転生してきた赤ん坊04
「……絶望の兆しがあるんですか⁉︎」
「あくまで例えだよ。今のは、私個人の拙い妄想にすぎない。事実、私の魔法能力では、今回の件は専門外の事案なのさ。だから私にそんなことがわかるわけないだろ、あはははは……」
「あの〜それ、次長も……ただの丸投げですよね」
「まぁ〜そうとも言うかな。あはははは……」
「……」
(笑ってごまかしたよ、この人‼︎……本当に大丈夫か⁉︎よく次長やってられるなぁ〜)
「ちなみにトウタ君はまだミストさんに会ったことないんだよね⁉︎」
「あ、はぃ。」
「なら丁度いい。せっかくの機会だし実際にミストさんに会って来るといいよ」
「ところで、さっきから気になっていたんですけど」
「なんだい⁉︎」
「大精霊なのに「さん」づけですよね⁉︎ 「様」でなく。あと言葉も尊敬語ではなく、ざっくり言えば随分フレンドリーな言い方なんですけど。もっといえば、自分に対しても、命令調ではないですよね」
「当たり前じゃないか。だってこんな可愛い赤ん坊の前で、キリっとした顔なんか出来るわけないだろう。どうしたって、頬が緩むじゃないか‼︎ 表情筋も緩むじゃないか‼︎」
「知りませんよ‼︎ そして、緩みませんよ‼︎」
「……そなの⁉︎」
「なんで、そんな困った顔でこっちみるですか⁉︎ なんで、そんな涙目でこっち見るんですか⁉︎ むしろ困っているのはこっちの方なんですけど」
「だって、赤ん坊は正義なんだから、仕方ないじゃないか」
「……そ、それよりも大精霊なんだから、すごい方なんですよね。もっと敬うような態度を示す必要があるのでは?」
「勿論、偉いお方だし感謝もしている。でも、王族などの直系で管理している王国や、王家同盟国とは異なり、この都市の人間と精霊の関係は主従関係ではないんだよ。そりゃ精霊と契約こそしたけど、上下関係ではなくあくまで協力関係なんだ。だから言葉使いや態度に置いて、そこまで気にする必要はない。最低限のマナーさえ気をつければ、緊張せずに気楽に会いに行ってくればいいよ」
「なんかノリが田舎のおばあちゃんに会ってきなよ‼︎ みたいなんですけど。とてもそんな気持ちになれないですよ。偉大すぎて」
「なかなか鋭いねぇ〜。まぁ〜あながち間違ってはいないかもね。だっておばあちゃんだもん」
「え〜〜おばあちゃんなんですか⁉︎」
「今、人間のおばぁちゃんを想像したでしょ⁉︎」
「あ、はぃ」
「精霊と人は寿命の長さが全然違うんだよ。生きている長さの基準が違う。ミストさんは、おそらくこの都市が出来たさらに前からこの周辺にいたはずだから、かれこれ1000年は下らないんじゃないかなぁ」
「えぇ〜1000才なんですか⁉︎」
「もしかしたら、もっと上かもしれないね。……でもね、女性に年齢を聞くのは失礼でしょ。だから、正確な年齢は誰も知らないんじゃないかなぁ〜」
「……はぁ〜(ミストさんって女性扱いなのか⁉︎)」
「それで、どこに行けばミスト『さん』に会えるんでしょうか⁉︎」
(言ってて、『さん』に抵抗あるなぁ〜本当に、いいのかなぁ)
「ん、そうだなぁ〜いまの時間なら、グリーンミストパークにいるんじゃないかなぁ〜」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ‼︎ グリパ(略)って、あの公園ですか⁉︎」
「そうだよ、この都市にグリーンミストパークは1つしかないよ」
「そ、そういう問題じゃなくて。もっと神聖な場所とか、人里離れた誰にも見つかることのない由緒ある封印された神殿の奥とかにいるんじゃないですか⁉︎」
「だから、フレンドリーな関係だって言っただろう。そもそも大精霊にどんなイメージ持っているの⁉︎ どれだけ引きこもりの大精霊なの⁉︎ どれだけ人見知りな大精霊なの⁉︎ どんなRPGゲームのお使いイベントなのさ」
「失礼しました。……確かにそういうイメージを抱いてました。」
「まぁ〜謝ることではないよ。まぁ〜固定観念に縛られず、肩肘張らずに、リラックスした状態で会いに行くといいよ」
「わかりました。……それでは、失礼します」




