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円い十字架  作者: M.P.P
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-第十七章- 暗雲(3)

-前回のあらすじ-

 瀬奈から突然連絡を受けた陸斗は、慌てて捜索を再開する。

 彼女はトオルが能力者だったと言ったか。悔しいがこれで次の標的が分かった。まさかトオルまでが能力者だとは思っていなかったが、すぐに助けに行かなければならない。やはり藍沢蓮を信用したのが間違いだったようだ。


 スマホに搭載されたマップ機能で『カフェ ラリア』と検索すると、すぐに駅前の「カフェテラリア」が見つかった。ちょうどここから線路を渡った反対側だ。俺は小走りにその店へと向かう。

 息を切らしながら走っていると、けたたましい鐘の音が鳴る。こういうときに限って邪魔が入るのはなぜなのか。焦る気持ちを遮るように遮断機が降りた。


 ただでさえ時間ロスだというのに、駅のそばであるため通常より長く遮断機はしまったままになっている。一応、瀬奈とトオルの二人が能力を使える。さらにくーちゃんは能力の影響を受けない。これらならなんとか俺がたどり着くまで持ちこたえることができるか。


「まったく人使いの荒いやつだ」


やはりこの状況にいらついている人が俺の他にいるようで、すぐ後ろから何者かが悪態をつくのが聞こえた。


「すまないが私から離れてくれないか。怪我をさせたくはない」


さきほど悪態をついていた人だろうか。後ろにいたライダースーツで全身を覆い、深く帽子をかぶった女がそう言った。


 『74.8%』何の数字だろう。俺はその確率を不思議に思いつつ、女に言われるがまま一歩外へよける。『68.2%』確率が下がる。


 まさか、と思った時には遅かった。気付くと女は二、三歩の助走の後高々と飛び上がっていたのだ。その衝撃で地面のアスファルトが軽くはがれて飛び散る。その破片は俺の耳元をかすめて遮断機の根元に命中した。おそらく七割近い確率であの破片は俺に当たって怪我を負わせていたのだろう。危険極まりないことをする人もいたものだ。


 女は線路を軽々飛び越し、踏切の向こう側へと着地する。当然驚くべきことなのだろ。だが、考えるべき情報が多すぎて脳が処理に追いついていないのか、驚きの感情はどこかへ迷子になっていた。

踏切前はざわざわと人が集まりはじめ、ホームからかすかに「安全点検のため列車遅延が発生する」といった要旨のアナウンスが聞こえる。これ以上踏切につきあわされる義理はない。俺は若干の罪悪感とともに踏切を押しのけて線路を渡り始めた。


 視線が刺さるとはよく言ったもので、現に今、俺はそんな状況だ。踏切を待つ人だかりから、俺は軽蔑の視線を向けられているのだ。当然悪いことをしている自覚はある。だが、こちらとて譲れない事情があるのだ。


 線路の向こう側にも、同じように人だかりができていた。そらから何者かが降ってきたと噂する声が聞こえる。果たして彼女は何者なのか。だが今はそんなことを考えている場合ではない。カフェテラリアを探さねばならないのだ。俺は歩みを早め、目的地を目指した。


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