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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第二章 『動き出した思惑編』
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精虫族(ワスピー)02

アギト達を乗せたプラタナスは予定の場所まで運んでくれた。この場所は、精虫族ワスピー管轄エリアに限りなく近い共有エリア。さらにこの時間帯は精虫族ワスピーの巡回時間外という事を直近二週間でのアギトの真記憶解析魔法フルスキャンで確認済みだった。


「ありがとうプラタナス。では行ってくるよ」


「お気をつけてください」


「みんな、準備はいいかい」


アギトはジンカイさんから譲り受けた覆面マスクの効果をある程度予測していた。一つは人間の匂いをさせない事。一つは足音や物音を消す事。気配と存在を極力隠す事で精虫族ワスピーの感知能力を最低限無効化する。そういう趣旨の魔法がこの覆面マスクには付加していると確信していた。


同時に今後の仲間同士の意思疎通を魔法でも声でなく『ブロックサイン』でやり取りする事も決めていた。


ブロックサインとは、例えば肩を触ったら「止まれ」、左手親指を上げたら「進め」といった命令を視覚化して意思疎通を図る為の手段である。スキューバーダイビングにおけるハンドシグナルのようなものだ。一連の動きを再確認して、アギト達は共有エリアを進んで行く。



 ところがプラタナスと別れからまだ間もないというのに、ここで予期せぬ事態が起きる。木々が密集した場所ではなく、低木が茂りわりと視界が開けている場所で、敵の気配を感じた。


「まずい、精虫族ワスピーが2匹近づいてくる」


あまりの予定外の出来事にアギトは、つい声を出してしまった。この状況は、いくらなんでも想定外だった。まだ共通エリアなのだ。当初の目的である精虫族ワスピー管轄エリアすら到達していない。当然隠れる場所も確保してないし、下手に動けば相手も不穏に思うだろう。更に言えば時間帯的に護衛の周回ではない。何もかもが例外的イレギュラーな出来事だった。


「……まさか、作戦がバレているんじゃないの?」


ブロックサイン使わず、スバルがアギトに小声で聞いてきた。


「それはない。事前の観察においてそんな違和感は感じなかったし、細心の注意を払った真記憶解析魔法フルスキャンでも問題なかったんだ」


「んじゃ、下手に隠れるわけにはいかないよな」


アギトは必死に考えた。……ここはまだ共有エリアだから、すぐ戦闘という事にはならないはだろう。しかしこちらの目的がバレるのもまずい。ましてここで逃げるわけにはいかない。何とか誤魔化すかない。



「とにかく無関心なら問題ないし、関わってくるならそれなりの対処はする。……みんなもあんまり無茶するなよ」


「つか、まだココなら弱気にならないでいんじゃね⁉︎  共通エリアなんだから相手がデカイ顔してきたら、ガツンと言えばいいんだよ」


「また、そうやってすぐトラブルにしようとするんだから」


「とりあえず様子を見よう。精虫族ワスピーが接近してきてもスバルは落ち着いた行動をしろよ」



そう言って、アギトはみんなを自分の背後に待機させた。この場所でのトラブルは、俺たちにとっても精虫族ワスピーにとってもメリットがない。だからじっとしていればしのげるはず……そうアギトは考えていた。ところがその予想は、又もやあっさりとくつがえされる。


完全に視界に精虫族ワスピー2匹が入った瞬間、スバルがアギトの前に飛び出た。


「デカっ‼︎ マスカラスの言ってたとおり、本当にデカイなぁ〜」


「スバル‼︎ それ以上動くな」


アギトの前に立った事で、予め決めていたサインがスバルに見えるはずもなく、仕方なくスバルに声で指示を出した。



スバルとアギトと一連の動きに反応してなのか、猛スピードで精虫族ワスピーが進路を変更し、こちらへ接近してきた。それに対しスバルはひるむ事なく挑発的な態度で対峙する。


「ギギィーーーーーーギギギーーーー」


「ギ〜じゃね〜よ。まず挨拶しろよ‼︎ 挨拶は全ての基本だろうが‼︎」


……もう手遅れだった。アギトは即座に対応出来るよう、相手の動向だけに注意を払った。



「ギギィーー」


「いやいや、いくら精虫族ワスピーだからってソノ言語はないわ。蜂だからって羽音みたいな言語はベタすぎるだろう」


「……お、これはマニアックな……人間語を喋れるのか。オレ……たちも必要になって、少しなら……わかる。だが……もう少しゆっくり……話してくれ。聞き取りづらい」


な、なんと精虫族ワスピーが人間語(正確にはこの世界における人間の言葉)を喋って来た。一触即発かと思っていたが精虫族ワスピーの対応はこちらの想定外だった。



「マ、マジで人間の言葉を喋っているよ」


「それ……にしても……精樹族の連中がこんなところ……まで来るなんて珍しいなぁ」


「……え、俺たちが精樹族⁉︎ 本当に精樹族に見えるの⁉︎」


「何の冗……談を言っているんだ⁉︎  どこから見……てもお前らは精樹族だろう」


「あっ、そ、そうだよな」


話の意味がわからなかったが、スバルのリアクションの前にアギトが咄嗟に会話を合わせた。



「いき……なりだが我々……も忙しい身。だから……用件だけを言う。ここはこの辺りの共有……エリアだが今は精虫族ワスピー管轄のエ……リアだと考えていただこう」


たどたどしい話し方だが、なんとか言っている事は理解出来た。後は無難に過ごせるかは交渉次第だ。


「そんな話は聞いていないし、共有エリアは独占出来ないのが契約では?」


不穏な動きをしているのは事前の情報で知っている。だから俺たちが偵察に来ているのだ。相手にその事は感づかれずに、同時に精虫族ワスピーから情報を引き出すために、話を合わせる振りをした。


「我々も正規の警……護じゃないんでお前らと、ここでめる……事はしたくない。そも……そも緊急招集が……かかったんで、かまっている暇はないんだ。お前らが……ここに来た事も黙って……いてやるから、俺たちとの接触……があった事は内密にしてくれよ。そして直ち……にこのエリアから移動……した方が身のためだ」


そう言うとこちらの返事も聞かず、急いで精虫族ワスピーはこの場から立ち去ってしまった。

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