-第十二章- 影(4)
-前回のあらすじ-
秋葉原の巡回担当となったくーちゃんは、街を回って調査を続ける。
『アキバにゃん×にゃん☆を選ぶなんてくーちゃん分かってるじゃない。もし空いてたら人気ナンバーワンメイドのフェリスちゃんを指名するといいよ』
やたらとご機嫌な瀬奈さんの話を打ち切るのは申し訳ないが、トオルのことを聞いてみることにする。
『あー、トオルね。さっきすれ違ったときに聞いたけど、携帯の充電切れちゃったみたいよ』
そういうことだったのか。安心した。もしトオルまで事件に巻き込まれてしまったらと思うと気が気ではなかったのだ。
「そうだったんだ。ありがとう」
私はお礼を言うと電話を切った。ちょうどその時メイドさんがコーヒーを持ってきた。さっきのパンフレットにも書いてあったが、目の前でクリームを入れてくれるサービスらしい。ミルクコーヒーの味はというと、とても甘かった。コーヒー通の人に言わせればきっとこれはコーヒーではないのだろう。それでもなぜか、懐かしいような気がした。やはり瀬奈さんはここの常連だったのだろうか。
アキバにゃん×にゃん☆を出るころには、ちょうどお昼になろうかというところだった。どうせならさっきのメイド喫茶で食事もしてしまえばよかったと軽く後悔する。かといってまた同じお店に戻るのも気が引けるので、駅まで戻って昼を食べることにした。
駅前も相変わらず人でごった返しており、飲食店を探すのも一苦労、といったところだ。仕方なしにハンバーガーチェーン店で昼を済ませることにした。そもそも値段が売りのこの店は味わって食べるほどの味でもない。
さっさと食べ終えると、再び駅前の人ごみへと足を運んだ。―と、その時である。一瞬、まさに瞬く間ではあったが、空を何かが飛んでいくのを見た。飛ぶというのは語弊があるかもしれない。正確には跳ぶといった方がよいだろう。まさにその影はビルの屋上から屋上へと『跳んで』いったのだ。気が付くと私はその影を追っていた。これが真犯人かもしれないと思うと恐怖を感じる。だが、病院へ行ったときに感じたのと同じような興味にひかれて、歩行者の間を縫ってその影を追った。
今回も章分けの事情で短くなってしまいました。
次回からは陸斗の能力者観点での世界観を見ることができますよ。