表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第二章 『動き出した思惑編』
147/161

精虫族(ワスピー)11

 ジフリーク達が滞在している宿には当然、見張りがついていた。間違いなくフランガルの差し金だろう。それは近すぎず遠すぎす、それでいてわざと存在を見せているとしかいえない一定距離に配備していた。そしてそれを隠れみのに、この宿の各部屋にも見張りを配備するという二重の作戦。相当な念の入れようだった。


宿屋で準備をしている時、当然だがジフリークは全ての見張りの存在に気がついていた。それに対し、最初はあきらめて散々な内容で、もうこの街から出ようという趣旨の会話をしていたのだ。当然、隣の部屋や廊下にいるかも知れない見張りに聞かせてもいい内容だ。これで完全に見張りを油断させた。


ある程度雑談が済んだ時点で消音魔法サイレンサーで部屋の中を遮断する。これで会話が外に漏れることはない。寝たと思わせて、これまでの重要な会話は全て閉鎖空間クローズで行なっていたのだ。





「無駄な雑談をするのは、流石に疲れたよ」


「私もよ。バカなふりをするのも疲れるわ」


「……」


「さて、これからの事を説明する」


「一体何をするんだ?」


「各々に少し調べてもらいたい事がある。おそらく、それで推論から確信に変わるはずだ」



それから綿密な打ち合わせを経て4人は準備を整え、深夜の時間に宿から出て行った。それは隠密にではなく堂々と表の玄関から出て、いかにも悲壮感漂うような素振りを見張りに見せつける作戦だった。敢えて不仲に見せるように4人はそれぞれバラバラになって、四方へ散っていく。


 ジフリークに限らず、アミ、マサシ、タケツグもリンカーだ。(ジフリークだけは、リンカーとネイトの間に生まれた子)つまり全員が複数の魔法使用を可能としていた。専門は接近や遠方、補助など役割はあるが、全員が潜入、潜伏、探索、情報収集における基本的な魔法を全員が一通り使える。現時点ではアギト達ラストリンカーより個々の能力は数段上回っている。しかしアギト達は急激に成長の過程である事は言うまでもない。


 4人は『とある魔法』を使いながらそれぞれの製錬所を目指した。そしてある程度街中を散策しているような素振りで直接的に製錬所には近づかず、そのままそれぞれの門からバラバラに街を出た。


『とある魔法』とは探知魔法ソナーである。宿の一室でジフリークはこう結論づけた。



「この国は鉱物の運搬経路に『地下』を使っている。俺は交渉の為に呼び出された地下室に入る為の地下通路の構造を実際に見て、この国の掘削くっさく技術の高さを知ったよ」


「すると、要はトンネルを掘って鉱物を運搬しているってことか?」


「そうさ」


「いや、簡単に言うけどさ。トンネルってそんなに長く掘れるのか?前世のトンネルで長いやつでも数kmじゃないのか?」


「前世では18kmというトンネルが最長だな」


「ほぉ〜。でもよ、それと同等だったとしても、街の四箇所にある製錬所すら繋げないぞ。全然短いよ!」


「お前が『トンネル』って話をふったから現世の記録を言ったまでだよ。考えて見ろよ。もっと長いのがあるじゃないか?」


「はぁ?18kmが最長と言っておいて、それより長いのがある?……何言ってんの?」


「だからトンネルは車のことだろ?もっと地下を長い距離を移動しているのが前世にあっただろう?」



「……あ‼︎ 地下鉄か」


「そうさ。おそらくブロックフローは掘削における最高技術を有している。だからこそ鉱物の運搬情報を地下に隠す事が出来たんだ」


「確かに、地下なら見つけようもないもんな」


「だから探知魔法ソナーで、地上から地下通路の居場所を特定したい。そして、街から地下道が何処へ伸びているのか探る。その終点が集合地点だ」


「待てよ? 四方に配置されている製錬所から地下通路が伸びているとして、全部が同じ場所にたどり着くのか?バラバラに4カ所の方角って可能性は?」


「それはない。そんな面倒臭い手法は取らない。地下通路がある以上、一カ所から分岐して4カ所に運搬するのが管理しやすいだろ?」


「確かにな。では確認後、街の外の指定の位置で再開しよう」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ジフリークの予想は当たっていた。4人はそれぞれの場所で地下通路の存在を確認していた。そしてそれが中央の城の下に伸びている事。そして城から明らかに精錬所へは続いてはいない地下通路の反応も感じとった。つまりこれが本筋……外部へと繋がる地下通路に間違いなかった。4人は街を大雑把に四等分し、分担して地下通路の場所の確認を行なった。そして街で合流する事なく、別々のタイミング、別々の出入り口の門からブロックフローを出国していった。



 一方、フランガルに命じられて尾行をしていた警備隊の連中は魔法を感知しているようにみえなかった。だからジフリーク達が4人で固まらずバラバラになって街をただ歩いているようにしか見えなかった。不可思議な行動には違いないが、宿での仲間割れともとれる会話を盗聴していたので不審には思えず、行動そのままをフランガルに伝えた。


フランガルはジフリークとの交渉を城内ではなく、大衆酒場の秘密の場所で行った最大の理由は、交渉そのものを国王には内密にしたかった事に尽きる。ところが交渉場所を地下室にした事で、逆にジフリークに地下道の技術情報を与えてしまった。そしてこの最大の失態は最後まで気づけないでいた。だからこそ部下達からの報告を受けても、4人バラバラの行動に疑念を抱けなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ