第2話
……は! 俺はどうなった!? 確か自分がゴキブリになった変な夢を見ていた気が……なんだ夢か。あー夢で良かったー。
【死因:不注意、及び環境不適合。適応します。】
【ステータス】
【G】 Lv.1
♀
生命力:G並
魔力:G並(皆無)
力:G並
速さ:G並
知力:G並
器用さ:G並
状態:【良好】【異世界産】【半魔物化】【幼体】
スキル
【生存適応】
命の危機に際した時、種を存続させるために適応する。
【飢餓耐性:大】
Gが元々所持していた特性。異世界に適応しスキルへ昇華した。飢餓に大して強い耐性を持つ
【悪食耐性:大】
Gが元々所持していた特性。異世界に適応しスキルへ昇華した。悪食に対して強い耐性を持つ。
【自己再生:小】
Gが元々所持していた特性。異世界に適応しスキルへ昇華した。身体が欠損しても時間は掛かるが再生する。
【捕食:微】
捕食した物を糧とし自身のレベルを上げる。微程度ではスキルや捕食した生物の特徴までは糧と出来ない。
【適応増殖】
死因:環境への不適合
・増殖後の個体に死因へ適応させる。また、死亡した個体の所有していたスキルは全て継承されるがレベルはリセットされる。
・通常生殖の場合も全てのスキルは遺伝されるが、レベルは1で増殖する。
【中核個体】
始まりの一匹が死亡した時、意識を産まれた別個体に継承させる。継承可能な個体すべてが存在しない場合は中核個体の意識・魂も消失する。ただし、中核個体のスキルは一匹にしか継承されず、継承される意識は始まりの一匹の物のみとなる。
【油断大敵】
死因:不注意。窮地の際、注意力が一定以下にならなくなる。
夢な訳がないだろうと現実を突き付けてくるステータス画面と謎のアナウンス。やっぱり夢じゃなかったのか……。でもそれだとおかしい点がいくつか出てくる。俺は確かにさっきゴブリンに潰されたはずだ。そして多分食われた筈。なのに、なんで生きてるんだ? それにこのステータス画面自体も多少さっきと違う点がある。空欄だったレベルが1になってるし、幼体? しかもやたらスキルが増えてるし……。これは有名ラノベの死に戻り的なアレか? でもそれならもうこのステータスは別個体のそれだし……別個体?
改めてステータスを確認してみる。雌雄は相変わらずメスだが、出産可能ではなく幼体。しかも若干魔物になりかけているらしい。それとスキルの一覧にあるこのスキル。
【中核個体】
始まりの一匹が死亡した時、意識を産まれた別個体に継承させる。継承可能な個体すべてが存在しない場合は中核個体の意識・魂も消失する。ただし、中核個体のスキルは一匹にしか継承されず、継承される意識は始まりの一匹の物のみとなる。
あの時俺は確実に死んでいた。つまり俺は死した瞬間に腹の中にあったであろう卵が何らかの理由があって孵化して、このスキルによって意識だけ幼体の個体に憑依した訳か。異世界に転生して、異世界の中で更に転生……ややこしいけどそういう事だろう。確か人型ゴキとの戦闘マンガで命の危機が迫ると卵を速攻で産むみたいなことを言っていたし、辻褄はあうか。
『飢……飢……』
ん?今誰かの声が聞こえた様な……あたりを見回すと、数十匹の小さなゴキがカサカサこっちに近づいてきた。複眼で数が多く見えるせいで実際の数より多く見える! キモッ……くない? いつもならする嫌悪感がそこまでしない。俺自体もゴキに適応してきたのか。これから生きていく上ではいいけど、ゴキに慣れるって複雑だ。
それは兎も角、こいつらだ。せっかくの仲間なんだから話をしてみよう。
『あー、あー。聞こえるか? っていうか産まれたばかりなのに意思疎通できるのか? お前ら返事は出来るか?』
『? ……飢。……喰』
『ちょ、ちょっと待て! 揃って俺を食おうとするな! 大体お前らもゴキだろう? 同族を食う前にその辺の草とかで良いだろう?』
『『???』』
こいつら、俺の言葉が分ってない? そこまでの知能は無いのか? このままだとオレサマオマエマルカジリってなりそうだから、実際にそこらに生えてる草を食べてみる。うん草だな。ゴキになって味覚が変わったのか、そこまで嫌悪が無い。
俺の行動を見て驚きの意志を表しながら、真似をするように草を食み始める。こうやって見ると可愛げを感じなくも……いや、可愛くはない。嫌悪も無いのが少し悔しいが。
満腹になって満足したのか、俺を食べようという気はなくなったらしい。
『……満……喜』
『『……頭……頭』』
満腹になって、嬉しい? それで、頭? こいつらから伝わってくる思考が少ないせいでいまいち要領を得ない。俺がリーダーって事か?
【状況に適応します。スキル:統括個体を会得します】
お? 新しいスキルが増えたっぽいな。統括個体って、つまりは群れのリーダーって事か。更にスキルを確認してみる。
【統括個体】
群れを統括するリーダーの象徴。中核個体の派生形。群れの仲間の思考を把握することが出来る。逆に統括個体の思考を仲間に伝達することが出来る。
あぁやっぱりリーダー個体になったって事らしい。まぁ、他のゴキがリーダーになって頭を下げなくて済むのはいいか。流石に元人間としてガチの虫の下っ端になるのはちょっとな。
『あー、俺の言っている事が分かるか?』
『! 分かる。ボス。やっぱり凄い。』
『おおう。実際に分かるとなるとちょっとゾワッとするな。まぁいいや。お前らに告げる!これから俺たちは生き残るために一度身を隠す。まずは成体になって行動力を得る必要がある。どこか木の根の下とか落ち葉の下とか、とにかく隠れるぞ!』
『分かった。隠れる。大きくなる、待つ。ボス、賢い』
ゴキが蝶みたいな完全変態型の虫じゃなくてよかった。なにせ生まれて直ぐの今でもすぐに動けるのだから。
とにかく今は成長を待たないと。そして、成体になったらレベルを上げて、半魔物から純粋な魔物になってやる。幸いにして次世代の為の子さえ残していれば俺は、俺の意志はいつまでも残り続けることができるんだ。試行錯誤はいくらでもできる。異世界に転生したらゴキだった? 冗談じゃない。このまま虫エンドなんてまっぴらだ。ゴキのまま終わってたまるか。
ここが異世界だろうが何処だろうが関係ないね。殖える・しぶとい・気持ち悪いで有名なゴキさんだ。いずれチート系モンスターになるまで、絶対に生き残ってやる!
本日のお食事
そこらの雑草