表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
円い十字架  作者: M.P.P
90/102

-第二十九章- 安寧を捨てて(4)

-前回のあらすじ-

 天井を破って侵入した凛さんと合流する。

 できれば彼らと合流したいところだ。私はこの施設を知り尽くしているし、凛さんは大きな戦力になる。なにより、以前の凛さんよりもエネルギッシュな感じがするのだ。


「雰囲気変わりましたね」

「ちょっと喉を潤したまでだ。かつて私はおのれを見失ったが、守るべきものがあるとそうも言ってられんからな」


そう言うお前も雰囲気変わったな、と付け加える。もちろんだ。私は以前の一回りも二回りも強くなった。


「できれば神城さんたちと合流したいんですけど」


凛さんはしばらく目をつぶった後、静かに口を開く。


「廊下に出てる人間が多すぎる。が、走っているのは数人だ。おそらく人数は三人程度。あいつらだろう」


人数は愚か、走っているかどうかさえ私には判らない。けれど、きっと鋭い聴覚をもつ凛さんには聴こえているのだろう。さすがは人造吸血鬼といったところか。


 私は凛さんにの後を追って、緑の廊下を歩き続けた。ちょうどA区画とB区画の境目、つまりはモニタルームの前まで来ると、凛さんは立ち止まる。


「血の匂いがする。近い」


凛さんはきょろきょろと周囲を見回して、その都度深呼吸をする。血の匂いを探っているのだ。


 しばらくして凛さんの始点が定まる。モニタールームの方を見つめ、考え事をしているようだ。


「この先に隠し部屋でもあるのか?密閉度が高い。匂いはするが、ぼやけている」


確かこの先は……、そうだVIPルームだ。渡辺とその側近だけが入ることを許された、極秘の空間。だが、その中で血が流れたということは、一体何が起こったのか。


「やつらの痕跡がある。すでに消えかかっているが、薄い十字架が刻まれているのが見えるだろう」


神城さんたちは、ここまでたどり着き、そして中へと侵入したのだ。血が流れたということは、そこで戦闘が発生したことは間違いない。それが味方の血でないことを願うばかりだ。


 本来ならモニタールームの鍵は常に開いているはずなのだが、緊急事態の発生と同時に施錠されてしまっている。これはトオルと侵入したときも起こっていた。


 が、中から足を引きずるような音と、それに加えて荒い息遣いが聞こえてくる。誰かいる。隣で凛さんが身構える。


 中から電子音がして、入口のランプが赤から緑に変わる。中の人物が外へ出ようとしているのだ。凛さんがこちらにアイコンタクトを送ってくる。このまま戦闘を始める気でいるようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ