素敵な人だ。まぁ〜トウタさんへの愛情の偏り方が気にはなるが悪い人ではない。ただ、カミュールさんが魔なび舎にいる理由がわからない。確かカミュールさんは先住民【ネイト】のはずだ。そして今まさに授業で習った事を照らし合わせれば、転生魔法を所持しているカミュールさんはこれ以上の魔法を習得出来ない事になる。……なら、なんでここにいるんだ⁉︎ そしてもう一人の方は誰なんだ⁉︎
「カミュールお姉さんも、イチから魔法の勉強をしに来ました。みんなよろしくね」
「やったネ‼︎」
「オォ〜〜〜〜」
「しょうがないわね〜」
いやいや、『やってはないからね』 むしろ『やらかしてる』んじゃないの⁉︎ 魔法をイチからって、どういう事なんだ⁉︎
「オレが手伝ってやるよ」
「僕も手伝うよ」
「モモちゃんもおてつだいちます」
「みんな、ありがとうね。……ミスト母さん、いいでしょ‼︎ この子たちが手伝ってくれても⁉︎」
「だから、何度も言わすんじゃないわよ。大師匠と呼びな‼︎」
「ね〜ね〜そっちの人は誰⁉︎」
「この人はミストラルさんで、私の大師匠にあたります」
「……う、嘘でしょ⁉︎」
どおりでさっき、この人を見かけた瞬間にサブイボ(鳥肌)が出るわけだよ!!ウルトラ・パーフェクト・サブイボが出るはずだよ‼︎ ココで一番偉い人じゃないか‼︎ ……いや精霊なのか⁉︎
俺は反射的に声をかけずにはいられなかった。
「し、失礼します。もしかして大精霊ミストラルさんですか⁉︎」
「そうだよ。あんたは……アギト君だったね。さっきの魔法はさすがだと褒めておこう。私もカミュールも本気で消音魔法【サイレント】と浄化魔法【オールクリーン】を併用し、気配と痕跡を消したんだけどね……よく見破ったよ」
「あ、ありがとうございます。そんな事を言われるとは思っても見ませんでした。恐縮です」
「あ〜アギトってば、赤くなってる〜。へんなの」
「コラ‼︎ からかうんじゃない。この人は偉い人……もとい偉い精霊さんなんだぞ‼︎」
「いいんだよ。アギトも、もっと気楽に接するがいいさ」
「は、はぁ〜」
「怒られてやんの。ダサっ‼︎」
「……」
それから俺たちはカミュールさんの経緯を聞き、交換魔法【コンバート】の手伝いをする事になった。見た感じ単純な事の繰り返しなのだが、実際問題、これを難しいと受け取るか⁉︎ 簡単だと受け取るか⁉︎ そもそも基準がないのだから、判断しようがない。
最初はボール2個を床に置いていたのを、今度は交互に投げる。オサムとゲンキ、トモミとスバルがキャッチボールを始めた。そしてその投げ合っている空中のボールを『交換』するというのだ。
確かに停止して床に置いてある状態と空中では、ボールに対する集中力が段違いに跳ね上がる。まして、ミストラルさんの指示で投げる度に違う色のボールに変えている。
「モモちゃんもなげたいでしゅ」
「しょうがない、俺も付き合いますよ」
「みんなノリがいいね〜。では、モモちゃんは四角い箱を持ってなるべく隠しながら、逃げ回って。」
「わかりまちた」
「そしてアギト、あんたは、この一連の出来事を全部記憶しな‼︎」
「う、嘘でしょ!!これ全部、記憶魔法【レコード】するんですか‼︎」
「そうだよ。そして、後で記憶復元魔法【リメモリー】で反省会時に再生してもらう‼︎」
「ぐは‼︎ どんだけ集中しないといけないんですか。これ数十秒でも大変なんですよ」
「だからやるんだよ‼︎ 最低でも15分は記憶出来ないと、実践では使いもんにならないよ」
「む、無理ですよ‼︎ そんな長い時間は‼︎」
「無理でも無茶でもやるんだよ‼︎ じゃないと練習にならんだろ‼︎」
全く、その場その場の応用でとんでもない練習方法を授けるもんだよ。そしてカミューさんの魔法習得だけでなく、いつの間にか俺たち全員の魔法練習も同時に行っている。基礎魔法から、個別専用魔法まで。
そしてもう休憩ではなく、いつの間にか完全に『実践授業』に変わっていった。しかし、この事に誰も文句を言わず、ごく自然な流れでみんなが本気で練習している。ミストラルさんもすごいけどカミュールさん……あなたもやっぱりすごい人だよ‼︎
そして今気づいたが、転生魔法を封印したってことは『俺たち』が一次的に、最後の転生者【リンカー】って事になるんじゃないのか⁉︎ こ、これは結構、責任重大なんじゃないのか⁉︎
「こらアギト‼︎ 余計な妄想はいいから、本気で記憶魔法【レコード】しな‼︎」
「す、すみません」
「そだそだぁ〜。アギト、ちゃんとやれ‼︎」
「また怒られてやんの……ダサっ‼︎」
「もぉ〜ちゃんとやりますよぉ〜‼︎」
別に楽するつもりはないが、ミストさんの前ではホンの一瞬たりとも手を抜けないし気が抜けない……そう感じた。