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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第一章『精霊指定都市ミストラル編』
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転生してきた赤ん坊06

 池に近いこの場所はさっきの広場と違い人気ひとけも少なく、新緑がちょうど目隠しのような感じで歩道からの視線をさえぎっていた。大地を通しての陽気な暖かさはなく、木々の影が地面に落ち、木漏れ日がわずかに差し込んでいる程度なので広場の陽気な暖かさとは違い、むしろ肌寒ささえ感じる。そして周囲に誰もいない事を確認し、言われるがままに再びミストさんに赤ん坊をゆだねた。ミストさんは、さっきと寸分変わらない動作を行った。……そして、意を決したように小さくうなずいた。



「……結論から言えば、……トウタさんだったわね。あなたがこの子を育てなさいな」


「え⁉︎」


「勿論、カミュール‼︎ あんたも一緒になって手伝うんだよ‼︎」


「キャ〜〜‼︎ これでミスト母さんの公認ということですね。もう私、幸せですわ〜〜」


「え⁉︎え⁉︎ 『ミスト母さん』ってどういう事⁉︎ 話が見えてこないんだけど」


「ごめんなさい、師匠。……実は私、全部知ってましたぁ〜」


「え⁉︎ 知ってたって……何を⁉︎」


「ミスト母さんの事。だって私は小さい頃、ミスト母さんに遊んでもらった事があります。私たち世代というか、先住民【ネイト】の子供達から慕われる保育士さんなんですもの」


「そ、そういうことは、先に言ってよ‼︎ 俺一人であたふたしてた身にもなってよ‼︎ ん⁉︎……ちょ、ちょっと待って……ということはさっき俺がミストのさんの場所を聞いた時……『夫婦』とか『旦那』とか妄想していたのは『フリ』だったの⁉︎」


「だってデートには、やっぱりサプライズが必要ですもん」


「デートじゃないから‼︎ そんなサプライズは、いらないから‼︎」


「あんまり大声出すと、この子が目を覚ますよ」



「あ、スミマセン。……と、ところで、そこまで子育てに精通されているミストさんでなく、なぜ自分が育てないといけないんでしょうか⁉︎」


「その方が、面白そうじゃないか」


「はぃ⁉︎……面白そうだから、自分がやるのですか⁉︎」


「そうだよ」


「自分は前線に身を置く立場です。さらに現在進行形で転生魔法という極秘任務も請け負っています。そんな自分がこの赤ん坊を守る事は不可能なのでは⁉︎」


「トウタ、よくお聞き。ここからは本当に真面目な話をしよう。この赤ん坊は確かに魔法を発動している。それも信じられないことに『常時』だ。よっぽどの鍛錬をこなしても【持続魔法】は困難を極める。先住民【ネイト】が使える同系魔法が『現代魔法』と呼ばれ、転生者【リンカー】が使える多重魔法が『次世代魔法』と呼ばれているのは知ってるわよね⁉︎」


「……は、はい」


「しかし、このどちらにも『半永続魔法』は実質不可能というのが、今の定説なのさ。つまりこの赤ん坊は特殊すぎるんだ。……とにかくカテゴリー分けが出来ない魔法さ」


「……独自オリジナルの魔法ということですか⁉︎」



「その通りさ……つまりトウタ、あんたが『そうなりつつある』ように、この赤ん坊もまた進化している」


「……」


「だから、あんたがこの子を守る必要がある。そしてカミュール‼︎ あんたもこの子を守るんだよ」


「わかりましたわ、ミスト母さん‼︎」


「ちょ、ちょっと待ってください。自分には責任が重すぎます」


「なに言ってるんだい。何より、これが証拠だよ。ちょっと側に来てごらん」


「え⁉︎」


「トウタ、もっとこっちに来て、そしてそっと手を出してごらん」



言われるがままミストさんの側に近づき手を出してみた。すると寝ているはずのまだ目も見えないはずの赤ん坊が、俺の差し出した手に反応し、迷わずその小さな手で握り始めてきたのだ。俺の小指がしっかりと握られている。それは本能で俺を選んでいるような動きに見えた。実際この時、片手で赤ん坊を抱きなおしミストさんも俺の手のすぐ隣で同時に手を出した。それでも赤ん坊は迷わず、俺の手を選んだのだ。



「……ステキ」


カミュールさんが、感心するのも無理はない。俺ですら不意の行動とはいえ、優しさに包まれた温かな気持ちになった。この子は俺を探していたのか⁉︎ 俺を必要としているのか⁉︎



「心配ご無用ですわ、ミスト母さん。これから師匠と夢の新婚生活に励みます」


「その意気だよ‼︎ 頑張りな、カミュール」


「はぃ‼︎ キャーどうしましょう⁉︎ ずは、マイスイートホームから探さないとぉ、、、、、どこに、しましょうかぁ⁉︎」



「……あ、あの〜盛り上がってるところ申し訳ないんですが、、、、、」


「そうだ‼︎ どうせなら〜あたしも一緒に住もうかしら」


「え〜〜いくらミスト母さんでも、そこは遠慮してくださいよ〜新婚なんですよ‼︎」


「……あ、あの〜どうして、そういう話になるんでしょうか⁉︎」


「なにさ……よし決めた‼︎ 前言撤回、あたしも一緒に住むわ。やっぱりあんた達だけでは任せられないわ」


「いくらミスト母さんの頼みでも、それだけはお断りしますわ‼︎」



「あのぉ〜自分の意見を全く聞いてくれないのはどういう事なんでしょうか⁉︎……あのぉ〜どんどん話があらぬ方向へ進んで行くのはどういう事なんでしょうか⁉︎」




 ミストさんとカミュールさんの話し合い(茶番)が一向に終わりの様相を見せない中、俺は赤ん坊から握られた小指の感触がまだ頭から離れられないでいた。それは、言葉でいい表せることの出来ない感覚。……当然、赤ん坊は言葉がわかるはずがない。それでも、何か俺に伝えようとしている気がした。今出来る精一杯の事。それが、俺の指を握る事だったのかもしれない。


大精霊ミストさんに言われたのもあるが、うすうす俺自身も気づいていたのかもしれない。この運命みたいな出会いは大切にしないといけないと。……と、その前にカミュールさんは本気で俺と一緒に暮らす気なんだろうか⁉︎ ミストさんは本気で俺と一緒に暮らす気なんだろうか⁉︎ 


どこまでが本気でどこまでが嘘なのか⁉︎ この人たちの言動は全く読めなかった。

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