表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

第3話


 結果から言おう。ゴキさんすごい。


 俺らは成体になるまで隠れているつもりだったが、異世界産になり半魔物化したせいか半日もしないで成長した。しかもそれに伴って仲間たちの知能も若干ながら上がって多少は俺の命令を実行できるようになってきた。恐るべき成長だ。虫はプログラムと一緒で0と1のコンピュータと同じで思考も感情も有していないなんて事もネットで読んだし、考えることのできないようだったら一から説明するのも一苦労だっただろう。それと念のために卵も仕込んどいた。オスだメスだはこの際置いておいて死んだときのリスクを考えると絶対に必要だ。……プライドは守れなかったけどな。 

 

 それはともかく今俺らが何をしているかというと……


『ボス。ゴブリン、見つけた。今は5号、6号が追っている。』

『分かった。直ぐに向かう。念の為聞くけど、バレてないよな?』


 俺を殺した存在、ゴブリンを捜索していた。生き残ろうとしてたのに危険を犯すのは矛盾してるって? ところがどっこいそうとも言えない。さっき俺が殺された理由は単純にどこに隠れている訳でも無く堂々と歩いていたからだ。こんな小さな虫なんて探そうと意識でもしない限り見つかりっこない。だから実質リスクなんて無いも同じだ。

 ゴブリンを追っているのは俺の中にあったスキルの1つを実験する為だ。


【捕食:微】

捕食した物を糧とし自身のレベルを上げる。微程度ではスキルや捕食した生物の特徴までは糧と出来ない。


 別にゴブリンを倒してレベルを上げようなんて馬鹿な事は考えていない。狙ってるのはおこぼれの方だ。

 俺はまず成長したゴキに対し1~19までの番号で名前を付け、全員にゴブリンの捜索を命じた。ゴブリンを追っていけばいずれ動物を殺して肉を食う時が来るだろう。そうすれば、多少なりとも肉片が残る。残飯食らい、生態系の分解者。ゴキはゴキらしく姑息に行かないと生き延びれない。あぁ、番号の名前付けは酷いなんて言うなよ? どうせこれからも馬鹿みたいに増える予定なんだから。一匹見たら30はいっていうし。

 4号の報告を受けた俺は尾行している5号、6号の元へ向かう。ところで……ゴブリンってちゃんと雑食だよな? 肉食べるよな?


 『ボス。ここ』

『ボスの言ってた通り、ゴブ、肉食べてる』

『よーしナイスだ。お前らには最初に肉を食わせてやる。ゴブリンはまだまだ肉を食ってるだろうから、今のうちに他の仲間たちを呼んできてくれ』

『『分かった』』


 案内されてきた場所では、ゴブリンが肉塊とかした何かに一心不乱に食いついていた。俺が食われた時と違うのはゴブリンの数が一匹でなく複数いる事。正確に数を確認したいところだが、あいにくゴキの視力では一匹じゃないんだな、程度の事しかわからない。近づくのも危険だし、どうせいなくなるまで近づかないんだから何匹いても変わらないか。

 いなくなるのを待っていると、仲間を呼びにいった4、5、6号が帰ってきた。続いて続々と仲間たちが帰って来たのを気配で感じる。

 

『ボス。肉。肉!』

『全部食べられる。急ぐ』

『待て待て。今行ったら確実に食われるぞ。死にたいなら構わんが、俺は死にたくないからな。いなくなるまで待つぞ』

『むぅ。死ぬの、ヤダ。ボスに従う』


 よしよし。聞き分けの良い奴は大好きだ。待ちきれないという意思を伝えてくる奴が多くいたが、流石に誰も死ぬのは嫌なんだろう。誰一人としてゴブリンのいる肉へ近づく奴はいない。ゴキの皆は欲望に素直だが、最も素直なのは生存欲求だ。食欲も旺盛だが、それ以上に死のリスクを避けたがり、生き残るための最善の策をとろうとする。

 まぁ、更に種の存続欲求の方が強いからいざというときは自己犠牲してでも種を優先するんだろうけどな。


 っと、無駄話をしていたら、ゴブリン達が満腹になったのかどこかへ去っていった。しかも行儀の良いことに骨に食べ残しがたっぷりと残っている。余程良い教育を受けたんだろうな。チャンスだ。まず、ゴブリンを見つけた4、5、6号に許可を出し肉を食べさせる。最初にごちそうを食べられると3匹は喜んで肉に群がっていった。

 他の仲間たちも行きたそうにしていたが、少し待機させる。……他に何か肉を求めに脅威が来る様子はないか。言っちゃ悪いが全員で群がったら万が一の時に全滅のリスクがあるからな。ちょっと3匹には炭鉱のカナリア役を担ってもらった。最初にごちそうにありつけるのだからいいだろう?

 

  特に問題もなさそうなので他の仲間たちにもGoサインを出す。一斉に肉塊に群がるG、G、G。傍から見たらモザイク案件だな。まぁ、俺も同じくGなのだから深くは言えないけど。

 さて、俺もごちそうにありつくことにする。血も滴るレア肉だ。一番生に近い肉の呼び名はローだっけ? まぁそんなのどうでもいい。


 グッチャグッチャグッチャグッチャ。


さぁ、これで捕食のスキルの効果でレベルが上がる筈だ。期待を胸にステータスを確認してみる。


【G】 Lv.4

生命力:G並

魔力:G並(極微量)

力:G並

速さ:G並

知力:G並

器用さ:G並


状態:【良好】【異世界産】【半魔物化】【出産可能】


 レベルが上がっている! しかも肉を食べただけで3もだ! まぁ初期の1からだからおかしくは無いが、戦闘も狩猟もなんの苦労もなくレベルを上げる手段がある事が重要なのだ。

 しかも魔力のステータスが皆無から極微量に変わっている。極微量なんて使い道は無いだろうが、それでも0が1になったことは大きい。なんたってこれから魔力が成長していく可能性がでてきたんだからな。

 そして魔力が増えるって事は魔法が使える様になるかもしれない、半魔物の状態から変われるかもしれない。夢が広がってくる。

 順調に進んでいることにほくそ笑みつつ、今はレベルを上げる為に肉を喰らう。



グッチャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャ………。




本日のお食事

ゴブリンの残飯(得体のしれない肉塊)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ