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ツインルームでコンビニごはん

「それ、具は何?」

「スパイシー魚肉ソーセージ」


ユウリが得体のしれないおにぎりの中身を教えてくれる。

最後の晩餐すら家で食べさせてもらえなかったので、ユウリと2人の侘しいコンビニおにぎりの晩御飯だ。

いや侘しくはないか。

ビジネスホテルのツイン部屋で、ベッドに座って足をぶらぶらさせながらおにぎりをほおばるユウリ。

僕もその隣のベッドであぐらをかいてテレビを観ながらおにぎりを齧る。


「ヒロオ、これ飲む?」


ユウリが強炭酸水のペットボトルを僕の目の前に突き出す。


「ありがと」


僕が備え付けのグラスに注ごうとすると、


「口つけていいよ」

「や、まずいでしょ」

「いいからいいから」


そう言ってユウリはわざわざ一口飲んでから僕に渡す。


「はい・・・それとも、わたしの飲んだのだとキモい?」

「いや、そんな訳じゃ」

「じゃ、飲みなよ」


ここまで言われて断るのもどうかという感じなので、素直に飲んだ。

炭酸がきつくて唇のほのかな味覚など分かる訳もないけれども。


2人ともシャワーも浴びて(もちろん順番にね)、僕はホテル支給のへんてこなパジャマ、ユウリはパジャマ代わりのTシャツに短パンでリラックスモードに入っている。

本当は考えるべきことは山ほどある。

明日からどうするのか。もう家の敷居はまたげないのか。お金は? 大学は? 大学が無理なら仕事は?


「明日明日」


ユウリはとても楽天的だ。

そこがかわいいな、とは思う。


「さ、寝よっか」


ユウリの言葉にルームランプを消してどさっとベッドに仰向けになる。

ちらっと隣のベッドを見ると両手を横に広げ、仰向けになったまま膝を立てているユウリの生白い手足が目に入った。


隣に女の子が寝てる。しかもその女の子がユウリなのに、自分のこの真っ平らな全く波立たない湖面のような心の状態はなんなのだろう。

目を閉じるとそのまま眠りに落ちてしまいそうになった。


「ヒロオ、すごいね」

「何が?」

「すごいストイック」

「・・・そんな立派なもんじゃないよ」

「じゃあ、なに?」

「多分、戦場のあのシーンのトラウマ」


僕は暗にユウリが我を失った武士にレイプされそうになった時のことだと伝えた。


「そっか。あの時ヒロオが助けてくれたんだもんね。人一人殺してまで」

「・・・殺したかどうかは分かんないよ」

「まあ、トラウマなら仕方ないね。いいよ。何もしなくても」

「はあ?」


深く考えるのはやめた。


それに、トラウマならばユウリの方が甚大だろうと思う。

僕であろうが誰であろうが、男というものから生理的にそういうことをされたくないという潜在意識がインプットされてるんじゃないかと思う。


別に何もしなくたっていい。


ユウリと枕を並べて寝てるって状況が、楽しい。



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