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生活の糧、確保!

「ちょっとここ寄りましょうよ〜」


最初に本屋の近辺に行ったのがまずかった。神保町での長谷ハセちゃんは水を得た魚のようで、くるくると大型書店と古本屋を行ったり来たりする。不思議なことに彼女の行動には妙な強制力があり、花井部長ですらなんとなく引きずられてしまうのだ。


「実は長谷ハセちゃんみたいなタイプが管理職マネジャーに向いてるのかも」


僕もユウリも花井部長の言葉を聞いて妙な納得感を持った。ただ、このままではラチがあかない。しびれを切らしてユウリが訊いた。


長谷ハセちゃん、本屋じゃなくっていい喫茶店知らないんですか?」

「ん? ごめんねー。神保町の喫茶店は分からないんだ〜」

「え? じゃあ、『タイシとシナリ』に書いてる喫茶店てどこがモデルなんですか?」

「巣鴨〜」

「なんでアキバに住んでるのに巣鴨なんですか?」

「だって、巣鴨っておばあちゃんの原宿だから。本物の原宿行く勇気ないから代わりに巣鴨に行ってたんだー」


こんなほわほわした人が東京で、しかもあの凶暴なオスの群れが巣食う寮で1人暮らししてるのが不思議でしょうがない。けれども、他にあてもないのでとにかく地下鉄で巣鴨に行ってみた。


「いいよー」


巣鴨駅近くの『純喫茶アラン』のマスターはユウリを見て二つ返事で雇ってくれた。


「マスター、ありがとうございます〜」

「いやいやこちらこそ。しっかり者の長谷ハセちゃんの紹介なら間違いないよ。ちょうどモーニングの時間帯に人手が足りなくてね」


巣鴨では長谷ハセちゃんがしっかり者だと評価されている。僕は自分の目に見える世界だけを信じる態度を改めなくてはならないと本気で思い始めていた。


「よかったね〜ユウリちゃん」

長谷ハセちゃんのお陰です。ありがとうございます」

「ヒロオくんも巣鴨のコンビニでバイトできてよかったね〜」

「ありがとうございます。でも、長谷ハセちゃん凄いですね。結局僕のコンビニも長谷ハセちゃんの紹介で決まりましたし」

「ほんとだよね。今の2人の境遇だとまともに履歴書書けないからさ。まさか長谷ハセちゃんの力でこうもあっさりクリアできるなんて」


花井部長もさすがに驚いたようだ。


「ほんとに嬉しいよ〜。ヒロオくんもユウリちゃんも、『タイシとシナリ』とまったく同じ感じのバイトすることになったし、ちょっと設定は違うけど同居もするし。ああ、わたしの小説が現実のものとなっただけで満足だよ〜」


職も決まり、秋葉原の寮に戻って荷物を整理した。花井部長も長谷ハセちゃんも手伝ってくれた。

花井部長は帰り際に各部屋の男子を全員集めて、


「この子たちに変なことしたらお前ら全員実家に叩き返すからな!」


と、徹底的に脅しておいてくれた。

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