転生してきた赤ん坊03
帰還中カミュールさんの機転で精霊伝達魔法【ネクストコール】を使い、ミストラルに救護班を要請したのも功を奏した。不審人物やワイルドモンス【少数の凶悪モンスター】の気配ない予定通りのポイントで救護班と合流し、移動しながら精密検査も併用していた。幸い赤ん坊は衰弱や病気などの体調不良の様子は見受けられなかった。そして予定より若干の時間はかかったが、移動において目立ったトラブルもなく、無事ミストラルに戻ることが出来た。
ミストラルについた俺たちは、息つく間もなく赤ん坊と共に行政統括本部次長の元に事の経緯の説明する運びになっていた。この段取りの良さ、つまり連動性、効率性は伝達魔法【ネクストコール】よる事前連絡による意思疎通の賜物である。
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俺たちは行政区中央管理棟に向かい、2Fの緊急対策室という場所に通された。そこには、すでに次長が待っておられた。
「ネスザック次長。お初にお目にかかります。特殊任務転生班のトウタとカミュールと申します」
「うんうん、おかえり〜。無事でよかったね〜。とりあえず、お茶いる⁉︎」
「あ、いえ。……それで、先行して連絡をしていた件ですが」
「うんうん、聞いているよ。その赤ん坊だね、いや〜可愛いでちゅね〜〜」
「じ、次長〜‼︎ 顔が近いですって‼︎ そして完全におじいちゃんの甘やかしモードになってますけど‼︎」
「いいじゃない、減るもんじゃないし」
「いや、減るとかそういう問題ではなく……」
「人は誰しも赤ん坊の前ではクシャクシャ顔になるんだよ‼︎」
「人は誰しも赤ん坊の前では『〜でちゅよ』口調になるんだよ‼︎」
「なんですか、そのあるあるみたいな格言は‼︎ 誰の格言ですか⁉︎」
「私だよ」
「次長〜〜‼︎」
「……ゴホン。話を戻すけど……一応、私も責任ある立場だからさぁ〜、色々の上司達に話しを通さないといけないわけなのよ。わかる、この中間管理職の辛さが⁉︎」
「……は、はぁ〜(よく、わからん)」
「で、なにぶん前例がないんで、誰も対処出来ないんだってさ。んで、結局、私にこの案件が戻ってきちゃったってわけよ」
「次長〜‼︎ なんですか、その他人事のような雑な扱い‼︎ なんですか、その業務あるあるのたらい回し‼︎」
「……ということで直接、大精霊サイレントガードナーの【ミストラルさん】に相談するしかないという事に落ち着いた」
「え⁉︎ ミストラルって都市の名前だけじゃなくて、大精霊様の名前でもあったんでですか⁉︎」
「『名前』とは人が人として認識する為の定義であって、元々精霊には必要ないんだ。そもそも大精霊ミストさんを含め全ての精霊同士は離れていても交信出来ちゃうからね。『ミスト』さんは我々人間が、大精霊に敬愛の意を込めてつけた名前なんだ」
「そ、そうだったんですか。すみません。認識不足でした」
「いやいや、気にしないで。こんなの知ってるのは、ごく一部だから。なにせ都市の顔ともいえる中心的存在なのに、行政や政治など表舞台には殆ど姿を現さないからね。いや〜お気楽な人、、、もとい、お気楽な大精霊だよ」
「次長も充分にお気楽そうですけど」
「私は、辛い部分を下には見せないタイプなんだよ。裏では毎日泣いているんだよ」
「はぁ〜、それは……お疲れさまです」
「まぁ〜ミストさんには多くの精霊たちを介してリンクする事で、情報が逐一入ってくるし、ぶっちゃけ頻繁に会う必要はないんだよね〜」
「では、なぜ今回は会うんですか⁉︎ 特殊な事態といえば、そうですけど」
「ミストさんに赤ん坊(この子)を直に見せるべきだと感じた。この子が、我々の希望の光となるか⁉︎ 絶望の兆しとなるか⁉︎」
「もし、、、、もしですよ……後者ならどうなるんですか、この子は⁉︎」
「どうなると思うかね⁉︎」
……嘘でしょ‼︎ なに、このバッドエンディングみたいな流れ⁉︎




