-第二十三章- 紅ノ日記(2)
[二六年 十月十日]
違う。僕はやってない。そうだ、確かに思考をコントロールはした。だけどとどめを刺したのは彼女自身の能力だ。自ら浮遊して、それで縄に首をかけたのだ。だから僕は大丈夫だ。落ち着け。落ち着け。
凛さんにもばれてはいない。だからこの平和な日々は続く。大丈夫だ。何一つ問題はない。
[二六年 十月十一日]
どうして?これだけじゃ終わらないのか。僕はまだ許されないのか。●●からの指令だから聞かなければいけないのはわかっている。命の恩人だから。だけど、こんなのはあんまりじゃないか。あとどれだけ●せば許されるのだろう。
[二六年 十月十五日]
もうすぐ日付が変わる。凛さんには「僕が家にいる」という幻覚を見せてある。
今日のターゲットが疲れ切ったサラリーマンでよかった。もしこれがまた若いやる気に満ちた人間だったら、僕は今頃狂ってしまっていたかもしれない。大丈夫だ。僕はまだ正常だ。
[二六年 十月十七日]
柏木瀬奈という少女に出会った。こんな街のど真ん中で寝ていたとは天然にもほどがある。それに、彼女は特別だ。僕の力が通用しない。ごまかしがきかない。彼女と目が合うと、不思議とすべてを見透かされたような気分になる。彼女はコントロールすることができない。
[二六年 十月十八日]
●●から夜中に連絡が来ていた。また●さないといけない。早起きして確認しておいてよかった。
瀬奈と凛さんは服を買いに行くらしい。僕は留守番すると伝えた。瀬奈にはコントロールが効かないからその都度嘘をつかないといけない。留守番中にきっちり仕事をしておこう。次は高校生だ。瀬奈と同年代。けれど、瀬奈と話せばすべて許してもらえそうな気がして、この前よりは多少気が楽だ。きっとそれは思い込みなんだろうけれど。