転生魔法の秘密01
「師匠〜今回は、どうも『ハズレ』でしたね。うまくリンク出来ませんでした」
転生魔法は立地の条件が満たしていても、後精霊【死間際の精霊】が死者とのリンクを試み、かつ同意が得られなければ、成功はしない。そして私の出来る事は、師匠と共に転生条件の揃った場所を確保し細心の注意を払い準備するだけ。魔法詠唱は私の担当だけど、あとは後精霊のコンタクトにかけるしかない。……それはわかっているけど、失敗するとやっぱりショックである。やっぱり私の魔法精度が足りないのかしら⁉︎
「カミュールさん、お疲れ様。こんな時もあるよ。……それでも、いつもカミュールさんには感謝してるよ」
「キャ〜。師匠のその一言で疲れは吹っ飛びましたよ。もう1回、やっちゃいますか⁉︎」
「そうやって、調子にのらないで‼︎ さぁ〜撤収の準備をしよう」
「もう師匠ったら、テレちゃって‼︎……でも了解です。それで、その〜師匠、一つ質問してもいいですか⁉︎」
「……なんだい⁉︎」
「私、前々から気になっていたんです。なんで転生魔法を発動する際、転生場所をいつも変えているんですか⁉︎ 同じ場所の方が色々楽だと思うんですよ。……例えば、移動とか、準備とか、発動条件確認とか、毎回大変ですよねぇ。いっそ守秘義務の観点からもミストラル敷地内が一番いいと思うのは間違いですか?」
「あぁ〜それはね。常に場所を変えることが相対的に『安全』な方法なんだよ」
「相対的……ですか⁉︎」
「まず1つ目。仮に力がとても強く反抗的な転生者を呼んでしまい、話し合いの余地なく自分とカミュールさんの二人が負けることになっても、ミストラルの内部情報までは知りようがない。最悪、住民までも巻き込む二次被害を防ぐ為の処置なんだ。だからミストラル近辺、まして敷地内では、転生魔法の発動は好ましくないんだ」
「またぁ〜冗談を。師匠が負けるわけないじゃないですか‼︎」
「だと……いいけどね。そして2つ目は、転生者にも選択権を与えているんだ。つまり勝手に転生『された』と勘違いしている者達に対し、『この世界を守ってください!!』といきなり説明を行い身柄を保護しても、戸惑う人や断る可能性はあるよね」
「ですよね。話の内容がグローバルすぎますもんね。唐突ですもんね」
「当然、仲間にならない場合の保険として、ワイルドモンス【少数の凶悪モンスター】の縄張りではない場所。そしてモンスが近寄らないエリアに転生場所を確保するのが得策なんだ。もちろんカミュールさんの安全確保も含まれている」
「それは、なんとなくわかってました。師匠は優しいですもん」
「そして仮に交渉決裂後、いつか相対するかもしれない相手に対し、必要以上の情報は極力見せたくはないのもわかるよね。アギト君のように記憶が優れていたり、仮に解析が優れている人がいたら、この情報漏洩は、我がミストラルの大損失でもあるんだ」
「なるほどぉ〜」
「3つ目に、この転生魔法は言ってみればミストラルの重要機密でもある。だから他国に対し情報は絶対に漏らしてはいけない。もっといえば魔法の痕跡すらも残してはいけないんだ。……だが、おそらく存在は知られているはずだ。実際、これまでに交渉決裂した者が何人もいたからね。その連中が転生情報と引き換えに、他国と結びついてもおかしくはないのさ」
「た、確かにあり得ますね」
「だからこそ、魔法発動場所は不特定な方がいいんだよ。常にランダムで移動している方がいいんだ。この魔法を知りたい者、奪う者がいた場合、常に同じ場所では、こちらが奇襲を食らう可能性がある。そうならない為に同じ場所では行わないようにしているんだ」
「でも交渉決裂者が他国と組んだら、やっぱりまずくないですか⁉︎ 不利になりませんか?それこそ情報漏洩じゃないですか⁉︎」
「それが、そうでもないんだ」
「ど、どうしてですか⁉︎」
……質問しながら、師匠は様々な想定をしているものだと改めて関心した。




