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円い十字架  作者: M.P.P
24/102

-第十章- ホンモノ(2)

 前回のタイトルに番号つけるの忘れてました……。前回が(1)、今回が(2)となります。

 ※前回タイトル名は修正済です


-前回のあらすじ-

 病院にたどり着いた二人は、研究施設へと侵入する。


 しばらく歩き続けていると、名札のかかった扉がある廊下へと出た。それはまるで監獄といった様子で、唯一違うことと言えば、そこに病名じみたものが名前とともにかかっていることだろうか。そこにある名前と症状をトオルは資料と見比べている。


ここにいる患者たちのデータは、あの時見た退院の記録のない人たちなのだろうか。―とその時、背後の扉からけたたましい唸り声と扉をたたく音が聞こえた。あの中にいるのは本当に人間なのかと疑いたくなるような声だった。それはもはや獣のようであり、言葉という形を成してはいない。


 しばらく凍り付いたようにトオルと立ちすくんでいると、何人かの集団の足音が聞こえてきた。先ほどの唸り声に反応して管理人が駆けつけてきたのだろう。見つかってはマズい。私とトオルは急ぎ足でその場を離れた。


「この先にモニタールームがあるはずだ。コンピュータのパスワードは凛さんの資料にあるから、できるだけ多くの情報を盗みだそう」


トオルは声を潜めてそう言った。


 しばらく歩くと、トオルが立ち止まった。どうやらここがモニタールームのようだ。薄緑の照明の中、唯一赤いライトがついているのでとても目立つ。トオルがそっとその扉に手をかけようとした時だった。


『対能力者部隊へ告ぐ。緊急出動命令。能力者の覚醒を確認。対象、柏木瀬奈オリジナルの覚醒も同時に確認。警戒レベル最大、ライフルの使用も許可する。』


サイレンの音とともに施設内に放送が鳴り渡った。同時にモニタールームのライトは点滅をはじめ、ロックがかかってしまったようだった。トオルが何度力を込めてもびくともしない。あちこちで足音がし始めたこともあり、これ以上の調査はあきらめざるを得なかった。しかも、ここから抜け出すことさえ難しくなってしまった。


 ふと右の通路を見ると、そこには数人の集団が立っていた。ライフルを持った大男の集団である。私はそこで死を覚悟した。その時だった。トオルがとっさにそばの扉へ私を連れ込んだのだ。どうやら非常時で逆にロックが外れる扉もあったようだ。


 扉の中には目の焦点あっていない虚ろな表情をした少女が座っていた。そこは広さ数畳の部屋で、中には汚いベッドとトイレが置いてあるだけだった。少女は私たちのことをぼーっと眺めているようだった。

 男たちの足音が近づいてくる。そしてその足音はあろうことかこの部屋の前で止まった。何やらひそひそと話し声が聞こえてくる。もしここで扉を開けられたらと思うと息が詰まりそうだ。少ししてガチャリと音が鳴る。私は目をつぶっていたためわからなかったが、すぐにしまった音がして男たちが去っていったことから、別の部屋だったのだろうと予想が付く。


扉を出るとトオルはその集団を追い始めた。私はすぐさま反対方向へ逃げ出したかったが、いかんせん一人では心細い。仕方なくトオルについていった。その先には光が見える隙間があった。集団はその隙間に手をかけるとゆっくり開け始めた。そのままライフルを構え、どこかへ行ってしまった。ほっと安堵の息が漏れる。

 

集団が離れたことを確認すると、私たちはその隙間から廊下へでた。この隙間へたどり着くまでにだいぶ上ったということは、ここは二階くらいだろうか。廊下をしばらく歩いていくと驚くべきネームプレートを目にした。「柏木瀬奈」「神城陸斗」と書かれている。


 柏木瀬奈。私の名前だと思われていた名前。それがここに患者として載っている。私は興味にひかれるまま扉に手をかけようとした。その時だった。先の集団の一人が何か円いモノを投げたのが見えた。とっさにトオルが私をかばって廊下へ二人で倒れ込む。次の瞬間扉は吹き飛んでいた。明らかに私たちを狙っていることがわかる。

 だが同時にあの時感じた好奇心が何倍にも膨れ上がって自分を襲ってきた。いまその壊れた扉のすぐ先に、「柏木瀬奈」が存在しているのだ。その好奇心に心を奪われ気付くとトオルとともにその病室へ足を踏み入れていた。


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