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東京行きたい

「あのさ、思い切って東京行かない?」

「東京?」


ノーアイディアだと思っていたユウリの方から僕に提案してきた。しかも、


「根拠はあるよ」


と言う。


「列挙するね。

①噂好きな地元民から逃れられる。

②仕事が見つけやすそう。

③住む場所も見つけやすそう。」

「①以外は推測であって根拠じゃないでしょ」

「でも、多分そうだと思うよ。いや、そうだといいな」

「ほら、希望的観測じゃない。なに、ユウリは東京に行きたいの?」

「うん、行きたい!」

「この間あんな目にあったのに・・・それに、僕らには義務があるでしょ」

「なに」

「その、地元で生きていくっていう」

「追い出されてるじゃん」

「まあ、確かにそうなんだけどさ」

「なんだかんだ言ってヒロオのお父さんもお母さんもヒロオのお兄ちゃんの方を頼りにしてるじゃない。ヒロオじゃなくってさ」

「多分うちの親は後で後悔すると思うけどな。兄貴は研究者志望で、まだ一年生のくせに今から大学院に行くんだって言ってるしさ」

「いいじゃない、行けば」

「でもさ、そうなったら兄貴が地元に戻る確率ほぼゼロだよ。どうするつもりだよ、ほんとに」

「ヒロオ、しょうがないじゃない。もしかしたらご両親の老後は自業自得、ってことになるかもしれないけどさ」

「そうじゃないよ。結局何十年かしてからさ、僕がやらざるを得なくなると思うんだよね」

「どうして」

「大徹さんの姿見せられたら、義務を放り出す人間になんてなれないでしょ」

「・・・確かに。わたしも女だけど大徹さんの生き方に憧れる」

「それにさ、冷たいようだけど親のことはどうでもいいんだ、極論すると」

「え?」

「親がどうとかよりも、うちのお仏壇と神棚とそれから墓と。そういうものを繋ぐ義務の方が重要だよ。長谷ハセちゃんの投稿読んだ?」

「うん、読んだ」

「真正面からそういうこと書いてたでしょ。間違いなく大徹さんのことを意識してるよ」

「まあ。多分読む人の共感は得られないだろうけどね。じゃあさ、こういうのならどう。長谷ハセちゃんの小説のプロモーションのお手伝いに行くってのは」

「プロモーション? ネット投稿小説で?」

「うん。それならさ、ヒロオが言う『義務』ってやつを世の人に伝える大事な作業になるでしょ」


なんか、屁理屈っぽくなってきたな。もう一度聞いてみた。


「ユウリは結局東京に行きたいんでしょ」

「うん」


なんともまあ素直だな。

ただ、一理あるかもしれないな、って僕は感じた。

とにかくも今僕らは高校でも家庭でも非常にまずい立場にある。一言で言えば『いたたまれない』存在だ。ならば常駐するかどうかはともかく、地元以外の地で環境を変えてこの後の人生設計を練るというのもありかもしれない。

あまり期待せずにユウリに追加質問をしてみた。


「で、具体案はあるの?」

「ある」

「どんな」

「とりあえず花井部長に連絡する」


まあ、そんなところだろうと思ってはいたけど。


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