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円い十字架  作者: M.P.P
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-第十一章- 翼(4)

-前回のあらすじ-

 拠点にて、クローン瀬奈に「くーちゃん」とニックネームを付ける。

 その後くーちゃんとトオルの不思議な、そして悲しいお話を聞いた。俺が浩二を失ったように、彼らもまた大切な人を失ったのだという。それはとても共感が持てることだったし、同時に安心できることでもあった。この悩みは俺だけじゃない、同じ思いの人がいると思えるだけでだいぶ楽になれる気がした。


「そういえば瀬奈、さっき言ってた藍沢さんって誰なんだ?」


俺はそう問いかける。トオルとくーちゃんも身を乗り出して興味津々だ。


「ああ、藍沢さんね。彼、だいぶ変わった人だから、会ったらきっとびっくりするよ」


瀬奈が藍沢さんとやらについて話し始めた。藍沢さん、というのは施設のことや異能のことについて詳しい謎の中年の男で、以前から瀬奈は協力してもらっているのだという。


「藍沢って……」


くーちゃんがうつむき気味につぶやいた。なにか思い当たることでもあるのだろうか。トオルの方に目をやる。彼もまた、くーちゃんと同じ目をしていた。どこかこの話には触れてはならない、そんな気がした。


 そうこうしていると、日も落ちてきて夕食時となった。四人で話し合った結果、食事は近くのファミレスで済ませることとなった。ちょうどみな事件続きで帰るあてもなかったからである。瀬奈と俺に関しては、どのような扱いになっているかはわからない以上、特になにか動く必要はないだろう。しかし、残りの二人はそうもいかない。警察からアパートを与えられているため、呼び出されたときそこにいないのはいささか問題だからである。だが少なくとも今晩は大丈夫のようだ。その件に関して先ほどから警察に電話しているトオルの声色から察するに、しばらくアパートを開けても平気のようだ。


「もしよかったら私のおすすめのお店行かない?ファミレスはファミレスでも、ちょっと面白いメニューがあるのよ。と言っても見つけてきたのは藍沢さんだし、彼のお気に入りでもあるから、私たちだけで行ったなんて言ったら怒るだろうな」


そういう瀬奈はとても楽しそうだ。よく考えれば無理もない。なにせ彼女はついこの前まで病院のベッドから一歩も動いていなかったのだから。


「そういえば、藍沢さんってのはいつ帰ってくるんだ?」


倉庫からの道を歩きながら、俺は率直に疑問を述べてみる。


「そうだね、僕も気になっていたところだよ」


トオルもそう付け加えた。


「うーん、はっきりとは言えないかな。あの人いつも気まぐれだし。早くとも明後日じゃないかな。ほら、施設で事件があったでしょ?多分だけどそれについて調べてると思うの」


この言葉から察するに、その藍沢さんというのはどうも時間にルーズな人間のようだ。帰る時間帯も伝えずしていなくなっても心配されないのだから相当なのだろう。


 しばらく歩いて行くと、右手にあまり見かけない看板を掲げたレストランが見えた。どうやらそこが目的地のようだ。看板にはカレーラーメンと書かれたメニューが掲示されており、それが一押しの料理なのだろう。しかし、カレーラーメンなど初めて聞くうえ対してうまそうにも見えない。ラーメンは豚骨一筋だろう。麺はゆで時間三秒がおいしい。自分の好みは置いておくとして、となりのくーちゃんの様子をうかがってみる。


「カレーラーメンってなに?おいしそう」


目を輝かせて看板を見つめていた。この子とは趣味が合わなそうだと思った。


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