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円い十字架  作者: M.P.P
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-断章- 検体-No.75C

-前回のあらすじ-

 凛さんの予言に従って都内を巡回していると、秋葉原の街中で突如人が蒸発してしまう。

 気付いた時にはここにいた。最近私は『教育』というものを受けているらしい。そうして初めてこのまわりが緑という色をしていると知った。私にとってはこれが普通だったから。緑以外の世界は知らない。先生の話によれば、ここは緑であると同時に暗いのだそうだ。暗い、の反対は明るいだったか。けれどわたしは明るいとう状態を知らない。


75Cと呼ばれたら、それは私だと教わった。あまりその名前は好きではない。それを呼ばれて先生のところに行くと、だいたい変な機械をつけられて、とても気分が悪くなる。けれどそれをするたびに先生は褒めてくれる。


『検体番号75C、柏木瀬奈。実験室に急行せよ』


これはアナウンスというらしい。これで私の番号が呼ばれたらいつもの部屋に行く。ほかの子たちは呼ばれることは少ないから、私は特別なのかもしれない。いつもの部屋につくと、扉の中には見慣れない人たちがいた。


「これが75Cか。出来はどうなんだね?」


怖い。私のことをじろじろ見てくる。


「瀬奈ちゃん、いらっしゃい」


先生はいつも通りにこにこして話しかけてくれる。


「ねぇ先生。せなちゃんってなに?」


私はずっと気になっていた。私に向かって『せなちゃん』とよく言うのだ。


「それはね、あなたの名前よ」


先生はそう言うけれど、私の名前は75Cではなかったのか。


「75Cも、瀬奈も、両方あなたの名前よ」


今日も新しいことを知った。瀬奈ちゃん、というのは私のことだったのだ。


「そんなことはどうでもいい。早く成果を見せてくれないか」


怖い人たちが先生にそう言った。先生に連れられて、私は奥の透明な部屋に入る。そこには知らない子が座っていた。指示を出されるまま、私はその子に近づく。流れ込んでくる思い―。何かを求めている。心が一つになる感じがして、私はどっと疲れを感じた。なんとか目を開けると、そこには緑ではないものが置かれていた。座っていた子は必死でそれを食べている。ということはこれは食べ物なのだ。緑でない食べ物もあるのだと知った。


「すごい、これが感応現象か。他人の意思に反応して自らの力を適用するとは……」


怖い人が何かぶつぶつ言っている。ふと足本を見るとそこには不思議な交差した線があった。


「ええ、そうです。モデルは柏木瀬奈ですので、これは具現化感応能力とでも言いましょうか。他人の妄想を具現化したり、感応派に乗せて伝達するように広範囲に能力を適用したりできます。今回の場合、実験対象の少女には一週間食事を与えていませんから、空腹を満たす方向に力が働いたと思われます」


先生は怖い人たちと話している。あの子は一週間もごはんをもらってないのだろうか。難しい言葉が多かったが、それでも最近の教育の成果でなんとなくわかる。疲れて眠い。体もひどくだるい。意識がだんだん遠のいていく。私は眠りに落ちながら、何か白い光を見たような気がした。


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