-第十四章- 安息(2)
-前回のあらすじ-
秋葉原で事件を目撃したのち、みんなで拠点へと戻る。
一通りテーブルに食事を並べると、みんながその周りを囲む。私に過去の記憶はないけれど、なんだか懐かしいような、暖かいような、そんな気分になった。すると、意外にも忘れていた空腹を感じるようになった。案外ショックが強すぎると気にならないように人間は作られているのかもしれない。
「あ、シーフードピザもらい!マルゲリータもとっておいて」
「おいおい、そんなに慌てなくてもいいだろ」
瀬奈さんと神城さんがもめている。マルゲリータといえば、凛さんと二人で行ったレストランを思いだす。けれど不思議と悲しい気持ちになることはなかった。
食事も終わり、夕方九時を回ったころ、私たちの元へある情報が回ってきた。そう、藍沢さんと連絡が付いたのである。むろん私は彼との連絡手段を持っていないので、瀬奈さん経由で聞いたのだけれど。
「藍沢さん、明日帰ってくるってさ。まったく直前までなんの連絡もしないなんて」
瀬奈さんは少し不機嫌そうだ。というのもその藍沢さんという人はいつも連絡が遅いのだそうで、この短い間にもそのことで悪態をついていた。
「まぁそう気にしなくてもいいんじゃない?今日帰ってきたところで何かできるわけじゃないし」
トオルが言う。確かにそれも一理ある。けれど、今日の事件のことや、凛さんとの関係とか、藍沢さんに聞きたいことは山ほどある。それを一刻も早く聞きたいという思いは、きっとトオルも同じはずだ。
ぶつぶつと文句を言っている瀬奈さんを後目に、私は布団の準備をはじめることにした。普段ならまだまだ起きて居られそうな時間だが、いかんせん今日は刺激的な一日だった。たまった疲れがどっと押し寄せてくるのがわかる。それはほかのみんなも同じようで、すこしぐったりしているように見える。
しばらく一人で布団と格闘していると、見かねたトオルが手伝いにやってきた。
「布団敷くなら声かけてくれればよかったのに」
相変わらず人がいい。いつか悪人にだまされやしないかと心配になるほどに。だが今は深く考えず恩に着ることにする。さすが男手を借りただけあって、一人では苦労した作業は、ものの数分で完了した。
ちょうど布団が敷き終わったころ、瀬奈さんから銭湯へいこうと提案された。
「賛成!」
私は即答した。死の臭いを少しでも払っておきたいし、なによりこの疲れを癒してくれそうな気がするからだ。
「おお、いいな。疲れた時にはそれが一番だよな」
神城さんも賛同すると、みな口々に便乗していった。瀬奈さんは奥のタンスから、お風呂セットを取りだしてきた。私たちの分は残念ながらないようだ。だが、タオルなどは銭湯で借りられるそうなので、着替えだけ持って出発することにした。
本日は「キャラと作者の弾劾裁判」も投稿したいと思います。そちらもぜひよろしくお願いします。