表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第6話

ご都合主義的説明回。密度効果によって実際はこんなことにはならない~などという常識的な意見は受け付けない。おふざけで書いたチート系作品で常識を考え始めたら負けである。



 人間の冒険者に殺されたらしきゴブリンを目撃してから三日後。身の危険を感じた俺は密かに、しかし着実に数を増やしていった。元々半魔物と言えども魔物化して普通から変化した「G」は一日で卵を産んで成体になれる。しかも1つの卵から30匹は生まれる。

 もちろん全てが全て生き残る訳じゃない。生まれた幼体の何割かは色んな要因で死んでしまう個体がいる。せいぜい生き残るのは9~7割に落ち込むだろう。

 だけど、俺たちGはネズミ算式に増えることが出来るという事実は変わらない。しかも、さっき言った通り普通のGよりも強化されているのだ。



最初俺だけしかいなかったGは30匹に増えた。

うちメス個体15体が同じく30匹産み450匹。

うち225匹のメス個体が産み、6750匹。

そして今日。そのうちの3375匹が30匹産み、101250匹。



……正直に言おう。調子に乗って増やし過ぎた。今では増えすぎたせいで全員で行動することが出来なくなるくらいには支障が出てきている。

 

 いや、俺もやり過ぎたとは思ってはいたんだ。だけど人間がいるって事は分かったし、もし人間がいる場合、G発見=即排除が定石だろう? だからもしもの事を考えると数を増やした方が良いと思ったんだよ。

 それから、他の虫や鳥、ゴブリンに襲われない様に徹底的に生まれたG達に教育した。動く物を確認したら絶対に隠れる。危険を感じたら絶対に隠れる。とにかく隠れて生存することだけを優先させた。


 ここで嬉しい誤算があったのが、半魔物化した影響なのかこいつらの知能が地味に高かったことだ。意思疎通ができて会話が成立していた時点で気付くべきだったことだけど、まぁそれはこの際置いといて。

 俺の指示した徹底して自己保身をさせたら、生存率が異常なまでに高くなってしまった。それの結果がこの数である。反省はしていない。


『……ボス。偵察部隊、PからS。……戻った』 

『……同じく、食糧探索部隊。OからR。……帰ってきた』 

『帰って来たか。お疲れさん。で、どうだった?』


 偵察に向かわせていた部隊がいくつか戻ってきたようだ。今回戻ってきたのは偵察部隊と食料探索の計8部隊だ。戻ってきたって事は何かしら成果でもあったのかな? この数を賄えるほどの大量に食料が見つかったのであれば嬉しいんだけどな。雑草だろうが枯れ木だろうがなんでも食べられるが、高レベルな個体を作る為にはどうしても肉を食べさせて糧を吸収しないといけない。だってゴブリンでも戦闘にならないだろうし。


『……うん。ここから、ゆっくりで、いっぱい歩いた所。……ゴブリンのいっぱいいる所。あった』

『……食べ残し。いっぱい。……ごちそう、いっぱい』

『本当か! お手柄だ。えっと、これで見つかったゴブリンの巣窟は三つ目か。分かった。お前ら偵察部隊4部隊と食糧探索部隊4部隊の任を解く。これからはそこを拠点とした分隊γ(ガンマ)として一つの隊とする。分隊長は……そうだな。お前でいいか。』

『……分かった』

『ついでに繫殖部隊の奴らから何部隊か率いていいぞ? あそこも増えすぎたからな』

『……ん。すぐに……移動、する。』


 偵察部隊Pの隊長を担っていた個体に分隊長の任を与えて暫定4つ目の拠点へと行かせる事にする。


 数が増えすぎたこいつらGをどうにかする為に俺が出した解決策は、チームを分けて食べる食料を分散させるといった物だ。俺は別に自衛隊とかどこぞの軍に所属している訳でも会社の社長でも無かったから、団体の面倒を見るなんてそんな経験はない。ましてや千を超えたあたりからもう動向を把握できなくなっていたし。

 

 とりあえず中核個体である俺が親部隊となり、俺のいる古木の洞を一つ目の拠点に設定。その後、偵察部隊がゴブリンの集落を見つける度に千単位の仲間たちを潜伏させて拠点とさせていた。現状、見つけたゴブリンの集落はこれで3つ。まぁ、ゴブリンに見つかった個体は殺されるだろうが、それでも大半の個体はうまく隠れている。食料が困ることはないし、数を増やしても問題が無くなる。チームを分けることでもしもの時に、種が一気に全滅する事もない。良いこと尽くめだ。体のいい左遷ともいうか。

 

 ちなみに分けた部隊は7つ。


まず中核部隊。これは俺のいる部隊だな。比較的頭の良い個体を集めて他の部隊へ指令を飛ばしている。だって部隊数自体がAからZまで普通にあるんだぜ? 俺だけでそれら全部に指示なんて頭が足りない。まぁそのせいでレベルが上がらない問題があるのだが……。


次に偵察部隊。この森をくまなく調査して貰って危険地帯や安全地帯。拠点になりそうな場所を探してもらっている。正直一番危険が高くて消耗が多い部隊でもある。だけど、増えすぎた個体数を調整したりするには丁度いいので、この部隊は多めに数を割り振ってる。死んでもどうせ増えるしね。実際ゴブリンの拠点を見つけてきたりして実績はある部隊だ。


食料探索部隊は主に偵察部隊と活動は似ている。偵察部隊が安全と判断した領域内で死体や食べられそうな植物が群生しているポイントを探してもらっている。いくらGが飢餓に強くても食べなきゃ死んじゃうからね。大きな実績はないが、無いと困る部隊だ。


隠密部隊ってのも作った。偵察部隊の中から敵から隠れる事が上手い奴らを選りすぐって作った部隊だ。ぶっちゃけ特に必要性は無いんだが、なんかこういう部隊物を作る時って隠密部隊とかあった方が燃えるじゃん? ……ほとんどおふざけで作ったんだが、最近隠密がスキルとして現れたらしい。何事もやってみるものだ。


遠征部隊。偵察部隊が張り切りすぎて森の外まで行こうとした時に作った部隊だ。森の外に行って貰っているんだが、まだ成果は上がっていない。結構な数の死者が上がっているらしいから気長に待つことにしてる。遠征部隊の連絡や途中経過は同時期に立ち上げた中継部隊に担当してもらっている。彼らの役割はほぼ使いパシリなんだが、黙々とこなしてくれている。


最後に繁殖部隊。他の部隊もなんだかんだで数を増やしていっているんだが、この部隊はただひたすらに繁殖と幼体の教育を担当してもらっている。言葉が悪いがヤリ部屋兼幼稚園だ。数が日に日に増えてから幼体の世話の方がウェイトが大きくなってきている。



 以上が俺の作った部隊分けだ。何度も言うが、俺は自衛隊でも社長でもない、ただの学生だった元人間、現Gだ。正しい部隊分けなんて知らないし、現状これで機能が回っているから問題はないだろう。

 ちなみに俺たちには、アリで言う所の兵隊アリの様な戦闘用の部隊はない。どうせ他の生物はGより強いし、ゴブリンとかと戦う部隊なんて作った所で損害ばかり増えるだけだ。

 今よりもっと数が増えたら作ってもいいだろうが、まだ必要性は感じていない。Gがもう少し戦闘向きな虫だったら作ってたんだろうけどね?

GはGらしく、密かに数を増やして暗躍していた方が似合っているだろう。戦闘なんて俺ツエーチートな奴らにでも任せておけばいいのだ。




『……ボス。西に行っていた偵察部隊が帰ってきた』

『そうか? 何番だ?』


 どうやら他の偵察部隊が戻ってきたらしい。もはやどの個体がどの隊かを把握しきれていないので報告に来た部下に確認を取る。すると、おずおずと控えめに答えてくれた。


『……偵察部隊Vから……一匹だけ』

『一匹だけ? ……何があった?』

『……ボス。俺、話す』


 基本的に保険に保険を重ねた行動を重視させている為、最低でも部隊は2部隊以上で行動するようにさせている。万が一の時に少しでも生存して報告に戻ってこられる個体を増やす為に。

 にも拘らず、戻ってきた個体が一匹だけという事は余程の事が起こったことが考えられる。

 

『……Vから、Xまでの……偵察部隊。ゾワゾワする洞窟、見つけた。……ゴブリン、いると思って……中、探した』

『ゾワゾワする洞窟? 虫がたくさんいる洞窟って訳じゃないよな。どういう意味だ?』

『……最初は、分からなかったけど……今なら、分かる。アレ、危険。近づく、ダメ。無理して近づいた皆、死んだ。俺だけ、報告の為……逃げた』


 危険を感じていたにもかかわらず、偵察任務を優先した訳か。だが、報告に一匹残していたのはナイスだ。おかげで西の危険区域を知ることが出来た。

 しかし、偵察部隊が全滅する程の何かがその洞窟……いや、この森にいるって事か。ゴブリン以上の脅威がいるとなると、オークとかか? だけどオークでも潜む事に長けたGを全滅させる理由としては弱い。もっと別の何かがいる筈だ。

 

 この森、意外に危険な区域が多い。沼地の多いエリアがあったと思ったら一部に毒沼が有ったり、毒草が群生する野生動物どころかゴブリンも近寄らない花畑があったり。だからこそ偵察部隊に危険区域と安全区域を分けさせているのだが、洞窟の中となると毒性の動植物の線は薄い。となると……ガスか?

 毒ガスが出ているとかなら洞窟の中でも説明がつく。


『隠密部隊のうち、DとEはまだ待機中だったよな? その2部隊にその洞窟を探索させるんだ。実際に中に入るのはEだけでいい。何か異変を感じたらすぐに撤退させろ』

『……すぐに手配する』


 この時、俺の中にも何とも言えない不安感が胸の底に巣食い始めていた。

  



本日のお食事

不穏な空気?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ