-第二十八章- 対峙(2)
-前回のあらすじ-
No.75Cに連れられるまま、モニタールームへと侵入する
と、そのとき一つのモニターが赤く点灯する。それに続いて周囲のモニターが次々と真っ赤な背景を表示していく。
「まさか失敗したんじゃないだろうな……?」
「あら、神城さんは私のことが信用できないのね。残念だわ」
この言い分からして、失敗ではないのだろう。俺は不安に駆られながらも、静かに待機することにする。
すると、中央のモニターが横にスライドし、その奥に扉が現れた。厳重に隠されているということは、それだけこの先にあるものが発見されたくないということになる。心臓の鼓動が徐々に速くなっていくのを感じる。
まずは偵察も兼ねてNo.75Cが扉を開ける。完全に扉が閉まらないうちに、その隙間から手招きする。
扉の向こうには、俺の想像していたものとは全く別の世界が広がっていた。壁は木造を模してあり、照明も電球色の温かみのある色だ。そのまま廊下のように次のドアまで道が続いている。
そう、その先にあるのは「ドア」なのだ。重く怪しげな扉ではない。まるで家のリビングにでもつながっているかのような、アットホームな雰囲気なのだ。
そのドアの先も、廊下の様子とほぼ変わりはなかった。左手にはキッチンがあり、中央にはテーブル、そしてその奥にはテレビが置かれている。テレビの横からキッチンの手前まで続くように、ラックが置かれていて、そこには写真立てが多数置かれている。
「これ、藍沢さん……?」
瀬奈が小さな声でつぶやく。そこには笑顔で映る少年二人と、かわいらしい少女が一人映っていた。
「それに渡辺刑事と、凛さんか」
こんなに幸せそうな顔をしていたのだと、どこか表情がゆるんでしまう。隣で藍沢さんが照れくさそうな顔をしているのがまた可笑しさに拍車をかける。
けれど、今俺たちがこうしてここにいるということは、彼らにとっての平和な時代は終わってしまったことを意味している。それでも、渡辺刑事に少しでもこんな感情が残っていてくれたことに感謝する。
まだ話をする価値はありそうだ。
「いよいよね。気配を感じる」
瀬奈の表情が再び引き締まる。彼女が言うのだから間違いない。この先には能力者がいる。
ちょうどリビングの右手には、また両開きのドアが設置されていた。俺たちは一度顔を見合わせると、その取っ手に手をかける。
すると、誰が押したでもなくドアが開いた。
「ようこそ、我らが本拠地へ」