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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第一章『精霊指定都市ミストラル編』
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小柱 修(コバシラ オサム)01

「一通り説明しましたけど、何か質問はありますか⁉︎」


いつものようにカミューさんが主導権を握り転生者に問いかける。


「とりあえず、スマホ貸してよ」


「……ないですけど」


「嘘だろ〜」



小柱コバシラ オサムという17才の青年からの最初の質問で、私は大体を理解した。まず人と話す際に私の目を見ない。こちらの話にも関心がなく、タメ口で自分の要求だけしてくる。



「んじゃさ、オレはどんくらい強いの⁉︎ オレのステータス見してよ⁉︎ どんな無敵技チート持ってるの⁉︎」


「……ないですけど」


「嘘だろ〜使えないなぁ〜」


「あと、ご質問は⁉︎」


「え?もういいや。適当に好き勝手出来るとこに連れてってよ」


もはや会話ではなかった。オサム君は自分の要求だけを求め、叶わないと悟ると今度は投げやりになる。私は甘やかさず、怒りもせず、あえて淡々とした口調で話を続けた。


「……まず、自分のおかれている立場を放棄するのは、良くないと思いますよ」


「だってめんどくさいじゃん。無敵技がないんじゃ、オレ意味ないじゃん」


「生きることが面倒くさいですか⁉︎ ではあなたはなぜここに存在しているのですか⁉︎」


「え?……そ、それは、あんたらが呼んだからだろ……そ、その転生魔法とかで」


「そういう意味ではありません。『生きるそのものの意味』を考えたことがありますか⁉︎」


「知らないよ。そんなのあんたらに言う必要はないだろ‼︎ オレの勝手だろ‼︎」



……この手のタイプは、不利になると思考を停止する。自分の事は一旦置いて、ひたすら相手のせいにする。それは決して現状の不安な状況からだけでなく、前世において劣等感を抱いてきた自分自身に対する自信のなさからきている。流石に、見かねた師匠が間に入ってきてくれた。



「そこまでだよ。あまりカミュールさんを困らせるんじゃないよ。君の言い分は、全部相手の批判ばっかりだね。『話し合う』ということを知らないのかな」


「師匠〜」


「あ〜⁉︎ わけわかんないこと言ってきてるのは、あんたらの方だろうが‼︎」


「だからさ、わからないんじゃなくて、君が理解しようとしてないんだよね。君が知る努力を全くしてないんだよね。そういう怠惰たいだな態度はこの世界では本当に危険なんだ。そろそろ自覚しようか、そういうわがままが通用しない世界だってことを‼︎」


「あんたらが勝手にオレを呼んだんから、最後まで責任取れよ。オレの今後の安全と平和と自由を保証しろよ‼︎」


「君に対しての責任は俺たちにはないよ。これは最初に言ったよね!!交渉だと。それに君の今後を保証するとは言ってない」


「こ、こっちは守られる権利があるんだよ」


「自分の都合の悪いことは本当に理解しようとしないね。それでいて、言い分だけは一人前だ。では、交渉決裂ということでいいね。もう俺たちは関与しないから、君の言う自由なことをすればいいよ」


「な、なに言ってるんだよ。なにが決裂だよ‼︎ あんたらはオレを守る義務があるんだよ‼︎」


「ずいぶん上から目線な言い方だね〜。そしてしきりに責任とか権利とか義務とかいうけどさ。俺たちは君の親でもなければ先生でもないよ」


「……勝手にここに呼んでおいて、、、」



「もう、聞き飽きたよ。ほかに言う事はないのかな⁉︎ そろそろ自分で言っていてむなしくないかい⁉︎ 『勝手にここに呼んでおいて」は君の希望的主観であって、事実じゃない。それにしかすがるモノがないのはわかるけど、ここまでくると流石に見苦しいよ。大事な所からは目を背けて他人のせいする。自分の問題なのに他人に転換する。そうやって、今までも来たんだろうね。自分は悪くない。悪いのは周りだ、親だ、大人だ、って。……でもね、『この世界』に来たことで、そろそろ気づくべきなんだよ。向き合うべきなんだよ!!」


「な、何にだよ⁉︎」


「自分の弱さにさ」


「……」


「生きるということはね……共存するということは、時にお互いの葛藤がぶつかり合う時がある。でも、理解してもらうためには、相手のことも理解しないとダメなんだ」


「ラクして生きたいんだよ、オレは」


「では、その先になにがあるんだい⁉︎」


「え⁉︎」


「一生ラクして、暇な時間を過ごして、なにを得るんだい⁉︎」


「なにもなくてもいいじゃないか。オレだけが好き勝手やれればいんだよ」


「そもそも、そんな世界がどこにあるんだい⁉︎ だいたい好き勝手やることで誰かに迷惑がかかるとは思わないのかい⁉︎」


「そんなのはオレの知った事じゃないよ‼︎」


「だから、何度も同じことを言わせるな‼︎ 知らないじゃなくて『知るんだよ』……君をここまで育ててくれた人の事。親切にされた事。そういう部分はスルーして嫌なところだけをフューチャーして、現実から目を背けるんじゃないよ‼︎」



……流石に、師匠は言い過ぎではないかと私は思った。でも、彼には気づいて欲しいのだ。無関心ではなく、本当に必要だから怒られているという事に。今こそ自分の殻を破る時だという事を……前世でどれほどの仕打ちを受けてきたのかは容易に想像出来る。でも、せっかく新しい人生を『自分の意思』で切り開いたのだから、もう一度、人を信じる勇気を持って欲しい。その時こそ、ステータスの数字とか無敵技とかに頼らない、本当の強さを知る事を知ることになるのだから。



「……んじゃ、んじゃ、どうすればいいんだよ⁉︎……なにも得意なモノがないオレは、何を目的にすればいいんだよ⁉︎」


「そんなことまで、他人に聞かないとダメなのか⁉︎」

             

「……なんで、オレなんか、この世界に呼んだんだよ⁉︎ こんな使えないオレをなんで呼んだんだよ⁉︎……なんでオレなんだよ、、、……オレだって、オレだって、、、ちゃんと生きたいんだよぉ〜」



「よくやく、本音が出たようだね。……その答えだけは、真実だけは教えてあげよう。君を選んだのは『精霊』だ。そしてキミは精霊の問い掛けに『生きたい』と応じたのさ。我々はそのサポートをしたに過ぎない。そして精霊と同等の潜在能力を持つキミだからこそ、君は選ばれこの世界に呼ばれたんだよ。つまり、キミには呼ばれた理由がちゃんとあるんだ。ただ、その真意を知るのは、人から教わるものじゃない。自分で見つけていくもんなんだ。それが『生きる』ってことなのさ」


「……うぅぅぅ〜、わ、わかったよ」

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