-第二十二章- 想い、空に舞う(4)
-前回のあらすじ-
警察から逃れるため、凛さんが別行動として離脱する。
今から警察がたどり着くまでにできることは何か。まず、日記を隠すこと。それは達成した。次に、凛さんの服装だ。上着で隠してあるものの、その下の衣服は肩が破れ、大きな血のシミができている。
「散るか。私と瀬奈はここから飛び降りられる。逃げ切ることも不可能ではないはずだ」
もしお前らが捕まったら助けに行ってやる、と付け加える。
だが、この案は非常に危険だ。確かに警察からは逃げ切れるかもしれない。だがそれ以上に重大な問題がある。
「それはだめだ。今最も警戒すべきは警察よりトオル達――」
まて、そのトオルが殺されているとはどういうことだ。これは一連の事件とは無関係なのか。それにしては猟奇じみているし、なによりトオルが無関係に殺されるとは考えにくい。
俺が思考を巡らせている間にも、それを待ちかねた凛さんが柵を乗り越え飛び降りるのが見えた。着地するとそのまま目にもとまらぬ速さで校庭を駆け抜ける。こうなってしまっては、彼女が無事でいることを祈ることのみだ。
その直後、うろたえる俺たちを嘲笑うかの如く扉が勢いよく開けられた。中から複数人の警官が現れ、俺たちの身柄を手早く拘束していく。
「警察だ。不法侵入及び死体遺棄の容疑で現行犯逮捕する」
まず一つ目の可能性をクリアした。奥から渡辺刑事が階段を上ってくるのが見える。
「秋葉原の事件といい、ここのところペースが早すぎないか……?」
さすがは捜査一課といったところか。これだけの惨状を目にしても怖気づく様子はない。
「よし、まずは容疑者の確保が終わったな。手の空いてるやつは現場の保存にかかれ。検察にお小言を言われるのはこりごりだろう?」
部下が動きだすのを確認すると、藍沢蓮に向き直って軽く会釈した。
「久しいな。元気にやってるか」
この状況下でも藍沢さんはにこにこしている。それを見事にあしらうと、今度は俺の方へやってきた。
「君が病院から脱走したと聞いて心配していたんだよ。とはいえ、突然いなくなるのは関心しないなぁ……。場合によってはあの事件の犯人にされかねない状況なわけだし」
その辺はこっちで誤魔化せるから大丈夫だ、と笑う。あの時同様、渡辺刑事と話していると徐々に落ち着きを取り戻せる。
「言わずとも何を考えているかはわかる。おそらく無罪を主張したいのだろう?この不自然さからして、これもおそらく能力者の犯行だ」
とはいえ、一度は警察署まで出向く必要があるとのことだ。そして、くーちゃんと瀬奈を見比べると、少し悩むような様子を見せた後にくーちゃんの方へ向き直った。
「まさかトオル君が被害に遭うとはね。凛のこともあるし、本当に気の毒に思うよ」
渡辺刑事はくーちゃんとも面識があるのだったか。彼に面識がある人物は、他にもいる。凛さんの存在も、そして殺されたことも知っている。だから凛さんはここを離れざるを得なかったのだ。