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円い十字架  作者: M.P.P
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-第十章- ホンモノ(1)

 前回から章が変わっていますが、主人公は引き続き瀬奈です。

 どうぞ、瀬奈ちゃんパートをお楽しみください。


-前回のあらすじ-

 警察から解放された二人は、研究者がいると思われる病院へ調査に向かうことにした。

 病院の駐車場は予想より広かった。トオルは凛さんの遺言ともいえる資料を広げ、細かく位置を確認していた。


「多分ここの真下に研究施設があるみたいだよ」


トオルが告げた。私は心臓が高鳴っているのを感じる。もうすぐ私は誰なのかわかるのだろうか。期待と不安に飲み込まれそうになりながら、玄関へ向かう。駐車場には午前中にも関わらず、車が何台も止まっていた。中には来院者以外の車であろうものもちらほら見受けられる。ちょうど目の前にある、研究所と書かれたワンボックスなどがそうだ。私たちは車の隙間を縫うようにして入口へたどり着いた。


 受付のホールは清潔感があふれていてまさに病院という感じだ。入って右手には購買があり、パンやおにぎりが売られている。トオルは受付へ向かうと、資料にあった人の名前を一人あげ、面会だといった。何か不審なことでもあったのだろうか。受付嬢はしばらくトオルを見つめたまま静止していた。しばらくしてふと我に返ったように奥へ入っていき、面会カードと書かれた紙を持ってきた。これを二階のナースセンターへもっていけばよいようだ。


 二階へ上がる途中、トオルがふと立ち止まった。資料を眺めたまま難しい顔をしている。―と突然、踊り場の壁に向かって思い切り体当たりした。すると壁の一部がわずかにへこんでいる。そこになにかあるのだろう。トオルはその近辺を念入りに調べている。しばらくして何かを見つけたようで、作業を始めた。私がそばへ寄ると、そこにはテンキーが出現していた。


「瀬奈、見つけたよ。凛さんの資料通りだ。ここに隠し扉の解除装置がある」


トオルは資料と照らし合わせながらテンキーを必死に操作している。少ししてピッと音が鳴り、そばのランプが青く点灯した。うまく扉が開いたようだ。そのままトオルに連れられ、私たちは二階へと上がった。


 二階も相変わらず清潔で、病院であるという主張を曲げたくはないかのようだった。トオルは資料をにらみつけたまま、奥の廊下の女子トイレの前で立ち止まった。そのままゆっくりと、トオルはトイレの中へ歩みを進めた。私は突然トオルが女子トイレに入っていったので少し驚いたが、ここに隠し扉があるのだろうと察した。そのままトオルについていき、一番奥の個室へ入った。そこには人一人がギリギリ入れるくらいの通気口があった。


「ここからは物音を立てないように気を付けて。最悪命の保証はできないよ」


トオルが声を押し殺して言った。私が無言でうなずくと、トオルはゆっくりと通気口の格子をあけた。


 通気口の入口は水平に進む通路と下へ降りる通路の二つに分かれていた。水平に進む方からは風が吹いてきている。また、下に降りる通路にははしごが掛けてあることから、下が正しい道だとわかる。服装の問題もあったので、トオルには後から降りてもらうことにした。


 梯子はずいぶんと長かった。資料の通り地下まで伸びているようだ。梯子の先は薄暗く埃くさい廊下が広がっていた。うっすら緑がかったライトが周囲を照らしている。それはより一層不気味さを演出していた。


 私が廊下へ降り立つと、それに続いてトオルもすぐに降りてきた。トオルはしばらくあたりを見回すと、資料を片手に歩き始めた。私もそれについてゆく。少し廊下を歩いているといくつもの十字路にぶつかった。このことから予想するに、ここは碁盤の目のようになっているようだ。それにしても気味が悪い空間だ。先ほどから少し肌寒いようにも感じる。それは恐怖ゆえなのか。歩みを止めたら何かに飲み込まれてしまうような気さえする。それはトオルも同じようで、足早に廊下を歩いていった。


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