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円い十字架  作者: M.P.P
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-第二十九章- 安寧を捨てて(5)

-前回のあらすじ-

 モニタールームの前まで来た二人は、部屋の中から不自然な音が聞こえることに気付く。

 ほどなくしてモニタールームの扉が開く。太ももから血を流した、渡辺の側近の一人がゆっくりと現れた。身長はさして高くもなく、体系は太り気味である。


 男は外へ出ると、私たちを見つけてはっとしたように立ち止まる。一瞬戸惑うようなそぶりを見せるが、すぐに臨戦態勢へと移行する。


 それでも、男は圧倒的な力量差を前に崩れ落ちた。私に攻撃を仕掛ける間もなく、背後から凛さんがとびかかったのである。人間離れした腕力から抜け出すことは不可能だろう。


 それから男が意識を失うまでにはそう時間はかからなかった。静かになった廊下には、倒れた男と私たちが静かに取り残されていた。ほかの人々はどこへ行ったのか。


 少なくとも側近がここにいるということは、渡辺本人もこの付近にいたはずだし、なにより側近はこの男の他にもう一人いるはずなのだ。


 ぐったりと壁にもたれる男の首に手を当て、息があることを凛さんが確認する。死んでいないことを確認できると、ほっとしたように立ち上がった。何気なく目が合う。


 美しい、と思った。真紅の瞳に白い肌、長く伸びた黒髪。ああ、彼らとて私と何ら変わらなかったのだ。渡辺も藍沢蓮も、彼女のために戦っているのだ。


 だからこそ負けられないし、譲る気などさらさらないのだ。凛さんは、どこか遠くの音を聞くように耳を澄ましている。彼女は気付いているのだろうか。彼らが何故戦っているのかということに。


 それを知ってもなお、どちらかの味方をし続けることができるのだろうか。この事件の本当の被害者はきっと、藍沢凛なのだ。


 凛さんは私から視線を外すと、ゆっくりと歩き始めた。特に言葉をかけるわけでもなく、私は黙って彼女の後を追った。


 今回も章分けの関係で短くなってしまっています。

 このペースだとGW中ないしはその直後あたりが最終回の目途となりそうです。物語も大詰め、ぜひ最後までお楽しみください。

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