異世界転移と魔女
「ここが異世界?どう見てもただの草原なんだけど」
ただ僕の部屋からいきなり草原にいるってことは転移そのものは本当の出来事らしい。
いつまでも草の上でボケっとしてても仕方ないので人を見つけるまで歩いてみるか。
しばらく歩いていると大樹の下で昼寝している美人なお姉さんがいたので話しかけてみることにした。
「あのーすみません、人里は近くにありますか?」
「・・・」
寝ているから反応がないのか、言葉が通じていないのか。
だが人と交流しなければ当然だが生きてはいけない、挫けないで話かける。
「あのー」
「貴方、私が怖くないの?」
お姉さんの第一声がそれだった。怖い?意味が分からない。
少し魔女っ子的な恰好はしているが剣と魔法の世界なら不自然ではなさそうだ。
「はて?可愛いとは思いますけど」
「どんな田舎でも”宵闇の魔女”くらい知っているでしょう?」
むむ、どうやら聞いた限り普通の魔女っ子ではないらしい。
だが僕は田舎どころか異世界人である、当然だが通り名とか聞いてもピンとこないのだ。
「僕、あんまり常識みたいなのないんです」
事実ではあるがよく考えたら今の発言はヤバイ奴だな。
「ふふ、貴方面白いのね。何が聞きたいのかしら?」
「人里が近くにあれば教えて欲しい、あとはこの世界について」
僕がそう言った瞬間お姉さんは凄く驚いた顔をしていた。
やはり異世界人は珍しいのだろうか?まぁ常識的に考えれば世界を教えてくれとか変人だよな。
「貴方、この世界の人間ではないのね」
「異世界人ってやつですね」
「人里なら東に歩いて行けばすぐにたどり着くわ」
おお!それは有り難い。ぶっちゃけ自分の状況も分からない上に人とも会えないんじゃ大変だからな。
しかし、この世界の情報が少なすぎる。少しずつでも集めないと。
「あとは世界についてだけれど、ステータスを見てみるのが一番ね」
「あーそのタイプの世界かぁ~」
異世界モノの小説などでもよくあるパターンだ。
自分のステータスや情報を確認できるゲームのような世界か。
「どうやって見ればいい?」
「心で念じれば目の前に現れるはずよ」
ステータスオープンと試しに念じてみる。するとゲーム画面のようなモノが表示された。
名前 「 」
体力 40
攻撃力 12
防御力 13
免疫力 7171
魔力 53万~1億
財力 3000ディール
スキル
{言語理解}詳細 {魔法理解}詳細
固有スキル
{捻転} level 1 詳細
居場所 ポンドの町周辺 草原
「なんぞやこれ」
見れば大体わかるがツッコミどころが多い。
体力これ絶対少ないだろ。逆に魔力がフリー〇様だよ!
スキルとかは爺さんの言っていた通りになっているな。
「これって平均的な数値ってどんな感じですか?」
「体力と魔力が大人の男性で120から140くらいね」
間違いなくこの数値はヤバイ、魔力とか明らかに平均からかけ離れている。
スキルの詳細が気になる、使い方が分からないと宝の持ち腐れだ。
「この世界って冒険者ギルドがあったりします?」
「あら、よくご存じね。ポンドの町に行けばあるはずよ」
これはギルドで新人いびりのイベント来るかもしれない!
今からイキり散らすのが楽しみだ。しかし、力の使い方が分からなければただの雑魚なのも事実だ。
「魔法ってどうやって使うんです?」
「魔法はどんなに簡単なモノでも覚えるのに数年は必要よ?」
なん、だと。
剣と魔法の世界なのに簡単なのでも数年かかるとか嘘だろぉ。
「あとはスキルってどう使うんです?」
「念じるだけよ、魔法も一緒、基本感覚的なことなのよ」
「なるほど、結構時間かかりそうだなぁ」
「ただ、魔法と違ってスキルはすぐに使えるはずよ」
その辺のことは時間のある時のでも試してみよう。
ただ一つだけすぐに試したスキルがある、それは”捻転”というスキルだ。
固有スキルなら強力なスキルかもしれないからだ。
「捻転!」
叫んで念じてみたが何も起きない。
本当に発動しているのか?そもそも能力の内容そのものが分からない。
「・・・そのスキルは発動しているわ」
「え?これ発動してるの?」
見た限りでは何の変化もないのだが。
それに少し危険そうな反応をしているのも気になる。
「この大樹を歪めるイメージで念じてみて」
「えーと、イメージイメージ」
言われた通りに大樹が捻じれるイメージでスキルの発動を念じる。
すると次の瞬間に大樹が捻じれて丸い塊になっていた。
「は?」
僕はあまりのことに言葉を失う。一瞬でさっきまであった大樹が歪んで丸い塊になるなんて信じられない。
そして同時にこれを対人に使うのは止めようと心に決めた。
「それは固有スキル”捻転”ね、100年前の魔王が愛用していたスキルよ」
「え?」
魔王とか聞えたんだけど、それに固有スキルなのに既に使用者がいるのか。
「安心して魔王は既に殺されているわ、私を含めた七星が仕留めたから」
「もしかしなくてもお姉さん強い?」
聞くからに強そうだ、魔王とか七星とか聞きたいこともある。
とはいえそろそろ町に行くべきだろう。
「この世界で7番目には入っているかしら?」
「ええ、それめっちゃ強いじゃん」
「そのスキル、悪用しないようにね」
「了解、所で100年前とか言ってたような?」
もしかすると100歳を超えているのだろうか?
この世界には人間以外の存在もいるのかもしれない。
「私は人間じゃないもの、ふふ」
「おお!やっぱり!少しこの世界が楽しみになってきた」
僕がそう言うと少しお姉さんはつまらなそうだった。
僕を驚かそうとしていたようだ。
「貴方の元居た世界は人間以外の種族がいる世界だったのね」
「ん?いやいませんよ?」
「それにしては驚かないから」
「むしろ人間以外もいたらいいなと思っていたので」
エルフとかドワーフにも会いたいがロリ魔王とかいれば最高だ。
とにかく多種族と話してみたい。




