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円い十字架  作者: M.P.P
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-第四章- 不可視という名の力(2)

-前回のあらすじ-

 渡辺刑事から事情を聞かれる陸斗だったが、浩二の存在がこの世から消えていることを知らされる。

「嘘だ―」


気付くと俺はそう口にしていた。


「そう、その通りだ。私もそう思っている」

「え?」


渡辺刑事のさらなる不思議な発言に頭が混乱する。浩二は存在するというのか。先ほど自分で否定しておきながら。


「異能力、だよ。私の予想では、犯人も浩二君も能力者ではないかと思っている。犯人は浩二君の思考をコントロールし、君と彼が屋上にいる状況を作りだした。そののち浩二君自身の能力、おそらく他人に認識できなくなるような力だろう、それを発動させた。それに気づかない君は彼を突き落としてしまった。そんなところでは?」


その通りだ。俺の目の前に突然現れたのだ。


「そうです。ですが、ずっと見えなかったわけではなく突然現れたんです。それと、死体が見つからない原因はなんなんですか?」


渡辺刑事は心あたりがある、といった顔をして続けた。


「突然、か。ということは君は彼に触れて初めて気づいたのではないか?」

「ええ、そうです」

「だとしたら、浩二君の能力は透明になるわけではないということだ。視覚的な認識を遮断するような、つまり視覚以外でとらえられると途端に姿を認識されてしまうというものだろう。それと、死体が見つからない原因か。それについても予想はできている。彼は突き落とされて洗脳がとけ、神城君に罪がかかると思い自身の能力を最大出力で使用、自分の存在そのものを永久に認識できなくしたのだろう」


俺は、うなずくことしかできなかった。確かに突拍子もない話だが、彼女の能力も知っている手前、信じないという選択肢はなかった。ただ気になるのはあの少年―。だがあの凍り付くような目、その印象しか残っていない。まるで記憶に蓋がされてしまったかのように、それ以外の情報を思いだせなくなっていた。果たして、あの少年が犯人なのだろうか。


 俺はそのまま渡辺刑事に連れられ警察署へ向かった。ただし、俺には死体遺棄の疑いがかけられているらしく、すぐには釈放できないとのことだ。そして俺は精神疾患があるとみなされることで病院で待機できるよう渡辺刑事が手をまわしてくれた。どうやら俺は、浩二という友達の妄想をしていることになっているらしい。そうすることで精神科の専門として能力者研究の専門を入れられるのだとか。よくわからないが、刑務所のマズい飯を食うよりはましだ。


 病院の中は思ったよりもきれいだった。警察直属というわけでもなく、特に監視もつかないそうだ。噂では相当渡辺刑事が裏で手をまわしてくれたおかげだそうだが。


 まずフロントで刑事と別れると俺は検査室へ向かった。そこで一通りの検査をすませ、精神科の診断をうけることとなった。

 渡辺刑事に言われた通り浩二について語った。なんとかうまく精神疾患という診断がだされたようだ。その後症状に合わせ病室が選ばれた。どうやらその病室は四人部屋で二つベッドが開いていて、今日からそこで俺と同じくらいの歳の少女が過ごすことになるらしい。少女は意識がないとか。何故ほとんどめだった症状のない俺と、意識のない少女が同室なのだろう。少し不思議に思ったが、仮にも俺は容疑者なのだ。隔離されるのも無理はない。


 俺は病衣に着替え、病室へと向かった。部屋の中はひどく殺風景だが、あいにく俺はケガをしているわけでもない。暇になったらであるけばよいことだ。ふと気になって隣の少女のベッドを見てみる。カーテンがかかっていて中は見えなかった。よく考えれば当たり前だ。意識はないわけだし、女性ともなればそのような配慮はされるだろう。俺はベッドに座り事件のことをさらってみることにした。


 渡辺刑事は洗脳と言っていた。おそらくあの顔色を変えて走っていた時点で洗脳されていたのだろう。これは共通点か。よく考えれば、ひとつ前の男性が飛び降りた事件でも取り憑かれたように走る姿が目撃されたと報道されていた。

 まさか同一犯による犯行―。そして取りつかれた浩二は俺に暴言を浴びせたのち階段を上がり能力を発動。俺が探している間に屋上へ上がり少年と接触。何かしらやり取りを交わしたのち、追いかけてきた俺と衝突、転落。そこで洗脳が解け俺をかばうため自身の存在を抹消。ということだろうか。


 ただ何より不可解なことは、あの少年の顔を全く思いだせないことだ。あれだけ印象的な出会い方をして、それでもなお記憶に残らないのは何故だろうか。これもまた能力なのか。しかしそれは、どれだけ考えたとしても解決できそうにはなかった。


 病院の部屋で落ち着いたころ、資料をもって渡辺刑事がやってきた。そこで一連の事件、少女の変死、男性の転落、今日の浩二の転落が実は同一犯とみられていることを告げられた。表向きには無関係となっていることは知っていた。だがやはりつながりがあったのだ。まず一つ目の少女の事件だが、あの部屋でも深紅の十字架が描かれていたらしい。また、男性の転落した場所には黒く小さな十字架が、しかしこちらはすぐに消えてしまったという。そして今回同様不可解なのが、一人目の少女だという。状況的には自殺としか考えられないらしい。死亡推定時刻には家族は家におらず犯行は不可能。にもかかわらず首吊りのロープ付近、というよりその部屋自体に踏み台となるものが一切発見されていないという。渡辺刑事は一つ目の少女は浮遊能力があったのではないかとみているようだ。


 事件について話が終わると渡辺刑事は、すぐに釈放してやれなくて済まないといい部屋をでていった。頭の中で浩二のこと、能力のこと少年のこと、そしてあいつのことを思い出す。いやな予感がする。彼女だって能力者だ。学校に来ない間に殺されたりしていないだろうか。


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