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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第二章 『動き出した思惑編』
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パワーバランス15

「さて、話を本題に戻そう。何が言いたいかというとだね、モモちゃんは利き腕、利き足に、魔力が偏りすぎているのさ。そのせいで、能力向上魔法ゾーンの持続時間が短いし魔法の消費効率も悪い。そして最大の問題は余計な部分に魔力が入りすぎている事で、魔法使用後の身体疲労も抜けにくい」


「そうなんでしゅか⁉︎」


 モモちゃん自体に自覚はないらしい。しかし先のプロレスにおいてのモモちゃんの戦い方。そしてその後の体調管理と魔法管理をジンカイさんは見続けてきた。そして導き出された結果なのだ。若さ故に、疲労回復の速さや、体の悲鳴を我慢してしまう傾向がある。それを早急に察知しフォローしてあげるのが、大人の役目だとジンカイさんは理解していた。


「試しにモモちゃん、今ここでゾーンをやって見せてくれないかな⁉︎」


「はい、わかりまちた……ゾーンでしゅ」


もうモモちゃんは新魔法に対する恥ずかしさはないらしい。すでに誰が見てても覆面マスクがなくても能力向上魔法ゾーンは発動出来るようになっていた。


「では、みんなにもわかるように、モモちゃんの能力向上魔法ゾーンに色をつけてみるね」


そう言うとジンカイさんは魔法を使った。ただ詠唱も簡略化し、発動速度も早いのでどんな魔法を使っているのか全然わからなかった。それでもジンカイさんの言うとおりモモちゃんの体を覆うように魔力が光の膜としてより具現化された。まるで絵具を水に溶かすように、色のついた煙のようなものがうねりながら部位にまとわりついていく。そしてマーブル模様のように完全に半透明の魔力とは混ざらず分離しながら浮遊しているのが見て取れるようになった。


「これがモモちゃんがまとっている強化系魔法の視覚化ビジョンだ。そしてこの色の違いがみんなには見えていると思う。勿論モモちゃんにも見えるよね」


「はい、みえまちゅ。なんかきれいでちゅ」


「つか、これから何が始まるんだよ⁉︎」


誰もが、幻想的な光景に目を奪われていた。



「モモちゃんの利き腕の左手と左足に赤い色が巻きついているね。ここが魔力の強い場所なんだ。そして反対の右手と右足は青色に見える。これは魔力の弱い部分なんだ。そしてモモちゃんにはこの色を均一にする練習をしてもらう」


「どうすればいいんでちゅか?」


「イメージとしては全身がバランスよく使えるようになってもらう。具体的には利き腕ではない右手右足を利き腕と同じように器用に使えるようにする。体の使い方のバランスが良ければイコール魔法のバランスに繋がるんだ」



「それだけで強くなるの⁉︎」


思いの外ざっくりした指摘なので、みんなは拍子抜けした感じだった。



「実はこの『それだけ』が、意外に難しい事なんだよ」


「そうかな〜」


「無意識の対応はどうしても利き腕に頼ることになるよね。それを意識して逆の手でも出来るようにする。最終的には、危機察知時において無意識で体がバランス良く反応出来るようになるのが目的だね」


「大変そうだけど、それに意味があるの⁉︎」


「バランスというのは運動においても魔法においても大事なことなんだ。バランスが悪いという事は攻撃にシフトする時間、防御にシフトする時間に影響する。

例えば、モモちゃんの場合、利き腕の左手での防御姿勢完了タイムより右手の防御完了タイムがコンマ数秒遅い」


「たったそれだけのロスなら、問題ないんじゃないの?」


「一発だけならね。でもこれが何発、何十発も攻撃を喰らったらどうなるかな?もちろんこれは逆も言えるよね。攻撃にも応用出来るよね」



みんなは唖然とした。たかがコンマ数秒程度、そんなのは誤差だと思っていた。しかしジンカイさんの話は全然違う。その刹那すら無駄にしてはいけないという考え方なのだ。



「……それが必殺技なの⁉︎」


「必殺技って言葉は派手なイメージがあるけど基本があっての事だからね。強力な魔法があっても、バランスが悪いと1回しか使えないとか、命中率が低いとか様々な問題も生じてしまうものなのさ。その微調整はやっぱり地道な基本の積み重ねしかないのさ」



「いやいや……魔法なんだからさ〜。もっと手っ取り早く、簡単に強くなる魔法とかはないの⁉︎」


「そんなのがあればミストラルもオールドウッズも、とっくにどこかの敵軍に侵略されて、やられているよ」


「……それも嫌だなぁ〜」



誰もが魔法に対して抱いていた理想の部分。それは夢でもあり、未知の可能性でもあり、憧れでもあるはずなのだ。ジンカイの理論はそんな期待を、強引に現実に引き戻すには十分な解説だった。


「モモちゃん、言いたい事はわかったかな⁉︎ そして、この先どうすればいいのかは……もうわかるよね⁉︎」



「あぃ 」


ジンカイさんはモモちゃんの目を見て安心した。モモちゃんのプロレス試合を見て、この子は実践向きのタイプだと瞬時に悟った。不意な出来事に対し物怖じせず、かつ土壇場に強い。だからこそ、普段の基礎を大事にする事でもっと伸び代がある(化ける)と感じていた。あとはその道筋を間違えないように、フォローするだけだと身が引き締まる思いだった。


「モモちゃんへのアドンバイスはこれでおしまいだ。後はモモちゃん次第だよ」


「がんばりまちゅ」



「では、次はトモミ君の番だ。さぁ〜中心に来てくれたまえ」



そう言って、ジンカイさんはみんなに対して順番にアドバイスを丁寧に伝えるのであった。

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