-第十一章- 翼(3)
-前回のあらすじ-
隠れ家へ招かれた陸斗は、二人の瀬奈が生まれた理由を知る。
「そんなことがあったのか。驚きだよ」
俺は率直な感想を述べた。これで瀬奈が失踪していた原因はわかった。だがしかし、未だにわからないことがある。それは何故俺に瀬奈は能力を見せてきたのか、ということだ。何か深い理由があるのだろうから正直聞きづらい。だが勇気をだして訊いてみることにする。
「瀬奈、あのさ。なんであの時俺に能力を見せてきたんだ?」
瀬奈は少し迷ったような表情をしている。やはり言いづらいことなのだろうか。
「それは…。怒らないで聞いてくれる?」
俺はうなずく。横にいる二人も気になっているようだ。
「実はあの時、リクに能力者の素質があるって気づいてたんだ」
意外だった。俺はたまたま死んで能力者になったわけではないということか。戸惑う俺に瀬奈は説明を続けた。
「能力者って言うのはね、必ずしも求めた力だけが宿るわけじゃないの。それをリバースって言うらしいんだけど。私の場合相手が能力者かどうかとか、その素質があるかどうかなんかがなんとなくわかるっていうリバースで」
そこまで言ったところでもう一人の瀬奈がつぶやいた。
「ってことは私はそのリバースの集大成なのかな」
俺にはいまいち理解できなかった。リバースの集大成とは一体なんのことなのだろう。
「私は他人の異能の影響を受けないみたいなの。それって瀬奈さんのリバースを強力にしたものなんじゃないかなって」
もう一人の瀬奈は続けた。たしか彼女は瀬奈のクローンだったか。確かさっきの話だと能力までコピーされるかのように言っていたはずだ。だが彼女はリバースと呼ばれる能力しか持ち合わせていない、ということか。
「まあ詳しいことは後で藍沢さんに訊いてみましょう。それより瀬奈ちゃんの名前きめなくちゃね。私と同じじゃ紛らわしいでしょ?」
瀬奈は微笑みながらそう言った。正直ずっと辛気臭い話をしていてもつらくなるばかりだ。
しばらく部屋の隅っこでそっくりな二人が話していたかと思うと、突然恥ずかしそうに走ってこちらへやってきた。
「え、えと…。わたしクローンのくーちゃんですっ」
くーちゃんこともう一人の瀬奈は顔を真っ赤にしてそう言った。それは今すぐにかわいい!と抱き着いてしまいたくなるほど愛らしかった。
「あ、そう言えば僕も自己紹介しないとだね。僕は山添徹。トオルって呼び捨てでいいよ」
少年は立ち上がるとそう言った。みんなだいぶなじんできたように思える。
「それじゃあくーちゃんの名前も決まったところだし、少しお二人の話もききましょうか」
瀬奈がそう提案した。
ついにクローン瀬奈ちゃんに名前がつきました!!