-第二十二章- 想い、空に舞う(2)
-前回のあらすじ-
拠点を出発し、陸斗の通っていた学校へ向かう
私立飯野高等学校。俺が通い続けた学校。そして浩二の最期をみとった場所。その校門の前に立つと、何故だかずっしりと重い空気をまとっているように感じた。
俺はみんなと目を合わせると、ゆっくりとその校庭へ足を踏み入れる。俺に続くように、みなぞくぞくと校庭へ入っていく。
今日は平日だ。だから当然授業が行われている。だが、幾度となく遅刻を繰り返し生徒指導教員から逃れてきた俺らにとって、見つからずに侵入することは容易だった。
用務員用の裏口から中へ入ると、普段は使われていない非常勤講師室側の廊下を通って階段へ向かう。そこから三階へ上がると、屋上への階段へ移動するには、教室の前を通らざるを得ない。
俺はジェスチャーでかがむように指示すると、そのまま窓から見えないよう細心の注意を払いつつ、教室の前を通り抜けた。
心臓がドクンと音を立てる。あの場所だ。浩二を見失った廊下。俺はだんだんと速くていく鼓動を落ち着かせるように深呼吸をする。
後はこの階段を上り、屋上への扉を開ける。そして、浩二が能力を最大出力で発動した場所を突き止め、そこをくーちゃんが触れる。うまく行けば、せめて「浩二が亡くなった」という事実だけでも取り戻すことができる。
再びみんなと目を合わせると、階段へ一歩踏み出す。その一段一段が懐かしく、同時に怖くもあった。あの日の情景が昨日のように思いだされる。
屋上への扉には『生徒の屋上使用を禁ず』と張り紙がされていた。しまったと思った。俺の考えが浅はかだった。よく考えれば当たり前ではないか。浩二が死んだ事実は隠されているとしても、俺がここの屋上で発狂していた事実はなくならないのだ。
「まって、そこ開いてる」
瀬奈の声が聞こえる。どうしてわかるのか。
「取っ手のとこ、塗装が剥げてるけど『開』ってなってるよ」
どうして開けっ放しなんだろうね、と瀬奈が首を傾げた。
俺は手を掛けゆっくりと回す。確かにノブは回る。だが、強く押し込んでも扉は開かない。鍵がかかっているという感じではない。何かがつかえて、うまく押せないといった感覚だ。
「貸してみろ」
さすがは凛さんだ。人並み以上の力を持っているというのは、想像以上に便利そうだ。
錆びた金属のこすれる音がして、ゆっくりと扉が――
ドサッ。見覚えのある顔が倒れてきた。口から血を吐き、そこに日記のようなものが押し込まれ、青ざめた顔をしている。それでも、整った顔立ちと若干長めの髪には変わりない。トオルだ。