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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第二章 『動き出した思惑編』
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パワーバランス11

 アギトは夢を見ていた。前世の記憶、それも学生の頃だろうか……どこかの駅を歩いているらしい。夕方という時刻もあって人の賑わいは多く、学生だけでなく一般の人も行き来をしていた。


その中でアギトは改札を出て西口の方へ進む。階段を降りると駅前ロータリがあり、バス停には長い行列が見えた。雨は降っていなかったが、なんとなく階段を降り切って、まだ屋根がある付近で立ち止まった。まるで誰かを待っているようだった。


そして事件は起きる。なんの前触れもなく、いきなり背中にダメージが走った。殴られたのではない。蹴られた感じだった。その勢いで前方に転げ飛んでしまった。咄嗟の事だったが反射的に手が地面に出たので、地面に頭をぶつける事はなかった。



そして背中の痛みよりも先に、現状がわからずひざまずいた状態のまま瞬間的に振り向いた。その目線の先には、知らない学生服を着た二人組が立っていた。そしてそいつらはこうつぶやいた。


『あっ……やべ‼︎ 間違えた‼︎』


そう言って謝りもせず、逃げるように二人組はロータリーの向こうへ走り去っていく。この一瞬の出来事を理解が追いつかなかった。そして、痛みを感じながら徐々に状況を整理して想像するに、どうやら知人と間違われていきなり背後から跳び蹴りを食らったという結論に達した。


それにしても、たとえ知り合いでも無防備で無抵抗な背後からの攻撃は危険極まりない行為なのに、それを赤の他人に実行してきたのだ。流石にこんな突発的な暴力行為を予想出来るわけがなかった。


幸い、背中の痛みとズボンのひざ部分に穴が空いたのと、少しの擦り傷だけで済んだのが不幸中の幸いだった。一歩間違っていたら……頭をどこかにぶつけていたら……無意識に腕を出していなかったら……もっと重症になっていたに違いない。



と、この時点で目が覚めた。



 「……嫌な夢を見たなぁ〜」


そうつぶやきながら、無意識に左目だけを先に開けた。まだ右瞼まぶたに違和感があったので、右目はすぐには開けず、恐る恐るゆっくり目を開けることにしたのだ。


夢ではあったが、アギトにとって現世の学生時代に実際に遭遇した事件だった。正直、今の今まで忘れていた記憶だったが、この異世界に来てまさか『この夢』を見るとは思わなかった。



 夢でなく現実では特徴のあるコテージの寝室の天井が見えた。アギトはすぐ起きようとしたが、全身が筋肉痛のような痛みで自分が思っている以上に体を動かす事が出来なかった。さらに夢のせいなのか、全身に汗をかいていた。



プラタナスは、そんな些細なアギトの仕草を枝のみで察し、いつものように窓越しに声をかけてきた。


「大丈夫ですか⁉︎」


「あぁ〜大丈夫さ。少し夢を見てたよ」


「そうでございますか。それは良い夢でしたか⁉︎」


「いや、最悪な夢さ。……ただ、今にして思えば、常に周囲を意識するきっかけになった出来事だった。これ以降、危機管理の能力が向上した。それが今、異世界に置いて記録解析魔法スキャンに繋がっている。忘れていた原点を思い出したという点で言えば、後付け的には良い夢だったのかもしれない」



 当たり前だが、夢は自分な好きなシチュエーションを見る事は出来ない。理想を言えばストレス発散を出来る方が目覚めが良いのだが、得てして都合が良い夢は一番良いであろう状況のその前で覚めてしまう。そしてストレスのかかる嫌な夢ほど長く、いつまでも終わらない。アギトはそんな持論を抱いていた。


「よくわかりませんが、とにかく目覚めてくれたことが何よりの朗報です」


「……ちなみに俺は、どれくらい寝ていたの⁉︎」


「まる4日です」


「け、結構寝ていたな〜。人間って1回も起きずにソコまで寝れるもんなんだなぁ〜」


「寝ると言うよりは『回復に徹する』と言う表現が正しいと思われます。実際は全治6週間の大怪我を半日で短縮治癒したことになります。その結果、治癒魔法によって全身の魔力エネルギーの巡りを活性化し、怪我を迅速に治癒しましたので、その反動で体全体に負荷がかかりました。その復活のための時間だと思っていただければと思います」


「それでも短期間で治してくれた事に感謝してるよ。ありがとう」


「いえいえ、恐縮です」


「そういえば……俺とトネリコの試合結果はどうだった⁉︎」


「あの試合はジンカイ様の判断で引き分け無効試合になりました」


「そう……なんだ」


アギトは、あの戦いを思い出すように再び目を閉じる。終盤の瀕死の時点でアギトは勝ち負けの事は考えていなかった。ただジンカイさんに少しでも俺の成長した姿を見せたい一心で新しい罠連鎖魔法ブレイクショットを打ち続けた。正直、試合の最後の方は記憶がなかった。気づいたら横になっていて、プラタナスと目の上の傷の事で揉めていた事だけは、微かに憶えていた。

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